商標の設計要素が同一文字のとき、必ずしも誤認混同のおそれは成立しない(台湾)

商標の設計要素が同一文字のとき、必ずしも誤認混同のおそれは成立しない(台湾)

公布日:2016年04月18日

多国籍ホテルグループのインターコンチネンタル ホテルズ グループ(INTERCONTINENTAL HOTELS GROUP)の傘下にあるシックス コンチネンツ ホテルズ(SIX CONTINENTS HOTELS)が、アルファベット「H」を主要部分とし、「飲食店、ホテル」役務を指定した商標(登録第1552474号、出願人:逸寛股份有限公司(台湾))に異議を申し立てた。

異議申立は不成立となったため申立人は経済部に訴願を提起し、原処分取消の決定が出された。これに対して被異議人側が知的財産裁判所に行政訴訟を提起した。知的財産裁判所は、異議申立人に参加人として訴訟に加わるよう命じた。

行政訴訟では訴願決定が取り消された。この判決要旨が台湾知的財産局の電子報に掲載された。以下は電子報に掲載された判決要旨の訳文である。

なお、判決では著名性の認定根拠として、異議申立人が提出した台湾以外(中国、香港)の使用証拠も認められた。文化、言語に共通性があり台湾からのビジネス・旅行客の往来も多く、これらの国、地域で引用商標に接触して引用商標を認識し、知名度は台湾に達し著名商標であると認定している。台湾から見ると、日本は中国に次ぎ第2位の渡航先になっている。また両国間の文化・経済交流も活発であり、同じ漢字文化圏でもあるため、著名性の証拠として、日本における使用証拠も有力であると考えられる。

電子報掲載日:2016年4月5日

知的財産裁判所 行政判決 104年度行商訴字第29号

原告:逸寛股份有限公司(台湾)
被告:経済部
参加人:SIX CONTINENTS HOTELS, INC. (アメリカ)

主文:訴願決定を取り消す
   訴訟費用は被告の負担とする。

原告は「HOTEL 及び Hデザイン図」商標を「飲食店、ホテル」役務を指定して出願し、商標登録第1552474号を取得した。参加人は係争商標は商標法の規定に違反しているとして異議を申し立てた。原処分官庁は審査し、異議不成立の処分を行った。参加人は被告に訴願を提起し、被告は「原処分取消、原処分官庁が別に適法の処分を行う」との決定を行った。原告は不服として、行政訴訟を提起した。

裁判所の判決要旨:

係争商標と引用商標間の誤認混同のおそれの有無について、参考にする関連要素を認定基準として以下の通り論述する:

