商標権者の台湾税関における商標権の提示保護について

商標権者の台湾税関における商標権の提示保護について 3

台湾税関が行う知的財産権保護の水際管制措置は、主に現行の商標法、及び商標法に基づいて台湾財政部が定めた、「税関による商標権益保護措置の実施方法」を根拠としており、該実施方法では、商標権者が提示保護を申請する際の規定の他、税関が職務執行する際に明らかに商標権を侵害する恐れのある輸出入品を確認した場合、商標権者に侵害の有無の確認及び証明の提示を期限内に行うよう自主的に通知すると同時に、輸出入者に対しても侵害はないことの証明を期限内に提示するよう通知すべきと定めた。税関は、商標権者が提示した権利侵害の証拠(かつ輸出入者が、侵害はないことの証明を提示していない場合)に基づいて、仮差止の措置を執行し、案件を司法機関に移送して調査させることができる。

前記商標権の提示保護とは、商標権者が、登録した商標権の情報を台湾財政部関務署の税関に提示し、税関が知的財産権データベースに記録することにより、税関における貨物が模倣品であるか否かの判断または判別力に寄与する仕組みである。提示保護期間は、税関が提示保護を認めた日から、商標権存続期間満了までとなる。商標権存続期間が十年であることから、商標権者は十年ごとの期間満了前に、台湾知的財産局に商標権の更新を申請できるため、申請した提示保護期間も、該商標権更新後の期間まで延長するよう税関に申請することができる。ただし、税関が商標権者または代理人に取次ぎできない等の事由がある場合、提示保護期間を早期終了することができる。

商標権者が財政部関務署に提示保護を申請する際の注意事項及び必要書類:
□ 提示保護の申請は一申請一商標となる(一申請あたり商標登録番号一件)。
□ 申請書は、商標権及び権利者の関連情報(連絡先を含む)を記載する。
□ 税関が真正品と侵害品の特徴を判別できる文字説明の提供。
□ 税関が真正品と侵害品の特徴を判別できる画像ファイル(真正品、模倣品、または真正品と模倣品の対照用の写真或いはカタログ等)の提供。また、画像内容は商標登録で指定した商品でなければならない。
□ 商標権証明書類(商標登録証など)。
□ 委任状(商標権者が代理人に委任して申請する場合、代理権限を示す委任状を併せて提供しなければならない)

税関での貨物輸出入は全て時効管理されており、商標権者は税関からの通知書を受けた後の、24時間(海運輸出入及び空運輸入を指す。空運輸出の場合は4時間のみ)内に、税関の現場、または税関の電子プラットフォームから提供された写真を介して確認し、侵害の有無の認定を行う必要があり、また、通知書送達から3営業日内(6営業日まで延長可)に、模倣品の侵害証明を提出しなければならない。

仮に、輸出入者が該3日または6日内に侵害はないことの証明を提出した場合、商標権者は通知を受けてから3営業日内に、貨物に相当する金額の保証金或いはそれに相当する担保を提供して、貨物の差止を先に請求することができる(被差止人が差止の解除を請求する場合、二倍の金額またはそれに相当する担保を提供し、規定に従って貨物の通関手続きをすることができる)。商標権者は、税関が差止を受理した翌日から12日内に裁判所に訴訟を提起しなければならず、規定に従って差止の請求又は訴訟提起をしなかった、或いは訴訟が裁判所により不受理となった場合、貨物の通関は許可される。

実務において、税関が確保した模倣品と思われるものの大部分は、国外製造で台湾へ輸入される商品であり、商標権者による商標権の提示保護の申請の有無に拘わらず、税関が職務執行時に商標権侵害の疑いがある物品を発見した場合、自主的に商標権者またはその代理人に通知することになるが、商標権者が海外の会社である場合、関務署の税関職員が通知する商標代理人(台湾知的財産局によるウェブサイトでの記載)は、税関の水際管制措置への協力の代理権限が与えられていないため、商標権者において、輸出入品が商標権を侵害する恐れがあると思う場合は、関連書類を添付して税関に提示保護を申請することで、税関の通知、貨物差止等の手続きの時短に寄与し、商標権者自身の権益を保護することができる。

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