商標権の侵害と合理的使用 ― 十字架のシルバーアクセサリーを例として(台湾)

2024年5月1日より台湾商標法改正条文が施行される

台湾の知的財産局が、登録された平面商標の権利が当該商標を立体化したものに及ぶかについての判断を示した。以下は布告の訳文である。

告示日:2010年5月12日

十字架の装飾品はシルバーアクセサリーによく見られるものであるが、知的財産局が十字をデザインした平面商標に登録を付与したことが、この種の製品を生産する又は販売する業者に影響を及ぼすであろうか?業者は十字架を立体化したものをシルバーアクセサリー自体の装飾的形状としたに過ぎず、消費者が当該十字架のシルバーアクセサリーを特定のメーカーが生産したと誤認する可能性がなければ商標の使用ではなく、他人の商標権の束縛を受けない。

商標登録後、商標権者は法に依り、他人が同一又は類似の商標を同一又は類似の商品に使用することを禁止することができるが、必ず他人が商標として使用することを前提とする。そのため、商標法第30条第1項第1号では善意であり且つ合理的使用方法で、自己の商品の形状又はその他の商品自体に関する説明を表示し、商標としての使用に該当しない限り、他人の商標権の効力に拘束されないと規定している。業者が権利の侵害を訴えられた場合は、本条の規定を引用して抗弁することができる。但し、他人の商標権を侵害しているか否かは、最終的には裁判所が具体的な個別のケースの事実・証拠に従って判断しなければならない。

裁判所は実務上、平面商標の立体化又は商品化について、平面商標の登録の権利範囲は立体商標とは異なり、罪刑法定主義の原則に基づき、刑事案件では商標権の侵害とはならない傾向があり、民事案件では関係する消費者に誤認混同を生じさせるおそれの有無により商標権を侵害するか判断するとの見解を示している。

商標の主な機能は、メーカーが消費者に商品または役務の出所を示すことであり、消費者に商品又は役務の出所を示す文字又は図形であると認識させることができれば、商標法第5条で規定されるものは全て商標として用いることができ、独創的な文字又は図形と限定しない。そのため、「りんご」をコンピュータ関連製品に使用する、ワニの図形を被服商品に使用することは、商品の出所を示す機能を有しているので、商標として登録が認められる。十字のデザイン図形も同原則を採用し、商標として登録が認められる。

この他、立体形状は平面図形の登録出願と同様、登録が認められる識別性と要件を有していなければならない。但し、平面図形に比べ、立体形状が識別性を具えることは比較的難しい。特に当該立体形状が商品自体の形状又は商品の包装容器の形状である場合は、商品自体の形状又は商品の包装容器の形状と商品は密接に結びついているため、消費者は一般的に、商品の実用的又は装飾的機能を提供する形状であり、商品の出所を区別する標識ではないと見なすので、当該商品の立体形状が使用により既に識別性を取得していることを証明しなければならない。従って、登録された平面商標の図形を立体化したものが、登録を取得できるとは限らない。