台湾の知的財産局のウェブサイトには司法判決の頁があり、特許(発明、実用新案、意匠)の民事、行政判決及び商標の民事、刑事、行政判決の判例が掲載されている。
以下はサービスマークの不使用取消請求に係る判例である。知的財産局の審定で登録を取り消された原告は経済部に訴願を提起したが、棄却された。原告は不服として知的財産裁判所に行政訴訟を提起した。
知的財産裁判所は、原告の訴えを認め、訴願決定及び原処分を取り消した。以下は、当該判例の訳文である。
公布日:2012年4月3日
裁判所:知的財産裁判所
判決日:2011年12月29日
事件番号:行政判決100年度行商訴字第98号
事件概要:係争商標「大覇電子股份有限公司標章」は取消請求前3年以内に使用の事実があるか否か、且つその使用は商取引習慣に合致しているか否か。
関係条文:商標法第57条第1項第2号
商標の登録後、次に掲げる事由の一つがあるときは、商標主務官庁は、職権で又は請求によりその登録を取り消さなければならない。
2、正当な理由がなく、使用をせずに又は使用を引き続き停止して満3年を経過したとき。ただし、被許諾者が使用をしているときは、この限りでない。
「大覇電子股份有限公司標章」商標取消事件について
争議対象:係争商標に商標法第57条第1項第2号に規定する取消事由が適用
されるか否か。
係争商標:「大覇電子股份有限公司標章」商標(原役務標章、登録第110559号)
係争商標の役務:第42類
「コンピュータプログラムの設計及びデータ処理;コンピュータソフトウェア及びプログラムの作成、設計、保守、テスト、分析及び相談・助言;コンピュータ計算、コンピュータデータ処理、コンピュータの貸与;製品の外観造型と構造設計」役務
関係条文:商標法第57条第1項第2号
判決要旨
役務における登録商標の使用では、具体的な使用態様として営業場所に登録商標を表示し又は営業書類に登録商標を表示し、商標権者が登録した指定役務を用いて利益を得ることができれば、営業場所又は営業書類上に登録商標を表示することは、商取引上の商標使用に合致すると認められる。登録商標の役務を直接提供して収入を得る必要はない。例えば、一般量販店又はコンビニエンスストアの登録商標を商品販売の役務に使用する場合、消費者が量販店又はコンビニエンスストアで商品を購入する際には、量販店又はコンビニエンスストアはレシートにその登録商標を表示する。レシートの品名は通常、消費者が購入した物品で、更に消費者から提供した販売役務の費用を徴収することはない。量販店又はコンビニエンスストアは本質的に商品の販売を通して利潤を得ており、従って、販売した商品のレシートに表示された登録商標は当然、登録商標の使用であると認めるべきである。
判決抜粋
- 本件事実
原告(変更前の名称、大覇電子股份有限公司)の「大覇電子股份有限公司標章」(2008年9月24日付で「鼎創達股份有限公司標章」への商標名称変更許可)商標(以下、係争商標という)は、第42類の「コンピュータプログラムの設計及びデータ処理;コンピュータソフトウェア及びプログラムの作成、設計、保守、テスト、分析及び相談・助言;コンピュータ計算、コンピュータデータ処理、コンピュータの貸与;製品の外観造型と構造設計」役務を指定し、登録第110559号商標として許可された。権利期間は1999年6月16日から2009年6月15日までであるが、更新登録により2019年6月15日までとなった。次いで、参加人の傅恩媛が2007年2月8日に当該登録は商標法第57条第1項第2号の規定に違反するとして、被告官庁にその登録取消を請求した。被告官庁が審理し、2011年1月7日付中台廢字第L00960035号商標取消処分書で「第00110559号『鼎創達股份有限公司標章』商標(原役務商標)の登録は取り消さなければならない」との処分を行った。原告は不服として訴願を提起したが、経済部は2011年5月12日付経訴字第10006099380号で「訴願棄却」を決定した。原告は不服として本院に行政訴訟を提起した。
- 本件の争点
係争商標は取消請求前3年以内に使用の事実があるか否か、且つ、その使用は商取引習慣に合致しているか否か。
- 判決理由
- 役務における登録商標の使用は、具体的な使用態様として営業場所に登録商標を表示し又は営業書類に登録商標を表示し、商標権者が登録した指定役務を用いて利益を得ることができれば、営業場所又は営業書類上に登録商標を表示することは、商取引上の商標使用に合致すると認められる。登録商標の役務を直接提供して収入を得る必要はない。例えば、一般量販店又はコンビニエンスストアの登録商標を商品販売の役務に使用する場合、消費者が量販店又はコンビニエンスストアで商品を購入する際には、量販店又はコンビニエンスストアはレシートにその登録商標を表示する。レシートの品名は通常、消費者が購入した物品で、更に消費者から提供した販売役務の費用を徴収することはない。量販店又はコンビニエンスストアは本質的に商品の販売を通して利潤を得ており、従って、販売した商品のレシート上に表示された登録商標は当然、登録商標の使用であると認めるべきである。
