一、台湾商標法は2023年5月24日に改正され、2024年5月1日より施行された。今回の改正では、侵害訴訟時の権利の確認や市場投入済み商品の商標などの特殊な需要に対応するために、商標登録出願者が即時に権利を取得できる新制度として、早期審査制度が導入された。
改正商標法第19条第8項によれば、「出願人が即時に権利を取得する必要がある場合、事実と理由を述べ、早期審査料を納付した後、商標主務機関(台湾知的財産局TIPO)により早期審査が行われる」と規定されている。ただし、同法第94条によると、証明標章、団体標章または団体商標については早期審査の対象外となる。
- 商標早期審査制度の主な要点は以下の通り:
申請時期 - 出願番号を取得した後、最初の審査通知が発行される前
申請要件 - 即時に権利を取得する必要がある- 指定された全ての商品/役務で実際に使用されている、或いは使用のための準備がすでに相当程度進んでいる
- 商品/役務の一部ですでに実際に使用されている、或いは使用のための準備がすでに相当程度進んでおり、かつ商業的に即時に権利を取得する必要性及び緊急性がある
- 商標の形態 - 証明標章、団体標章、団体商標を除く全ての商標の形態(非
伝統的商標を含む)が早期審査の対象となる。
早期審査料 - 本来の出願料NTD3,000/区分に加え、早期審査料TD6,000
/区分が必要となる
注:早期審査申請後、いかなる理由があっても早期審査料は
返金されない - 早期審査申請時の注意事項
- 早期審査料を納付しない場合、TIPOは補正の通知を行うことなく通常の商標審査スケジュールに従って処理する。
- 指定する商品/役務名称は明確である必要があり、TIPOが早期審査を行えないほど広範な意味を持つものであってはならず、補正通知が発行される。
- 出願する商標の図案は、実際に使用する商標と完全に一致しなければならない(実質的に同一であると見なされることはない)。
(例)出願する商標が「ABC」というアルファベットである場合に、使用証拠で示されたものと字体が異なる、大小が異なる(abc)、行が分かれている、色が異なる、他の文字や図案と組み合わされていると
きはいずれも同一の商標と認められることがなく、早期審査を受けることができない。 - 早期審査を申請して料金を納付した後、TIPOは早期審査の事実及び理由が要件を満たすかどうかを審査する。要件を満たしていない場合は、10日以内に補正するよう通知され、補正されない場合や要件を満たさないときは、早期審査を受理しない。
- 早期審査の効果:
早期審査の事実、理由及び証拠が要件を満たし、審査料が納付されると、その出願は2ヶ月以内に審査通知(登録査定、手続き補正、拒絶理由通知)が作成される。前記審査通知については補正後15日以内に査定(登録査定、不受理、拒絶査定)が行われる。 - 現在の台湾TIPO商標出願実務によると、商標出願案件の第一次通知は出願から約6.2ヶ月後に発行され、査定通知は約7.5ヶ月後に発行されるが、早期審査案件の場合、全ての手続きに不備がなければ、約2〜3ヶ月以内に査定を受けることが可能である。
- 上述のように、早期審査は、追加料金NTD6,000を納付することに加え、商標の商品/役務の全てまたは一部ですでに使用され、かつ証拠がある場合にのみ行うことができるが、この条件は厳しく、出願人にとってこれらの条件を満たすのは容易ではないこともありうる。
そのため、出願者が早期審査を申請する意図がない場合、代わりに「ファストトラック」審査制度を活用して、査定を迅速に取得することもできる。
ファストトラック制度の要点:- 平面商標のみが対象となる
- 指定する商品/役務の全てがTIPOのコンピュータシステムに登録された商品/役務と一致する必要がある
- 委任状は申請と同時に提出し、後に補完することはできない
- 商標登録出願料以外に、ファストトラック申請料を納付する必要がない
ファストトラック案件の審査期間は通常約4〜5ヶ月である
