1.数年前、台湾は専利法および商標法の改正に積極的に取り組み、これらの改正案は行政院(内閣)によって承認され、2023年に立法院に提出された。その主な改正点は、商標の異議申立制度を廃止し、審商標の無効審判および取消審判制度を日本の審判制度に類似するものに変更したことである。また、専利法の改正案も再審査制度を廃止し、覆審と無効審判制度を日本の審判制度のように変更する内容であった。判制度では、各案件を3人の審判官で審理することが規定されている。審判制度の覆審結果に不服がある場合は、従来の経済部の訴願手続きを経ずに、「知的財産及び商事裁判所」に直接訴訟を提起することができ、この訴訟の性質および手続きは、従来の行政訴訟手続きではなく、民事訴訟手続きを採用する。
しかし、業界からの反対や、2024年1月の総統選挙および立法委員選挙の影響で、これらの法案は会期中審議されず、法律に基づいて廃案となった。2023年3月、台湾知的財産局の洪前局長が退任し、特許審査官出身の廖局長が新たに就任した。廖局長は台湾知的財産局の局長としては初めて、理工系のバックグラウンドを持ち、特許業務に精通した人物である。廖局長は、知的財産局の特許審査官は数百人しかおらず、商標審査官も約100人であり、覆審制(審判部)を導入して各再審査や無効審判、及び商標の無効審判や取消審判の全てを3人の審判官により審理するとなることは実務的に不可能で、また、これにより新規に出願される特許や商標の審査期間が延び、出願人に不利に働く可能性があるため、特許及び商標の改正措置を一時的に棚上げした。
- 過去5年間の台湾における発明特許再審査の状況は以下の通り:
初審で拒絶された出願のうち、再審査が請求された割合:70.4%
5年間の再審査案件平均成長率:8.5%
| 年度 | 再審査請求件数 | 再審査第1回OA発行までの期間(月) | 再審査完了期間(月) |
|---|---|---|---|
| 2019 | 5,076 | 10.6 | 13.4 |
| 2020 | 6,283 | 10.5 | 13.4 |
| 2021 | 6,496 | 10.3 | 13 |
| 2022 | 6,426 | 11.4 | 13.7 |
| 2023 | 5,538 | 10.1 | 13.1 |
- 特許再審査案件を迅速に審査するため、台湾知的財産局は2024年9月1日から再審査早期審査プログラム(Accelerated Examination Program for Re-examination:AEPRe)を試行することを決定した。このAEPReは、主に前置審査の精神を参考にしており、初審で部分的に拒絶された請求項を削除(または分割)するか、拒絶されなかった従属項を独立項に書き直して早期審査を請求することで、6ヶ月以内に第1回OAまたは査定書が発行されるというものである。
- AEPReの主な内容は以下の通り:
適用条件 —
発明特許の初審において一部の請求項しか拒絶されなかった出願について、再審査を請求する。
請求時期 —
発明特許出願の再審査請求後修正
再審査が開始される通知を受領してから第1次再審査意見通知書(OA)を受領するまでの期間にAEPReを請求することができる
修正必要事項 —
1.特許要件を満たさない請求項を削除する
2.初審拒絶査定書において拒絶理由がなかった従属項を独立項に書き直したうえで、項番号、従属関係を調整し、従属項を追加する
料金 —
なし
効果 —
条件を満たした場合、早期審査が認められ、再審査意見通知書(OA)または査定書が6ヶ月以内に発行される
- AEPReでは明記されていないものの、特許出願人は、初審拒絶査定にて拒絶された請求項を削除したくない場合、再審査手続き中に分割出願をし、拒絶された一部の請求項を別の独立した出願(子案件)として再審査手続きを継続する一方で、拒絶されていない一部の請求項を親出願として残し、親出願のAEPReを請求することで、一部請求項の特許権を迅速に取得することができる。
- 上記発明特許のAEPReは、2024年9月1日より施行される。