原告は2006年1月31日、同26日、日本のNEC社の台湾子会社に発行した統一発票 [徴税のための公的レシート] に係争商標を表示しており、証拠として統一発票2通が提出され、真実であると信ずるに足りる(詳細は当裁判所ファイル第43頁、46頁)。また、原告は2005年5月27日に日本のNEC社と開発協定を締結し、日本のNEC社にMH210,220製品に関するハードウェア仕様、ソフトウェア仕様、ユーザーインターフェース、信頼性規格及び試験規格の設計を提供したことは、提出された開発協定の証拠1件から真実と信ずるに足りる(詳細は当裁判所ファイル第28頁、30頁)。係争商標の指定役務は「コンピュータプログラムの設計及びデータ処理;コンピュータソフトウェア及びプログラムの作成、設計、保守、テスト、分析及び相談・助言;コンピュータ計算、コンピュータデータ処理、コンピュータの貸与;製品の外観造型と構造設計」で、原告は日本のNEC社とMH210、220製品に関するハードウェア仕様の設計を提供する開発協定を締結した。即ち、製品の構造設計役務の提供は、係争登録商標の指定役務を提供して利潤を得ることにあたる。つまり、原告は2005年5月27日に日本のNEC社と開発協定を締結し、係争登録商標の指定役務を提供して利潤を得ており、2006年1月31日、26日に日本のNEC社の台湾子会社に発行した統一発票に係争登録商標を表示しているので、まさしく係争登録商標の使用は通常の商習慣に合致している。 - 被告の主張:原告が提出したコマーシャル・インボイスに記載された品名はスペアパーツ、工具費、その他費用、又は購入した商品の内容、若しくは役務の内容を知り得ない非常に漠然とした記述で、係争登録商標が指定役務に使用された事実があると認めることはできない等々である。しかしながら、被告官庁が2008年6月25日に公布した登録商標使用の注意事項、3.5.1「商標の表示」には以下の記載がある:「登録商標に使用があることを証明するには、以下の使用証拠を提出することができる:…… 役務商標が表示された営業書類、営業場所の写真等、及び提供する役務の収入証拠、例えば統一発票、領収書、見積書等又は広告を証明する書類。」原告が提出した、係争登録商標が表示されたコマーシャルインボイスは役務商標が表示された営業書類であり、原告が提出した開発協定は係争登録商標の指定役務の提供で利潤を得たことの証明として用いることができるので、被告官庁が公布した登録商標使用の認定基準に合致している。更に、レシートには提供する役務の項目と対価を記載しなければならず、それにより登録商標を指定役務に使用したと認定できるとするのであれば、例えばレストランに使用するとして登録した商標は、レストランが登録商標を表示したレシートで消費者からサービス料を徴収しないと登録商標の使用であると認定できないというに等しい。レストランは消費者から必ずサービス料を徴収しなければならず、それにより登録商標の使用であると認定できるというのは、明らかに一般的な商習慣に反する。被告のこの部分の主張が採用できないのは明らかである。
- 原告のその他の主張:原告は2004年1月2日に D&B HOLDING 社と「携帯電話ソフトウェアの使用許諾契約」を締結し、原告が研究開発した携帯電話のソフトウェアを2004年1月1日から2004年12月31日までD&B HOLDING 社に使用許諾することを取り決めた。並びにD&B HOLDING 社が上述の携帯電話ソフトウェアを上海迪比特有限公司へ再許諾することに同意した。従って、係争商標がD&B HOLDING 社に許諾した携帯電話ソフトウェアの生産、製造及びテスト等の技術役務において使用されていることは確実である等々である。しかしながら上述の使用許諾契約の対象は携帯電話ソフトウェアであって、商品である。係争登録商標が指定しているのは「コンピュータプログラムの設計及びデータ処理;コンピュータソフトウェア及びプログラムの作成、設計、保守、テスト、分析及び相談・助言;コンピュータ計算、コンピュータデータ処理、コンピュータの貸与;製品の外観造型と構造設計」役務である。上述の使用許諾契約の許諾対象は、明らかに係争登録商標の指定役務とは無関係であって、原告が係争登録商標を使用した証拠とすることはできない。
- 原告が最初に提出した証拠3~6を組み合わせて総合的に考察すると、2006年1月26日、31日に係争登録商標の使用があったと認められる。原告が提出した証拠7については、係争登録商標の使用があった事実を証明することはできない。
- 役務における登録商標の使用は、具体的な使用態様として営業場所に登録商標を表示し又は営業書類に登録商標を表示し、商標権者が登録した指定役務を用いて利益を得ることができれば、営業場所又は営業書類上に登録商標を表示することは、商取引上の商標使用に合致すると認められる。登録商標の役務を直接提供して収入を得る必要はない。例えば、一般量販店又はコンビニエンスストアの登録商標を商品販売の役務に使用する場合、消費者が量販店又はコンビニエンスストアで商品を購入する際には、量販店又はコンビニエンスストアはレシートにその登録商標を表示する。レシートの品名は通常、消費者が購入した物品で、更に消費者から提供した販売役務の費用を徴収することはない。量販店又はコンビニエンスストアは本質的に商品の販売を通して利潤を得ており、従って、販売した商品のレシート上に表示された登録商標は当然、登録商標の使用であると認めるべきである。
- 判決結果
原告には、参加人が取消を請求した2007年2月8日前3年以内に係争登録商標を指定役務「製品の構造設計」に使用した事実があるとすべきである。訴願決定及び原処分の取消を請求した原告の訴えには理由があり、認めるべきである。
