台湾発明特許出願における初審および再審査段階の「補正」に関する注意事項

台湾発明特許出願における初審および再審査段階の「補正」に関する注意事項 3

台湾発明特許出願は、発明を実現できる程度に明細書に技術手段を十分に開示しなければならず、また、特許請求の範囲は、発明を明確に定義し、かつ明細書にサポートされたものでなければならないと規定されている。基本的に、出願人は特許出願後、自発的に明細書、特許請求の範囲または図面を補正することができ、特許審査の過程で審査官から通知を受けた際に補正を行うこともできる。台湾の特許審査制度では、発明特許の審査は「初審」と「再審査」の手続きに分けられている。台湾発明特許は、新規出願の当日または出願日から3年以内に、出願人(または第三者)が知的財産局に対して実体審査を請求しなければ、初審段階の審査手続きに進まない。知的財産局の審査官は、専利法で定められた要件に基づいて、特許出願に発明特許を付与すべきか否かを審査する。もし審査官が、特許出願に拒絶理由が存在すると認めた場合、出願人に対し、期限を定めて意見陳述または補正を提出するよう通知する。意見陳述・補正を行ってもなお(通知された)拒絶理由が存在する場合、審査官は拒絶査定を作成することができる。初審での拒絶査定に不服がある場合、出願人は査定書が送達されてから2ケ月以内に再審査を請求することができ(再審査請求理由は再審査請求と同時に提出する、または4カ月以内に補完する)、再審査段階は、知的財産局が別の審査官を割り当てて審査を行う。また、「初審」、「再審査」いずれの段階でも、知的財産局から審査意見通知書が送られた際の意見陳述または補正の期限は、国内出願人の場合2ヶ月(2ヶ月延長可)、外国出願人の場合3ヶ月(3ヶ月延長可)であり、期限までに回答しないと拒絶査定となる。

審査意見通知および最後通知の補正に関する規定
発明特許出願がすでに審査意見通知書を受け取っている場合、出願人は通知された期間内でしか補正を提出することができない。初審または再審査の段階では、審査の遅れによる未処理案件の累積を防ぐため、知的財産局は通常、審査意見通知書(Official Action,以下OAと称する)を一度しか発行しない。そして現行専利法では、審査官が必要と判断した場合、審査意見最後通知を発行することができるが、最後通知を受けた特許出願は、請求項の削除、請求範囲の減縮、誤記の訂正、不明確な記載の釈明に限り、特許請求の範囲を補正することができる。ただし、例外として、知的財産局は初審または再審査の手続きにおいて二度目のOAを発行する場合があり、それは例えば、審査官が新たな引用文献(通常はサーチレポートが新たに作成されて発見する)、新たな拒絶理由を発見した場合、別の条項を適用する場合などである。このような場合、審査官は行政手続法(第102条)に従って、正式な拒絶査定を出す前に出願人に対して 意見陳述の機会を与えなければならない。このほか、再審査段階で最初のOAを受領し、出願人が補正を提出しても特許査定となるか不確かである場合、同時に面接を申請することができる。審査官が面接に同意すると、出願人は面接後に審査官の指示に従って指定期間内に再度補正を提出することができ、このようにすれば補正の機会が多く得られる。

