グローバルテクノロジーの進歩に伴い、ブロックチェーン、クラウドコンピューティング、人工知能及びAR(拡張現実)/VR(仮想現実)等の技術を組み合わせたメタバース (metaverse)産業は、近年徐々に新しい経済体系と商業モデルを形成している。メタバースにより構築された仮想世界は様々な分野に関連し、かつその応用範囲も、ショッピング、金融、ソーシャル、ビジネス、教育、展示、エンタメなど極めて広い。新しいものづくりと開発を推奨する知的財産保護制度の観点から、台湾におけるメタバースに関連する技術の特許、商標の出願及び審査の現況を簡単に紹介する。
特許
台湾知的財産局(TIPO)によるメタバース(metaverse)関連の特許レポートの分析によると、世界におけるメタバースの特許出願は2014年以降、特に2016~2017年にかけて顕著に成長しており、その後の数年で徐々に落ち着いてきたが、2019年のコロナ禍で人々の交流と作業の形態が大幅に変化し、一般的には、メタバースの産業とマーケットの規模は2022年のポストコロナ時代から徐々に成長していくと予測されている。2021年以前の台湾での特許出願によると、メタバース特許出願の出願人上位10社は、日本の半導体エネルギー研究所、台湾のHTC、エイサー、米国のクアルコム、日本のセイコーエプソン、台湾のメディアテック、米国のMETA(旧FACEBOOK)、中国のアリババ、台湾の中強光電、日本のソニーとなる。一方、TIPOのデータによると、世界におけるメタバース特許出願の主な台湾メーカーはHTC、エイサー、未来市 (XRspace、2017年設立)、メディアテック、中強光電となる。
特許国際分類カテゴリから見て、メタバース特許は早期においては光学類(G02)と通信類(H04)の出願が多く、現在では台湾も世界と同様に、計算類(G06)が主となるが、近年台湾での光学類(G02)の出願は徐々に計算類(G06)に迫っている。基本的に、メタバースはハード設備、装置上でソフトを用いて構築した仮想世界という形で呈されるため、特許出願は装置(ハード)および/または方法(ソフト)に分けられる。メタバースの概念は極めて広いため、メタバース関連の特許を出願する際は発明の定義に合致しているか否かや、例えばデータを記録する特性をもつブロックチェーンを利用しているが特別な効果を奏していないといったように、その技術特徴が当業者にとって既存の技術を用いた簡単な変更であるか否か、に注意すべきである。仮に、出願する発明が方法の場合、単純な商業方法は自然法則を利用しておらず、特許要件を満たすことはできないが、ソフト技術とハード装置を組み合わせて具体的に実施する方法となれば、例えばコンピュータプログラム製品を標的として特許保護を求めることができる。
意匠
意匠は、物品が視覚を通じて呈される創作を保護するもので、物品の具体的な外観意匠、空間意匠または画像意匠などを含み、画像意匠(コンピュータ画像Icons、グラフィカルユーザインターフェースGUI)が定義する物品は、コンピュータプログラム製品など実体形状を有さないソフトまたはアプリケーションであっても良い。TIPOはメタバースの意匠登録出願が可能な標的をおおよそ物品意匠(VRゴーグルなどのハードの外観を指す)と画像意匠(NFTの外観などの仮想的なデジタルデザイン)に分けている。メタバースに関連する画像意匠は実体形態を有さない仮想物品(または仮想空間)であるため、その意匠の名称は、例えば「コンピュータプログラム製品の画像」など、応用する物品を記載しなければならず、そして例えば表示装置とモニターなど、権利を主張しない部分は、破線で描く必要はない(つまり、主張しない部分の記載は必要なし)ことに注意したい。このような画像意匠の意匠権の効力は、実体物品と仮想物品を同時に出願しない限り、物品の実体外観には及ばず、コンピュータプログラムによって生成された仮想外観のみ有効となる。
商標
出願人は、メタバースに関連する実体商品、仮想商品および/またはサービスに対し商標登録を出願することができる。商標登録出願は商品カテゴリを指定する必要があるため、TIPOは仮想商品/サービスのメタバースにおける商標登録出願のカテゴリを四大類に分類した:
第9類商品 – ダウンロード可能な仮想映像ファイルまたはソフト
第42類サービス – ネットでダウンロード不可な仮想映像ファイルまたはソフト
第35類サービス – 仮想商品の小売サービス
第41類サービス – エンターテイメントサービス
仮に出願人がいずれかの実体商品の商標登録を既に取得している場合、カテゴリが異なるため、その権利保護は仮想商品には及ばず、逆も同じである。実体商品を基に作成された仮想商品は、一般的に両者の性質、機能は異なるので類似性を有さないが、サービス類の商標登録出願の場合は類似性を構成する可能性がある、これはサービスの提供は目的または本質的において違いがないためである。しかし、商標侵害は依然として、例えば商標の類似、商品/サービスにおける類似の要素から、混同誤認の恐れ等の原因となるか否かを判断しなければならない。
