台湾における特許技術分野の出願傾向

台湾における特許技術分野の出願傾向 3

各国の特許出願の技術分野は、産業におけるイノベーション開発の方針及び特許戦略の参考とすることができる。産業発展の長期的傾向を理解するため、昨年、台湾知的財産局は2004~2023年の台湾特許公開案のデータを五大産業別に分析した。以下はその概要となる。

知的財産局の統計によると、台湾の特許で公開制度を実施して以来、特許の公開件数は逐年増加しており、その年平均成長率は、2004~2009年は81.9%、2010~2019年は6.7%に低下、2020年(コロナ禍)後~2023年は6.8%を維持という三段階に分けることができる。知的財産局はWIPO国際特許分類対照表を参照し、特許技術分野を電機工程、機器、化学、機械工程、その他の五大産業分類に纏めて、台湾の公開件数で産業の技術分野と出願人の国(地域)の対比、比較を行った。ここ20年間の傾向から台湾とWIPOの五大産業分類における公開件数を比較すると、2023年では、台湾とWIPOいずれも電機工程の件数が最も多く、台湾の電機工程における年平均成長率は2.0%で、WIPOの成長率6.4%よりも低いが、台湾の化学産業の件数の年平均成長率4.6%はWIPOの成長率2.8%よりも高くなっている。機械工程と機器における年平均成長率は、台湾が3.4%と2.7%で、WIPOは4.0%と4.2%となっている。

台湾の公開案のうち、各国出願人の五大産業での年平均成長率は中国(+23.7%)が最も高く、次に台湾(+4.9%)、韓国(4.0%)、日本(1.2%)、米国(1.2%)、ドイツ(-0.7%)となる。下表は2004~2023年の台湾特許公開案の各国出願人の各産業における年平均成長率である。

産業分類台湾日本米国中国韓国ドイツ
電機工程4.20%-1.40%0.30%20.90%3.30%-3.40%
機器5.00%-0.50%1.60%32.50%1.10%4.20%
化学5.60%5.60%2.90%29.10%10.90%-0.50%
機械工程7.00%1.40%-0.50%22.50%3.10%-0.10%
その他------
資料ソース:TIPO  単位:年平均成長率

基本的に、台湾の特許公開件数は五大産業中、電機工程の割合が最も高く、次に化学産業となるが、2023年と2004年を比較すると、電機工程の割合はマイナス成長(7.9%減)であるのに対し、化学産業の割合はプラス成長(7.3%増)で、機器、機械工程及びその他の産業の割合も小幅ながら成長している。各産業の公開件数の割合の変化は下表を参照:

電機工程化学機器機械工程その他
2004年50.10%20.00%14.60%12.00%3.30%
比較↓(-7.9%)↓(+7.3%)↓(+0.7%)↓(+1.0%)↓(+0.2%)
2023年42.20%27.30%13.90%13.00%3.50%
資料ソース:TIPO

内国人と外国人の台湾における公開件数から見て、台湾、中国、米国、韓国出願人はいずれも電機工程の割合が多く、ドイツの出願人は化学産業を主としている。日本の出願人の公開件数は2004年において電機工程の割合が最も多く、2023年では化学産業が最も多くなっている。下表は内国及び外国出願人の公開件数の五大産業における割合の変化である。

出願人年度電機工程化学機器機械工程その他
台湾2004年59.00%10.00%16.60%10.40%4.10%
2023年51.50%11.20%16.70%15.20%5.30%
中国2004年66.10%16.10%3.20%9.70%4.80%
2023年42.40%36.20%11.80%8.00%1.60%
米国2004年51.00%25.20%11.30%10.10%2.40%
2023年43.80%34.70%12.30%7.40%1.70%
日本2004年46.80%18.90%15.50%15.10%3.70%
2023年28.40%42.40%11.20%15.80%2.20%
韓国2004年66.30%7.10%20.30%4.60%1.70%
2023年58.10%24.30%11.90%3.90%1.90%
ドイツ2004年31.20%46.10%5.80%14.50%2.40%
2023年18.60%47.90%14.50%16.50%2.50%
資料ソース:TIPO  単位:割合%

このほか、五大産業が含む特許技術分野から見て、2023年の台湾特許公開案の上位10位となる技術分野は順に半導体、演算技術、電子機械エネルギー装置、光学、視聴技術、薬品、高分子化学、表面処理、測量、有機精密化学となる。下表は2023年における台湾公開件数の出願人の国及びその技術分野の割合である。

産業分類技術分野台湾日本米国韓国中国ドイツ他の国(地域)
電機工程半導体40.10%25.40%13.80%9.30%5.90%0.60%4.80%
演算技術50.20%9.30%19.00%7.70%7.10%0.60%6.00%
電子機械エネルギー装置45.20%20.70%15.10%1.80%7.10%2.10%8.10%
視聴技術51.40%11.70%11.70%6.80%12.00%1.30%5.00%
機器光学33.10%24.40%14.00%7.70%7.40%2.70%10.60%
測量46.40%19.10%14.70%4.60%6.10%2.20%6.90%
化学薬品16.50%13.30%33.80%3.20%15.60%2.40%15.30%
高分子化学6.80%67.90%10.90%6.50%2.10%3.20%2.70%
表面処理14.30%45.80%16.00%4.50%9.50%2.40%7.60%
有機精密化学25.90%27.30%5.90%9.00%14.60%5.70%11.50%
資料ソース:TIPO  単位:割合%

技術の進歩及び人工知能の急速な発展に伴い、発明特許の分野では特許分類において複数の分野を跨ぐケースが一般的となっている。特許審査において分類、検索する際は、多くの国が国際特許分類(IPC)システムを使用しており、日本が自前で開発したFI/F-term (File Index, File forming Term)分類システム以外にも、現在一部の先進国では、新技術の急速な発展及び企業のグローバル戦略のニーズに対応するために、より高度な共同特許分類(CPC)システムを採用している。IPCの7万個の分類番号に比べ、CPCは26万個の分類番号を有し、より精密に技術を分類でき、かつシステムは随時更新されているため、検索分析機能も向上している。一方、現代の産業イノベーションは異なる分野の技術を統合することが多いため、発明が複数の技術特徴を含み、複数の分類に跨る場合、出願人は、発明の単一性の規定に合致するよう、それら技術特徴が関連性を持ち、特定の問題に対し一体的に解決案を提供していることに注意する必要がある。実務上、同じまたは対応した技術特徴がない特許請求項がある場合、審査官はまず出願人に答申を提出するよう通知し、その後に改めて先行技術の検索を行うことになっている。

台湾における特許技術分野の出願傾向 4
台湾における特許技術分野の出願傾向