初審および再審査段階で補正を行う際はその補正の根拠を明記する
実務上、初審段階において出願人が行った補正や意見陳述が受け入れられない場合、直接、正式な初審拒絶査定書を受け取る可能性がある。もし出願人が再審査を請求した場合、再審査手続き中にOAを受けて行った補正や意見陳述が認められないと、再審査拒絶査定書が発行される可能性がある(出願人は法定の30日以内に訴願を提起することができる)。したがって、再審査段階で最初に受け取るOAは、審査手続き中に補正を行うことができる最後の機会となることもある。その後の救済手続き(訴願、行政訴訟)では、出願人は補正を提出することができず、仮に補正を提出しても、訴願審議委員会(以下「訴委会」)によって審理されることはない。その主な理由は、訴委会が審理する対象は再審査拒絶査定書の拒絶理由および拒絶された請求項(知的財産局の訴願答弁と出願人の訴願理由という双方の理由も審理される)が法的に適切かどうかであって、訴願人が訴願段階で提出した補正は含まれないためであり、ましてや、知的財産局の審査官は初審および再審査の段階でその補正を一度も審査したことがなく、またその補正に対する審査意見も一切出されていないため、訴委会としては、その補正に対する知的財産局の審査意見が法的に適切であるかどうかを判断することができないという事情がある。
上記のとおり、出願人が初審または再審査の段階で補正を提出するタイミングは極めて重要である。注意すべき点として、出願人が初審段階で提出する補正事項については、審査手続きの円滑な進行を期して、その理由を明記し、その補正の根拠を明示する必要がある。原則として、すべての請求項の補正について、出願人はそれら補正が明細書のどの段落、ページ、行によってサポートされているかを説明すべきである。出願人が自発的に説明をせず、審査官も明細書でサポートされている箇所、或いは明細書、特許請求の範囲、図面の間の対応関係を確認することができない場合、初審段階で「補正内容が出願時に開示された範囲を超えている」、「補正が明細書によりサポートされていない」といった理由で拒絶される可能性がある(出願人が補正を複数回提出している場合、審査官は最新の補正案を、出願時の明細書、特許請求の範囲または図面と比較して、発明特許が出願時に開示された範囲を超えているかどうかを判断する)。
同じような状況が再審査の段階で発生した場合、審査官はまずOAを発行し、出願人に意見陳述や補正を求める可能性があるが、出願人が提出した意見陳述や補正が審査官に受け入れられない場合、審査官は特許出願を直接拒絶することもあり得る。一方で、訴願手続きでは補正を行うことはできず、仮に後に出願人が訴願で勝訴し、事件が知的財産局に差し戻されて補正を行う機会が得られても、新規性や進歩性など他の特許要件がまだ審査されていない問題が残るので、出願人にとってかなり不利になると考えられる。

特許審査基準における補正が新規事項を導入しているかどうかの判断
知的財産局の特許審査基準によれば、明細書、特許請求の範囲または図面の補正の審査では、補正後の内容が「出願時の明細書、特許請求の範囲、図面で開示されている範囲を超えてはならない」に合致するかどうかがを判断することになる。いわゆる「出願時の明細書、特許請求の範囲、図面で開示されている範囲」とは、出願当日に、出願時の明細書、特許請求の範囲または図面(優先権証明文献を含まない)に既に明確に記載(明示的に表現)されていた全ての事項、或いはその発明の属する技術分野の通常知識を持つ者が出願時の明細書、特許請求の範囲または図面から直接かつ一義的に(directly and unambiguously)知り得た事項を指す。したがって、これは単に出願時の明細書、特許請求の範囲または図面に記載されている文章を字義通りに逐語的に解釈するものに限られるわけではない。
さらに、優先権証明文献に記載された事項は、出願時の明細書、特許請求の範囲または図面の一部とはみなされず、補正時に出願時の明細書、特許請求の範囲または図面を超えているかどうかを判断する根拠として用いることはできない。出願人が補正時に発明の新しい効果、新しい用途、新しい実験データ、新しい実施例を追加したり、あるいは明細書、特許請求の範囲、図面そのものの補正ではなく、技術内容に関連する補足資料を提出したりする場合、それらを出願時の明細書、特許請求の範囲または図面に記載して補正の根拠とすることはできず、あくまでも特許要件を審査する際の参考資料として扱われる。

対応外国特許出願の審査状況および特許査定情報
外国出願人が台湾で特許を出願する際、多くの場合、対応外国出願による優先権を主張する。台湾の審査官は実務上、しばしばその対応外国出願(優先権出願を含むパテントファミリー)を検索し、台湾出願と対応外国出願の審査状況を近づける、或いは同じ引用文献、審査理由を引用して整合性を図る。したがって、出願人は、特に米国、日本、欧州特許出願など既に特許査定された対応外国出願の特許番号等の情報を利用して、対応外国出願と同じ、もしくは類似する内容の意見陳述や補正を採用することができる。さらに、出願人は台湾出願の請求項を、既に特許査定された対応米国、日本、欧州出願の請求項と同一に補正することも可能であり、これによって台湾で特許査定を受ける可能性を高めることができる。

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台湾発明特許出願における初審および再審査段階の「補正」に関する注意事項