台湾、知的財産局のウェブサイトでは、参考事例となる判決の要約を掲載している。
以下は商標の識別性有無に関する判決(要約)の和訳である。
知的財産法院行政判決:知的財産法院103年度行商訴字第29号行政判決
原告:松本澤國際有限公司
被告:経済部知的財産局
争議対象:商標に識別性があるか否か
係争商標:出願第102000849号「松本澤國際有限公司標章(十)」商標
係争商品/役務:第18類「札入れ、革鞄、財布、リュックサック、ウエストポーチ、靴袋、手提げ袋、スーツケース、ショッピングバッグ、トランク、キーケース、化粧バッグ、手提げバッグ、名刺入れ、クレジットカード入れ、証券入れ、キャンバス地リュックサック、雨傘、傘、スクールバッグ」商品

関連法律条文:商標法第29条第1項第3号
次に掲げる事由の一つに該当する識別性を有しない商標は、登録をすることができない。
三、単にその他識別性を有しない標識から構成されるもの。
主文:原告の訴えを棄却する。
判決要旨
ある一つの商標が識別性を有しているか否かは、当該商標態様の全体的な外観が消費者に与える印象に基づき総合的に判断しなければならない。商標態様が複数の異なる単一図形で構成されている場合、たとえ個々の単一図形自体が識別性を有しているとしても、必ずしも組み合わせ後の商標も識別性を有するとは限らない。逆もまたしかりである。例えば、数個の識別性を有する単一の図形模様を、連続して無限に延長する方式で配列する組み合わせを商標態様として登録出願した場合は、当該単一の図形模様は識別性を有しているが、組み合わせ後の模様は逆に消費者から商品の外観の装飾模様又は背景と見なされる可能性があり、識別性を有さない。原告が提出した多くの資料を見たところ、手提げ袋等の外観の模様に使用されていることが分かる。単に係争商標だけでなく、更にその他の模様もある。換言すると、係争商標は革製品等の商品の外観の模様の一部分に実際使用されているに過ぎず、その他の部分と比較し、より主要であるとは認めがたい。即ち、前述した原告が提出した使用証拠及び販売資料は、事実上、単に実際使用されている模様に関連するもので、原告が実際使用している模様の一部に過ぎない係争商標に対して、関連消費者が強い及び唯一無二の印象を生じ、商品を区別する出所の標識とすることは証明できない。
判決の摘要
- 本件の事実
原告は、2013年1月7日に「松本澤國際有限公司標章(十)」商標(以下、係争商標という)を商標法施行規則第19条で定める商品及び役務分類表第18類の「札入れ、革鞄、財布、リュックサック、ウエストポーチ、靴袋、手提げ袋、スーツケース、ショッピングバッグ、トランク、キーケース、化粧バッグ、手提げバッグ、名刺入れ、クレジットカード入れ、証券入れ、キャンバス地リュックサック、雨傘、傘、スクールバッグ」商品を指定し、被告に登録出願した。被告は審査し、係争商標は単に種々の幾何図形で構成されたもので、上記商品に使用することを指定しており、人に商品外観の装飾模様としか認知されず、識別性を有さないと認定した。原告が提出した証拠資料に基づいても係争商標が既に後天的識別性を獲得しているとは認めがたいとして登録を付与せず、2013年8月29日に商標拒絶第349771号査定書で拒絶処分とした。原告は不服として、訴願を提起したが、訴願庁は棄却を決定した。原告は服さず、本院に行政訴訟を提起した。 - 本件の争点
商標は識別性を有しているか否か。 - 判決理由
- 「商標は、あらゆる識別性を具える標識を指し、文字、図形、記号、色彩、立体的形状、動く態様、ホログラム、音声又はこれらの結合から構成されることができる。前項でいう識別性とは、その商品又は役務の消費者が商品又は役務の出所を指す標識であると認識するに足り、かつ、これによって他人の商品又は役務と識別するに足りるものである。」ことが、第18条に明文で規定されている。また、「次に掲げる事由の一つに該当する識別性を有しない商標は、登録をすることができない。・・・三、単にその他識別性を有しない標識から構成されるもの。」も同法第29条第1項第3号に規定されている。しかしながら、「前項第一号又は第三号に定める事由に該当する場合において、出願人の使用により取引上すでに出願人の商品又は役務を識別する標識になっているときは、当該規定を適用しない。」ことも同条第2項に明文がある。商標の識別性の有無は、指定商品又は役務、消費者の認知、実際の取引状況及び使用方式に基づき、関連消費者に表彰する商品又は役務の標識と認識させ、且つそれによって他人の商品又は役務と区別できるか否かを判断しなければならない。
- 係争商標は4つのデザインされた菱形模様を上下左右に配置して組み合わせ、一つの大きな菱形を構成して成る。その中の左方の図形模様は黒地に白の図で、その他は白地に黒の図である。また、上下の菱形模様は同一で、全体的な態様はデザインされた装飾性の図形で、それを商標としている。指定商品は「札入れ、革鞄、財布、リュックサック、ウエストポーチ、靴袋、手提げ袋、スーツケース、ショッピングバッグ、トランク、キーケース、化粧バッグ、手提げバッグ、名刺入れ、クレジットカード入れ、証券入れ、キャンバス地リュックサック、雨傘、傘、スクールバッグ」で、皮製品又は雨傘には様々なライン、幾何又は図形模様を外観のデザインをするものがよくあるため、消費者は単に当該商品の外観の装飾的な模様又は背景とみなすのが通常であって、それが商品を表彰する標識と認識できず、それによって他人の商品と区別できないので、本来的な識別性はない。
- 原告の強い言明:関連企業である伊澤田公司は、本願商標の一部分の図形を第18類の商品を指定し、被告から登録第1066756号 、第1066757号 及び第1066758号商標の登録を取得した。係争商標はそれら商標の組み合わせであって、当然識別性を有している等々である。しかしながら、ある一つの商標が識別性を有するか否かは、商標の全体的な外観が消費者に与える印象に基づき総合的に判断しなければならない。当該商標が複数の異なる単一図形で構成されている場合、たとえ個々の単一図形自体に識別性があるとしても必ずしも組み合わせ後の商標も識別性を有するとは限らない。逆もまたしかりである。例えば、数個の識別性を有する単一の図形模様を、連続して無限に延長する方式で配列する組み合わせを商標態様として登録出願した場合は、当該単一の図形模様は識別性を有しているが、組み合わせ後の模様は逆に消費者から商品の外観の模様又は背景と見なされる可能性があり、識別性を有さない。係争商標の部分的な図形が被告から登録を付与された商標であるとしても、図形を組み合わせた係争商標は本来的に識別性を有さないとの判断の障害にはならない。

