誤認混同のおそれの有無の判断は、異なる時間、場所における隔離及び全体的観察を行わなければならない(台湾)

誤認混同のおそれの有無の判断は、異なる時間、場所における隔離及び全体的観察を行わなければならない(台湾) 1

本件は異議申立に係る係争であるが、係争商標及び異議申立の根拠となる商標の何れも連合商標である。

本件の経過の概略は以下の通りである。

  • 係争商標「斯儂恩葵花」は、「斯儂恩THRONE」商標の連合として出願された。
  • 異議申立人が根拠とする商標「美吾髪葵花」は、「美吾髪仙草」商標の連合として出願された。
  • 異議申立人は、連合商標の場合、基本商標と異なる部分が主要部分であると主張し、係争商標と異議申立の根拠となる商標の主要部分は同一の「葵花」であるため、後願である係争商標は登録できない、及び係争商標は刑事判決で侵害が認定されていることを理由として、異議を申し立てた。
  • 異議は不成立となり、原告(異議申立人)は訴願を提起したが棄却された。
  • 原告は承服せず、行政訴訟を提起したが棄却された。

本件に関する記事は2009年10月5日付の知的財産権電子報に掲載されたが、本件の判決は2002年6月19日に出されたものである。現在台湾では連合商標制度は廃止されており、また判決も7年余り前のものである。それにも拘わらず当該判決が電子報に掲載された背景として、下記の通り思料される。

  1. 台南地方法院89年易字644号刑事判決では、被告の「斯儂恩葵花」シャンプーが「美吾髪葵花」商標の模倣であると認定された。
  2. 美吾髪公司は、これを根拠に「斯儂恩葵花」に異議を申し立て、刑事判決の認定結果に基づき、「斯儂恩葵花」と「美吾髪葵花」商標は類似しており、誤認混同のおそれがあると主張したと思われる。
  3. しかしながら、知的財産局は電子報の中で、行政手続きにおいて商標が類似しているか否かの認定で根拠とする証拠は、刑事審判における認定根拠の証拠と必ずしも同じとは限らず、従って、認定上で差異があることは可能であり、必ず同一になるわけではないことを指摘している。
  4. 本件の判決(台北高等行政法院90訴4268号判決)では、知的財産局の「斯儂恩葵花」と「美吾髪葵花」商標に関する、誤認混同のおそれの判断が説明され、台北高等行政法院は、同局の判断を維持し、刑事判決と認定上で相違があることに違法の疑いはないとしている。
  5. 知的財産局は、認定事項は刑事裁判における場合と異なることが認められること、及び誤認混同のおそれに係る商標の類似判断には、何れの場合も、異なる時間、場所における隔離及び全体的観察を行うべきであることの事例として本件判決を取り上げたと思われる。

以下は知的財産局の知的財産権電子報に掲載された記事の訳文である。

掲載日:2009年10月5日

誤認混同のおそれの有無の判断は、異なる時間、場所における隔離及び全体的観察を行わなければならない(台湾) 2

商標の外観上又は観念上における誤認混同のおそれの有無を判定するには、客観的事実に基づき、商標の文字パターン、図形又は記号について異なる時間、場所における隔離及び全体的観察を基準としなければならない。商標態様の全体を総合的に見て、明確で、意図がはっきりしているとの印象を人に与えるならば、その態様の一部分が同一であることにより類似商標であるということはできない。従って、連合商標もまた、その態様全体を他人の商標と観察比較してはならないというのではない。また、裁判所の刑事判決で認定された事柄・証拠と、本件の商標態様における商標法規定違反の有無について認定される事柄、証拠は異なる。

本件商標態様は、中国語「斯儂恩葵花」の5字で構成されており、原告の異議根拠となる商標は中国語「美吾髪葵花」の5字で構成されている。両者に共通するのは「葵花」の2字で「葵花」[日本語:ひまわり]はよく知られた、よく見られる「花」の名前である。我が国において「葵花」の2字又はその他の文字と組み合わせて商標態様とし、各類の商品に登録出願されたものは少なくなく、原処分の文書に添付された被告の商標名称のリスト及び商標登録簿のコピーで調べることができる。且つ、原告は異議の根拠となる商標の実際使用時、「美吾髪」、「葵花洗髪精」[洗髪精の日本語:シャンプー]を2行にして配置し、且つ「天然のひまわり抽出エキスを含み、美しい髪にツヤとハリを増す」、「葵花シャンプーは天然のひまわり抽出エキスを含む」と付記している。これは、シャンプー商品の容器に表示されており、本文書に添付されているので証することができる。一般消費者に「美吾髪」が商標であり、「葵花洗髪精」は、ひまわりの成分を含むシャンプーの表示に過ぎないと認識させている。「葵花」は実際上、商標の識別性が弱い部分であり、従って本件係争の商標と異議の根拠となる商標を比較すると、人の注意を引く部分は、最初の「斯儂恩」と「美吾髪」の3字であり、互いに明確な差異あり、全体的に見て、外観、観念又は称呼の何れにおいても明らかな相違があり、はっきりと異なった印象を人に与える。異なった時間、場所で隔離観察して見分けることはできると認め、客観上一般の商品購入者に誤認混同を生じさせるとは言い難く、類似商標には属さない。

台湾台南地方法院89易字644号刑事判決に係る、差し押さえ事件の斯儂恩シャンプーとリンス商品のパッケージ上の「葵花」の2字の比率は、商標名称の斯儂恩に比較し、大きく明確で、ひまわりの花のデザイン及び色彩が何れも「美吾髪葵花」のものと類似しており、明らかに特別に強調する意図があると認定され、当該刑事判決の付属文書で調べることができる。当該件で認定された事項・証拠と本件商標態様に商標法の規定違反が有るか否かの認定事項・証拠は、比べてみると同じではない。原告が提示したその他の事例は、商標態様、文字の組み合わせが異なるもので、状況が異なっている。商標審査の個別案件拘束原則に基づき、異議成立処分の論拠として本件の参考とし、本件に援用するのは何れも困難である。係争商標と異議の根拠となる商標は類似を構成しておらず、従って、異議の根拠となる商標が広告費用として1億9千万元余り費やし、著名商標となっているかは、更に審査するには及ばない。