異議申立において、異議申立人は登録が取り消された商標を根拠とし、先使用を主張した。そのため本件は、台湾で登録されていない商標を根拠とする場合の、商標法第23条第1項第14号が適用されるかが争われた。
本件の経過の事実概要は、判決書に以下の通り記載されている。
本件の第三者である「萬詮企業股份有限公司」は、登録第490005号「玉里想」商標の連合商標として、当時の商標法施行規則第49条に規定される商品及び役務分類の第11類のレンジフード商品を指定し、1997年8月16日付で中央標準局(1999年1月26日付で経済部知的財産局に改組)に「理想」商標を登録出願した。その後、出願人を謝春華に変更する申請書が公告決定前の1999年10月11日付で提出され、被告 [中央標準局/知的財産局] は審査の結果、第0000000号 [判決書には番号が記載されない] として登録を付与した。次いで参加人、理想牌有限公司は、係争の根拠として、被告が登録の取消を公告した商標(原登録番号:695350号、2000年6月1日付で被告により登録取消公告、原登録番号:671640号、1998年12月1日で被告により登録取消公告)に基づき、係争商標は商標法第23条第1項第12, 13, 14及び16号の規定に違反しているとして、異議を申し立てた。被告機関は審査の結果、係争商標は商標法第23条第1項第14号の規定に違反していると認め、2006年8月2日付台異字第940792号商標異議審決書において、係争商標の登録を取り消す処分を行った。また、2006年9月8日付で係争商標を原告 [現権利者] に移転登録することを許可した。原告は、異議審決に不服のため訴願を提起したが棄却された。原告は不服により行政法院に行政訴訟を提起した。
判決書に記載された概要は以上の通りであるが、更に説明を補足すると:
- 参加人(異議申立人)が根拠とした商標は、金雅典企業股份有限公司が出願登録したもので、参加人は商標の共同使用者である。
- 異議申立の根拠となった商標は、上述の事実概要で第三者として記載されている原告の前権利者、萬詮企業股份有限公司により無効審判が請求され、その結果、登録の取消が確定した。
以下は知的財産局の知的財産権電子報に掲載された記事の訳文である。
掲載日:2009年9月5日

商標法第23条第1項第14号の適用要件には二つある:同一又は類似の商品又はサービスについて先使用の他人の商標と同一又は類似である。出願人は当該他人との契約、地縁、業務上の取引又はその他の関係により、当該他人の商標の存在を知っていた。一方の要件だけでは不可である。本件の係争の根拠となる商標は、登録が既に取り消されており、合法な登録商標ではない。訴訟のために長引き、登録査定までに8年かかったため、保護される商標が逆に侵害を受けることは登録商標の保護を意図する商標法の主旨ではなく、その様なことがないよう、係争の根拠となる商標の先行使用有無の事実認定時には、証拠法則に基づき、慎重に認定し、厳格に証明すべきである。
所謂、商標の「使用」証拠とは、当該商標とそれを使用した商品との結合が呈示されている状態を指し、例えば、商品上にその商標が貼り付けられている等である。単に「某々ブランドの商品」とあるのみならば、某々商標の「使用」の可能性を間接的に表示しただけである。使用有無の事実には、商品と商標が結合した使用状態の証拠を提出しなければならず、それにより初めて明確に使用事実を証明するに足りる。全ての証拠を調べたところ、領収書には、「金雅典ブランドレンジフード」、「理想ブランドレンジフード」、数量(台)及び金額のみで、この外の記載はなく、商品の販売を証明するだけである。関係する係争の根拠となる商標が確実に商品と結合されて使用されたかについては、依然としてその他の証拠による証明を必要とする。争いに係る領収書は、証明しようとする、根拠となる商標の使用事実を証明できない。当然、根拠となる商標の使用証拠として認め難い。その他、台湾区ガス器材工業同業組合の書簡の記載:「理想ブランドの使用に関し、本組合の製品であることを保証した期間と名称は以下の通り:期間:1995年11月20日から2003年7月22日、会社名称:金雅典企業股份有限公司、企業ブランド:理想ブランド。・・・。」は、虎牌工業有限公司の書簡に対する回答から知ることができるが、「理想ブランドの使用が『本組合の製品であることを保証する』」とは、依然として根拠となる商標が商品と結合され使用された実際の状態ではなく、商標の使用の証拠もまた明確ではない。根拠となる商標の使用を直接証明することは困難である。
原処分の理由は、「・・・被異議人(原告を指す)の前権利者が係争商標の登録出願前に、商標の訴訟事件に関係し、異議の根拠となる商標と接触があったために、異議の根拠となる『理想』商標の存在を知っていた。原告の前権利者が訴訟に関係していたため、係争の根拠となる商標の存在を知っていたと認定し、上掲の法律条文に合致している。」との法定要件である。「理想」商標は、金雅典企業股份有限公司が初めて使用したものでは決してなく、瓦斯炊飯器、湯沸かし器、レンジフード商品及びガスコンロ等の商品マーケット上で1968年頃には広まっている。原告の前権利者の萬銓企業股份有限公司は、1990年に商標登録を取得しており、その後、デザインを変更して再度出願し、商標登録を取得した。原告の前権利者、及び茂華工業公司は早くから「理想」商標を使用しており、原告の前権利者が訴訟後に係争の根拠となっている金雅典企業股份有限公司の商標を知って模倣することは不可能である。

