台湾特許法の規定では、特許出願の再審査拒絶査定に対し不服がある場合、出願人は、行政救済手続きとして、訴願法に基づいて経済部に訴願を提起することができ、また、訴願が棄却された場合には、行政訴訟法に基づいて行政訴訟を提起することができる。行政訴訟は二審制 であって、第一審は台北高等行政法院の専管に属する。また、第一審の判決に不服があるときは、最高行政法院に上訴をすることができる。行政訴訟は、最高行政法院の判決を最終とするが、法律の適用に誤りがある場合、又は原審で考慮されなかった新規の証拠がある場合には、再審を請求することができる。
以下に紹介するのは、特許出願再審査拒絶査定に不服のために出願人が提起した事件に関する台北高等行政法院2003年12月4日判決(2002年度訴字第3368号)の「判決理由」部分の要旨である(法務部法律事務司2004年7月出版「行政程序法裁判要旨彙編」による)。本件訴訟において原告(出願人)は、拒絶査定理由として引用された先行技術の出所及び内容に対する被告官庁(経済部知的財産局)の説明が不十分であると主張し、高等行政法院は原告の主張を認め、理由不備の瑕疵があるとして原処分を取り消す判決をした。
- 進歩性の判断に関する特許審査基準の規定
被告の制定した「特許審査基準」には、「進歩性判断の基本原則」として、「特許請求の範囲に2項以上の請求項がある場合には、1請求項ごとに進歩性の有無を判断しなければならない」との規定が定められている(1-2-20ページ参照)。また、同審査基準の「審査上留意すべき事項」には、「発明を進歩性がないと認定する場合、審査官は原則として具体的な先行技術・知識に関する資料を引用しなければならず、当該先行技術・知識が既知・慣用のもの(たとえば、教科書、基準書、辞典等に記載されているもの)であるときは、この限りでないが、そのような場合でも、査定書の中で十分な説明をしなければならない」との規定が定められている(1-2-27ページ参照)。 - 再審査拒絶理由通知書の記載不備
被告は、本件の審査において拒絶の根拠として引用した先行技術の出所を具体的に示しておらず、1999年7月22日付け智専(8)04030字第124896号再審査拒絶理由通知書で引用技術に言及したときも、単に「図2、 図3のブロック、data Bus及びアドレスBusは共通であって、この点では一般の8088、8051のcpuと同様の技術である」と述べている。これは本院の準備手続きの記録に添付されている拒絶理由通知書のフォトコピーにより確認することができる。上記の「図2、図3のブロック」とは、本件係争の出願の図示を指す。 - 再審査拒絶査定書の記載不備
被告は、2002年1月3日付け智専3(2)04059字第09187000004号特許再審査拒絶査定書(原処分)で拒絶査定をするときも、単に引用技術「8051 IC」の前記の特徴を略述しただけで、本件係争出願の4項の請求項について1項ごとにその進歩性を審査することをしなかった(原処分ファイル109~111ページ参照)。これは明らかに上述の審査基準に反するものであって、原処分には理由不備の瑕疵がある。 - 理由不備の場合の補正期間
手続き又は方式に関する規定に反する理由不備の行政処分については、行政手続き法第114条第1項第2号の規定により、事後に理由を明記して補正をすることができるが、同条第2項の規定により、この補正は訴願手続きの終結前においてのみ行うことができる。 - 訴願に対する被告の答弁
本件原処分に理由不備の瑕疵があるにもかかわらず、被告は訴願の答弁においても単に原処分の理由のみを引用し(訴願ファイル37ページ参照)、再審査拒絶の根拠として引用した技術の出所を具体的に述べず、また、その技術の内容についても十分な説明をしなかった。そのうえに本件係争出願の4項の請求項について、1項ごとに引用技術と比較することをしなかった。 - 当事者参与の原則
前述の理由により、原告は訴願手続きの終結に至るまで意見陳述、補正又は答弁をするのに十分な情報を得ることができなかった。換言すれば、具体的な引用資料を提供しなかった被告の行為により、原告は出願の審査の段階及び訴願の段階で適時に実質的でかつ有効な防御方法を提出することができなかった。被告の行為は行政手続き法第102条から第108条までに規定される当事者参与の原則に反する。 - 訴願決定時における引用先行技術の出所の開示
訴願決定の作成時に至って訴願受理機関(経済部)ははじめて訴願棄却理由の中で、被告が提出した原処分のファイルに添付されていた資料に基づいて、具体的に原処分で引用された技術資料の出所は「金華科技図書股份有限公司」1991年10月再版の「8051/8052システム原理の紹介及び産品のデザイン」付録813~816ページであることを示した。 - 訴願決定書の記載の誤り
しかし訴願決定書に「金華」科技図書股份有限公司と記載されていたのは、「全華」科技図書股份有限公司の誤記であった。このため原告は誤記された「金華」の名称に基づいて引用技術の内容を検索することができず、行政訴訟の段階になってはじめて被告から当該引用資料を入手した(その経緯については原告2003年1月7日訴訟補充理由書及び本院準備手続き記録参照)。 - 拒絶理由通知に関する特許法の規定
前述のとおり、被告は行政訴訟の段階ではじめて具体的に引用資料を開示したのであって、これは原告に対し不意打ちをかけることにほかならず、実質上において特許法第40条第2項の「特許を付与しない事由については査定をする前に期間を定めて出願人に意見陳述をさせなければならない」という規定に反する。
