発明特許出願は、実体審査が必要なためにその審査手続きに最も時間がかかることが多い。しかし、二国間または多国間の特許審査ハイウェイ(Patent Prosecution Highway ;PPH)協定を介すことで、出願人が同じ発明を複数の国に特許出願する場合、先行技術の調査 を繰り返さずに済むため、審査時間を短縮することができる。本年5月、台湾知的財産局(TIPO)は、フランス産業財産庁(INPI)との間で「特許審査ハイウェイ協力意向書」に調印し、この意向書に基づき、双方は2025年7月1日よりPPH試行プログラムを共同で開始し、2年後に正式に全面実施する予定であることを発表した。
2011年以降、台湾は米国、日本、韓国などと発明特許PPH協力プログラムを締結している。現在のところ、台米PPHは従来型(保守型)PPHとなっており、出願人は基本出願が係属する第一特許庁で発行される特許査定書類を利用して第二特許庁に後続出願のPPHを申請する必要がある。これに対して、今回の台仏PPHは、他のPPH協力国との間で採用されているPPH MONTTAINAIをモデルとしており、発明特許出願の少なくとも1つ以上の請求項が台湾(TIPO)またはフランス(INPI)いずれか一方の審査で特許査定を受けた場合、その一方の庁の審査結果を利用して他方の庁にPPHを申請することができ、審査の迅速化が期待される。
2024年の台湾知的財産局の統計によると、台湾発明特許出願が審査終了するまでにかかる期間は平均14ヶ月であったが、PPH出願では平均4.4ヶ月と大幅に短縮されている。台法PPHを利用する台湾発明特許出願については原則として、TIPOはINPIシステムから対応するフランス出願に関する書類(審査意見、引用文献、特許査定または公告された特許請求の範囲を含む)のコピーを取得することができるが、出願人はそれらの中国語または英語の翻訳文、および特許請求の範囲の対応表を提出する必要がある。なお、引用書類が特許文献でない場合、またはTIPOがオンラインで関連書類を取得できない場合、出願人は必要書類を提出しなければならない。
フランスは現代の七大工業国の一つで、EUにおける台湾の重要な貿易パートナーであり、サノフィ、アルケマ、ルノー、ロレアルなど多くの有名なフランス企業が世界中で特許または商標を取得している。知的財産局の資料によると、2022年から2024年にかけてフランスの出願人による台湾発明特許出願件数は増加傾向にあり、近年はTSMC、鴻海、メディアテック、ASE、工研院などの台湾のテクノロジー企業がフランスで特許を出願している。また、フランスは、世界に先駆けて知的財産権(IP)保護制度を確立した国の一つであり、パリ条約の創設メンバーの一国として世界知的所有権機関(WIPO)の設立推進に参与するなど、国際的な知的財産権分野の発展において重要な役割を果たしてきた。台湾とフランスとの間のPPH協定の調印は、両国での審査の効率と質を高めるだけでなく、企業が迅速に特許を取得して市場競争力を高めることに寄与し、さらには、国境を越えた協力と資源の共有のもと、グローバルなイノベーションの推進において持続可能な理念も実現できることを示すものである。
