経済部知的財産局は、知的財産裁判所の設立に対応するため、現行の特許商標行政救済制度の改正を計画している。この改正計画の重点は、行政救済の審級の統合・簡略化及び「三方争訟」(文末訳注参照)の問題の解消にある。また、紛争案件の審理は合議の方式で行なわれる。
以下に掲載するのは、この改正計画に関する知的財産局のプレスリリースの訳文である。
主題内容:
経済部知的財産局は、知的財産裁判所の設立に対応するため、現行の特許商標行政救済制度を改正して、行政救済の審級を統合して簡略化し、「三方争訟」の問題を解決するほか合議の方式で紛争案件の審理を行うことを検討している。
知識経済時代の到来に伴い、知的財産の管理、運用及び保護は、この新しい時代において産業の生存・発展及び国際競争の重要手段になっているので、より専門的な司法のルートにより、事業者間の知的財産権に関する紛争の迅速かつ効果的な解決を図るとともに、権利の保障及び救済を確実に達成するため、司法院は本年(2006年4月、「知的財産裁判所組織法」及び「知的財産案件審理法」を審議のため立法院に送付した。また、司法院は来年(2007年)に知的財産権に関する民事、刑事及び行政提出しており、また、来年(2007年)に知的財産権に関連する民事、刑事及び行政訴訟を審理する専管裁判所を設置する予定である。
経済部知的財産局は、経済発展諮問委員会2001年経済発展会議における「知的財産権審査制度の健全化」に関する共同意見、並びに行政院2004年第24回科学技術顧問会議における「特許商標行政救済二元制度の改善及び救済審級の統合・簡略化」に関する決議及び提案を採択するとともに、知的財産裁判所の設立に対応するため、知的財産局が各界の関係者に呼びかけて11月2日に開催した公聴会の多数賛同意見を参照して、現行の特許商標救済制度の改正作業を進めているところである。
「救済制度の審級の統合・簡略化」に関する決議及び提案を実施するため、また、知的財産裁判所の設置との関連において特許・商標に関する各種案件の救済の迅速化、審理の品質の向上、意見の相違の減少を図るため、改正計画では、各国の立法例に倣い、特許・商標に関する紛争案件の覆審を三級三審制に改め、第1審級は特許商標主務官庁内部の上級審査官による合議廷が行政審査を行い、第2審級は事実審及び法律審を兼ねて知的財産裁判所が司法審査を行い、第3審級は最高行政裁判所が法律審の司法審査を行う。
同時に、これまで特許・商標に関する紛争案件は、知的財産局及び両当事者による「三方争訟」の複雑な関係により行政救済の手続きに長時間を要するため、権利者が迅速に権利の保障・保護を得ることができない状況にある。知的財産裁判所の設置後、同裁判所は、特許・商標の民事侵害案件について権利の有効性を判断することができるので、知的財産局は、外国の関係法制を参酌して、特許・商標の紛争案件を両当事者の争いとして行政争訟を審査し、当事者間の紛争を迅速にかつ効果的に解決することを図る。
前記のほか今回の改正計画で重要なのは、商標・特許の覆審及び紛争案件の審理を合議の方式で行うことであるが、特に紛争案件については、効果的に集中審理を行うため、原則として口頭審理方式を採用することにより、弁論を通じて争点を明確にする。また、当事者の権益を保障するため、また、行政救済審級の統合・簡略化後の手続きに対し外部から保障に不十分ではないかとの疑問が提起されるのを避けるため、審理手続きについては更に慎重に検討を加える。
また、法制の革新に伴い、経済部知的財産局は、知的財産の専門人材及び司法人材の育成作業を積極的に推進しており、本年11月6日に特に司法院の要請により司法官専門コースを開設して、司法官の専門的知識を効果的に強化することにより、知的財産権に関する案件の審理の実質的効果及び品質の向上、知的財産権の保護環境の健全化、企業のイノベーションに対する意欲の喚起及び国全体の競争力の強化を図っている。
訳注:以下は知的財産局の「特許・商標行政救済手続の改正説明:4.三方争訟関係の解消」に関する部分の訳文である。
4.三方争訟関係の解消
日本の特許・商標案件は、その性質上において両当事者の争いであるか否かに基づいて、「査定系」及び「当事者系」に区分される。特許・商標登録の出願に対する拒絶査定又は特許権の訂正に対する拒絶査定は査定系に属し、審判部の審判官が出願人・申請人の提出した理由について審査を行い、審判部の審決に対し出願人・請求人に不服があるときは、特許庁長官を被告として高等知的財産裁判所に審決取り消しの訴訟を提起する。特許・商標登録に対し第三者に異議があるときは、当事者系に属するものとして、当該第三者が特許権者・商標権者を被請求人として特許庁長官に無効審判を請求し、審判部の審決に対し当事者に不服があるときは、特許庁長官ではなく、相手方を被告として訴訟を提起する。したがって、当事者系において特許庁の審判部は事実上準司法機関の性質を有する。
台湾の制度と比較した場合、台湾では特許・商標の訴訟は、出願又は紛争案件を問わず一律に行政機関を被告とするので、過剰な行政コストを投入するものであるが、必ずしも紛争の解決に資するものではなく、そのうえに特許・商標に関する行政処分は「第三者に対しても効力を有する」ので、現行の制度下における行政救済の手続きは三方の関係する行政争訟を形成するため、当事者、訴訟の目的及びその結果のいずれの面においても一般の行政処分に比べて複雑化する。実質的に紛争の両当事者を原告及び被告として訴訟を進め、かつ三方争訟の関係を解消するには、本来、中立的立場にあるべき知的財産局(また、一部の案件においては行政救済機関の訴願委員会)が、行政訴訟の手続きにおいて当事者となるのを改めて、日本の制度を参考として、案件を「覆審案件」と「紛争案件」に区分して訴訟当事者を分別・決定すべきである。
(1)覆審案件
覆審案件には、商標登録出願の拒絶査定に対して提起される覆審、及び現行の再審査、訂正及びその他知的財産局が申請により行なう特許行政処分が含まれる。これらの案件は両当事者間の紛争の性質を有するものではないので、行政処分機関及び出願人・申請人を当事者とする。
(2)紛争案件
紛争案件には、現行の特許無効審判、存続期間延長無効審判、並びに商標の無効審判、登録廃止[取り消し]等、両当事者対立の案件が含まれる。これらの案件は両当事者を原告及び被告とする。
両当事者間の紛争案件の訴訟において意見を表明する必要があると本局自身又は行政裁判所が認めた場合、本局は行政訴訟参加人として訴訟に参加することができる。
