一定の条件に合致する私文書は、無効審判の証拠とすることができる(台湾)

一定の条件に合致する私文書は、無効審判の証拠とすることができる(台湾) 1

実用新案権の無効を求めた審判において、無効審判請求人が提出した証拠が私文書である場合、証拠能力を有するかが争点となった。台北高等行政法院は判決において、一定の条件に合致すれば証拠として採用できることを示した。以下は知的財産局の知的財産権電子報に掲載された記事 の訳文である。[註:台湾の特許法は、特許法、実用新案法、意匠法を含む。]

掲載日:2009年6月5日

係争に係る、本件原告の実用新案は、公告決定時の特許法第98条第1項第1号及び第2項の規定に違反するとして参加人が無効審判を提起した。知的財産局は審査の結果「無効審判成立、実用新案権取消」処分とした。原告は不服により訴願を提起したが、訴願棄却決定を受けた。原告は承服せず、行政訴訟を提起した。

参加人が提出した証拠:無効審判添付書類二、1~3、アメリカPCC社が制作した型番270ZJ, 270ZG, 270ZHの製品規格工程指示書;無効審判添付書類三、1~3、アメリカPCC社が作成し易連公司に宛てた前述3製品の出荷通知書簡;無効審判添付書類四、1~3、アメリカPCC社が台湾支社に発行した上述貨物積載に関する輸入書類;無効審判添付書類五、台北関税局が発行した添付書類四、2の輸入の通関申請書の証明書類;無効審判添付書類六、アメリカPCC社が製造した実物サンプル;無効審判添付書類七、財団法人金属工業研究発展中心の試験報告表。

知的財産局は審査し、無効審判添付書類二~七には関連性があり、比較対照して係争の実用新案に新規性がないことを証明できると認めた。原告側主張:私文書は必ず、予め真正であることを証明して、はじめて形式上の証拠力を有する。また更に、その内容は証明しようとする事実と関係がなければならず、且つ信じられるものであって、はじめて実質的証拠力を有する。無効審判添付書類二、1~3はコピーの提出に過ぎず、照合に供する原本は提出されていない。その形式及び実質において真正と認められず、即ち根拠とする証拠として採用することはできない。しかも無効審判添付書類二の製品規格工程指示書の内容は非公開の刊行物であり、切り取って貼り付ける処理を利用する等の方法で、簡単に一組のものとして作成できる。従って、無効審判添付書類二は証拠能力を備えていない。無効審判添付書類三から五は、構造を全く明示していない。無効審判添付書類六は、製造の日付が全くなく、無効審判添付書類二に示されるねじの金型構造に関係することを証明することができない。無効審判添付書類七は実質的な証拠力を備えておらず、無効審判添付書類二~六につながることを合理的に確認することができない。以上を総合し係争事案は特許法第98条第1項の規定に違反していない。

台北高等行政法院は原告の訴えを棄却し、判決で以下の通り指摘した。

  1. 無効審判添付書類二及び三は何れもアメリカPCC社が作成した私文書ではあるが、2000年7月10日付で公告された特許審査基準に記載されている「民間の証明書・実物の写真・社内用設計図・ビデオテープ等の証拠は、統一発票(公給領収書)・輸出入通関申請書・輸出許可証等があり、資料が公開された日付を証明できなければならない。また、それぞれの間には一定の関連性がなければならず、それにより初めて根拠を示す証拠とすることができる。」に照らし、私文書が一定の条件に合致すれば、無効審判の証拠とすることができ、私文書は全て証拠として採用できないとはいえない。無効審判添付書類四、2の輸入の通関申告及び添付書類四、3の証明書類は何れもアメリカPCC社の印鑑が押印されている。その他、添付書類五の輸入の通関申請書には我が国の税関の公印が押印されており、公文書の性質を備えている。しかも、アメリカPCC社は既に、型番270ZJ,270ZG,270ZHが同社の製品であることを2005年5月25日に証明している。無効審判添付書類六の実物サンプル上に記載された「PCC12/99270 ZJ」、「PCC12/99270ZG」及び「PCC12/99270ZH」は、無効審判添付書類二~六の何れにもある同じ製品の通し番号又は型番であって、関連性があり、比較対照することができる。添付書類二には証拠能力があり、原告の添付書類二は証拠能力を備えていないとの主張は当然採用できない。
  2. 無効審判三の出荷通知書簡には、貨物受け渡しの日付が記載されており、無効審判添付書類四、五の輸入の日付及び無効審判添付書類六の実物サンプル上の日付は、アメリカPCC社が製造した型番270ZJ, 270ZG, 270ZH製品が係争実用新案の出願日前にすでに公開され販売されていた事実を認定するに足るものである。
  3. 無効審判添付書類二の3件の工程指示書上には、係争実用新案の技術の特徴が明示されており、係争実用新案の構造と完全に同一である。しかも、無効審判添付書類七の試験表で示されているリブ部とポンチ部の高さの比率は、何れも係争実用新案出願の請求範囲で示されたリブ部とポンチ部の高さの比率範囲内である。従って、無効審判添付書類二~七は係争実用新案が新規性を有さないことを証明できる。係争実用新案には新規性がないので、更に進歩性の有無を調べる必要はない。

注記:
第98条(1994年法)
産業上利用に供することができる実用新案は,次に掲げる事情の1に該当しない場合は,本法により実用新案を出願することができる。
(1) 出願前既に刊行物に掲載され又は公然使用されているもの。ただし,研究,実験の為に発表又は使用され,その発表又は使用の日から6ヶ月以内に実用新案を出願した場合は,この限りでない。
実用新案は出願前既にある技術又は知識を運用し,当該技術を熟知している者が容易に完成でき,かつ効果を増進できないときは,前段落に掲げる事情に該当しないといえども,本法により実用新案を出願することができない。