台湾・商標の類否に関する台北高等行政法院の判決

台湾・商標の類否に関する台北高等行政法院の判決 1

台湾商標法の規定では、公告商標に対する異議申立について知的財産局の決定に対し不服がある場合、当事者は、行政救済手続として、訴願法に基づいて経済部に訴願を提起することができ、また、訴願が棄却された場合には、行政訴訟法に基づいて行政訴訟を提起することができる。 行政訴訟は二審制であって、知的財産権に関し経済部知的財産局の処分に不服がある場合、行政訴訟第一審は台北高等行政法院の専管に属する。また、第一審の判決に不服があるときは、最高行政法院に上訴をすることができる。行政訴訟は最高行政法院の判決を最終とするが、法律の適用に誤りがある場合、又は原審で考慮されなかった新規の証拠がある場合には、再審を請求することができる。

以下に紹介するのは、商標異議申立事件に関する台北高等行政法院2003年08月15日判決(2002年度訴字第3227号)の「判決理由」の要旨をまとめたものである。

なお、本件は、現行法に基づく登録前の公告商標に対する異議申立事件であるが、2003年11月28日に施行される改正商標法では、登録前の異議申立制度が廃止され、登録公告後の異議申立制度が採用される。
(判決理由)

  1. 商標法及び施行規則の規定
    (他人の著名商標又は登録商標と類似する商標)
    「他人の著名商標又は標章と同一又は類似であり、公衆に誤認混同を生じさせるおそれがある商標」又は「同一商品又は類似商品を指定した他人の登録商標と同一又は類似である商標」については、登録出願をすることができないというのは、本件異議決定時に適用される商標法第37条第7号及び第12号に明らかに規定されていることである。ただし、前記の規定の適用は、両商標の構成が同一又は類似であることを前提要件とする。
    (商標類否の認定基準)
    商標法施行規則第15条第1項の規定により、商標の類否の認定については、普通の知識・経験を有する購買者が、購買のときに通常の注意力を払った場合に、誤認混同を生じるおそれがあるか否かを基準として判断をする。
    (商品類否の認定基準)
    商品の類否については、同法施行規則第15条第1項及び第2項の規定により、一般社会通念、市場における取引の実情、並びに当該商品の原材料、用途、効能、生産者、販売のルート及び場所又は買受人等、各種の関係要因を考慮に入れて判断をする。
  2. 商標の公告・異議申立・訴願・訴訟の提起
    (出願の公告)
    本件訴訟参加人(商標出願人)は1999年08月25日、「 STEREO 3D INSIDE デザイン」商標(以下係争商標と称する)に、出願時の商標法施行規則第49条に定める商品及びサービス分類表第9類の「ディスプレイ、コンピュータ用スクリーン及び信号転換器」を指定して、被告官庁(経済部知的財産局)に登録を出願した。被告官庁は、係争商標を登録可能と認め、公告第941192号として公告した。
    (異議申立)
    原告(異議申立人)は、係争商標の公告は商標法第37条第7号及び第12号の規定に違反するとして、係争商標に対し異議申立をした。
    (異議決定)
    被告官庁は、係争商標と原告が異議申立の根拠として引用した登録第78707 0 号及び第787071号とは非類似であり、また、同じく異議の根拠として引用された登録第655913号連合商標については、両者の指定商品が非類似であると認定して、異議不成立の処分をした。
    (訴願・行政訴訟の提起)
    原告は、異議不成立の決定に不服のため、経済部に訴願を提起したが棄却されたので、行政訴訟を提起した。
    (異議理由の一部放棄・行政訴訟の争点)
    原告は、係争商標と原告の引用した登録第655913号連合商標の指定商品が非類似の商品であるため、前掲の商標法第37条第12号の規定は本件異議に適用できないという原処分の認定については、これを争わないと表明している。したがって、本件訴訟の争点は、係争商標と異議に引用された登録第787070号商標及び登録第787071号商標が類似であるか否か、すなわち、前掲の商標法第37条第7号の規定が適用されるか否かという点にある。
  3. 係争商標と引用商標の類否
    (係争商標の構成・要部)
    本件係争商標は、長方形を黒と白の二つの部分に分け、上下又は左右に英文字「 STEREO 」、「 3D 」及び「 INSIDE 」を配置し、黒色の部分が長方形の約三分の二を占め、白色の部分が長方形の約三分の一を占める。また、黒色の部分には、「 STEREO 」の文字の下に左から右の方向に徐 々 に小さくなる5個の白色の四方形が配置されている。文字の配列については、「3 D 」の文字がもっとも大きく、約三分の一のスペースを占め、構成要素として最も突出している。次に「 STEREO 」の文字、そして「 INSIDE 」の文字がもっとも小さく、かつ黒地と白地の境に配置されているため、顕著ではない。したがって、係争商標は全体観察をした場合、構成がかなり複雑であり、原告が述べているような「(単語) INSIDE 」の単純な組み合わせではなく、人に与える印象が最も強いのは、「 3D 」の文字であって、「 INSIDE 」は主要部分といえない。
    (引用商標の構成、両者商標の差異)
    異議に引用された登録第787070号と第787071号の2件の商標は、単純な字体の「 INTEL INSIDE 」又は太い線で描いた円形の中に「 intel inside 」を配置したものであって、係争商標と比較した場合、図形に大きな違いがあり、そのうえに大部分の文字に違いがあり、客観的に見て異なる主題で構成されたデザインということができ、異なる時に異なる場所で観察をした場合、関係商品の購買者に関連系列の商品と誤解され、誤認混同が生じるおそれはない。したがって、係争商標は異議引用商標と非類似の商標であり、前掲の商標法第37条第7号の規定を適用することはできない。
    (「 inside 」が両者商標の要部であるという主張)
    原告は、係争商標と異議に引用された登録第787070号及び登録第787071号の2件の商標とは、主要部分が「 inside 」であり、かつ、商標の構成が同じく「(単語) INSIDE 」の形態であると主張しているが、これは係争商標に関する限り事実に反するので採用できない。
    (「 inside 」を含む他の商標が拒絶された事例)原告が指摘している公告第821077号「 Cochlea Dynamic CD INSIDE and design 」商標、第130404号「 PASTA INSIDE 」商標、公告第725920号「 Doctor INSIDE 及び図形」商標が原告の「 INTEL INSIDE 」商標と類似であると認められた事例については、(原告はそれらの商標の構成がすべて「(単語) INSIDE 」の組み合わせであると主張しているが)それらの商標の態様と係争商標とは同一ではないので、そのような事例を引用して係争商標の登録を否定する論拠とすることはできない。
    (結論)上述の理由に基づく結論として、原告の訴えの趣旨は採用できないものである。被告官庁が、係争商標と異議に引用された登録第787070号商標及び登録第787071号商標とは非類似であると認定し、商標法第37条第7号の規定を適用できないものとして、異議不成立の処分をしたのは、誤りがなく、訴願でこの処分が維持されたのも不当ではない。訴願決定及び原処分の取り消し、かつ、被告官庁に係争商標の公告の取消を命ずることを求めた原告の訴えには理由がないので棄却する。

(判決年月日) 2003年09月16日