- 原告の強い主張:係争商標の個々の模様は、何れも原告の独創であり、既に登録され、指定商品上に使用されている。大量の広告宣伝、商品の販売を通して、消費者にかなり熟知されており、消費者に商品又は役務の出所を表彰する識別標識として認知させるに足る等々であり、提出した関連証拠は証明するに足りるというものである。しかしながら、原告が提出した多くの資料を見たところ、手提げ袋等の外観の模様に使用されていることが分かる。係争商標だけでなく、更にその他の模様もある。換言すると、係争商標は革製品等の商品の外観の模様の一部分に実際使用されているに過ぎず、その他の部分と比較し、より主要であるとは認めがたい。即ち、前述した原告が提出した使用証拠及び販売資料は、事実上、単に実際使用されている模様に関連するもので、原告が実際使用している模様の一部に過ぎない係争商標に対して、関連消費者が強い及び唯一無二の印象を生じ、商品を区別する出所の標識とすることは証明できない。例を挙げると、本院の公文書第50頁に掲載の著名ブランドの模様「GUCCI」商標を知っている消費者は、一部分の「G」を見ただけでも製品の出所である「GUCCI」を連想できる。単に、原告が提出した前述の証拠資料だけでは、係争商標自体が原告の長期、広範な使用を通して、取引上原告商品の識別商標になっており、後天的識別性を取得していることを証明するには不足である。
- 原告の更なる主張:LV、GUCCI、COACH、BURBERRY は何れも過去に被告から特定の模様またはパターンで登録を認められている。ましてや、商標の出願で提出した使用証拠は原告が本件で提出したものより少ないが、被告は反対に係争商標の使用証拠は既に後天的識別性を取得していることを証明するには不足していると述べており、明らかに審査基準に一致しない事実がある、等々である。しかし、原告が挙げた上記の例は、長い歴史がある世界的に著名な高級ブランドで、消費者の当該ブランドに対する注目度は、係争商標とは自ずと異なる。関連する使用証拠が消費者に与え、生ずる印象及びブランドと結びつく程度もまた自ずと異なる。使用証拠の数量で単純に後天的識別性の取得を証明できるか否か論断するのは難しく、原告の前記主張もまた、理由がない。

- 判決結果
係争商標は、商標法第29条第1項第3号で規定する登録できない事実がある。被告が係争商標を登録できないとし、拒絶処分としたことは不当ではなく、訴願でそれを維持したことにも誤りはない。原告が固執する前記の主張、訴願決定及び原処分取消、更に被告に係争商標を登録査定させる命令の請求は理由がなく、棄却する。