  1. 商標の識別性
    係争商標は「H」デザイン図と「HOTEL」で構成され、「H」デザイン図部分は、毛筆調の線でデザインされた「人」と数字の「1」を結合した独特なスタイルの「H」で、且つ当該独特なスタイルの「H」デザイン図が商標全体の1/2以上の面積を占めている。人が目にした時に与える印象は強く、係争商標の「主要部分」である。一般的に飲食、旅行・宿泊業者は、英文字「H」を商標の基本的な要素として使用することが非常に多く、何れも「H」のスタイル、デザインを変化させようと努力していることは、添付の商標文字調査資料を参考にできる。係争商標は、同一アルファベットの「H」で上記の通り、異なった概念を表現しており、かなりの識別性がある。引用商標のデザインされたアルファベット「H」は、外観上は二つの「十」を結合させたように見え、デザインされたラインはシンプルではっきりしており、人が目にした時の印象はアルファベット「H」でかなり識別性がある。係争商標と引用商標は何れもかなりの識別性があり、商標の概念の強度から言えば甲乙つけがたい。
  2. 引用された全ての商標は著名商標である
    商標が我が国で使用されていない又は我が国における実際使用の情況が広範でないとしても、当該商標が国外で広範に使用されて築かれた知名度が我が国に及んでいることが客観的な証拠で明らかに示されれば、当該商標は著名だと認定できる。台湾と中国、香港とのビジネス、旅行の往来は頻繁で、且つ双方の文化、言語は共通性があり、中国、香港に行くと飲食、旅行・宿泊のニーズもある。また、我が国からの出国者数のデータを参酌すると、国民は国内だけで引用諸商標に接触するだけでなく、ビジネス、旅行により国外で接触したことにより全ての引用商標を認識したことも認められる。全引用商標の知名度は既に我が国に及んでおり、我が国の関連公衆があまねく認知し、著名商標の程度に達していると認めなければならない。
  3. 類似程度が低い商標
    両商標が類似か否かは、その商品に関連する購入者の全体的な印象(即ち、外観、称呼又は観念の組み合わせ)に基づいて判断しなければならず、全体観察の原則に反して、勝手に商標を分割して観察することはできない。但し、商標中の一定部分が特に人の注意を引き、この部分に商標の識別の機能があって特に顕著な場合は、この部分について更に比較観察して両商標が類似か否かを判断できる。係争商標は、「H」デザイン図及び「HOTEL」で構成され、「H」デザイン図部分は、デザイン化された中国語「人」の文字と数字「1」を結合して形成した独特なスタイルの「H」で、人が目にした時に与える印象は強く、係争商標の「主要部分」を構成している。引用商標の外観は「二つの十」を結合して形成した「H」である。両者の商標を比較すると、何れもアルファベット「H」を表現しているが、「人及び1」を結合した外観と、「二つの十」を結合した外観とは、両者の類似程度は低い。観念の点から見ると、係争商標の主要部分は「人」の文字と数字「1」との結合であり、形作られた「H」部分は全体として「1人HOTEL」又は「人HOTEL」の概念を伝えている。引用商標の「二つの十」を結合して構成した「H」図形は全ての引用商標の主要部分となっており、伝えるのは「HOTEL」の概念で、「1人」又は「人」HOTELの概念の解釈は生じず、係争商標と全引用商標が伝える概念は異なる。称呼については、外観、観念から受ける影響のため、称呼がそれに伴って変化する可能性があり、係争商標は「1人HOTEL」、「人HOTEL」又は「H HOTEL」と読まれるかもしれない。引用商標の称呼は「H」、或いは「Holiday」かもしれず、係争商標と全引用商標の両者の称呼は区別することが可能で、両者は類似の程度が低い商標である。
  4. 役務の類似
    係争商標が指定する「飲食店、ホテル」と、全引用商標が指定する「ホテル、モーテル、宿泊提供の役務...」等を比較すると、両者は何れも消費者に飲食、宿泊を提供する役務で、消費者のニーズを満足させる及び提供する上で共通又は関連するところがある。もし同一又は類似の商標を表示すれば、一般的な社会通念及び市場取引の状況から、同一の出所であると消費者を誤認させ易く、同一又は類似の程度が高い役務である。

  5. 係争商標の出願は善意である
    Hotelは普通名詞で、英語アルファベット「H」をHotelの意味で用いることはよくある。「H」は大抵飲食、ホテル業のデザインの基本要素であり、他人に優先して「H」を飲食、ホテル業のデザイン要素として使用し、それ以外の者が同一の「H」をデザイン要素とすることを排除することはできない。同じアルファベット「H」を如何に異なるように工夫したのかが、商標出願が善意であるか否かを判別する判断の根拠の一つである。以上から、係争商標と全引用商標は外観、観念、称呼から、両商標の類似の程度は低いと認められる。係争商標には出願時、自己の標識のイメージを創造しようとした努力が見られ、善意に基づいていないとは認め難い。

以上を総合し、係争商標と全引用商標の指定役務は同一又は高度に類似している。しかし両者の類似の程度は高くなく、それぞれがかなりの識別性を有する、係争商標の出願は善意に基づく等、係争商標は関連消費者又は関連公衆を誤認させて両者は同一の出所又は同一ではないが関連する出所であると誤認させ、誤認混同が生じるおそれがあるとは認めがたい。

商標の設計要素が同一文字のとき、必ずしも誤認混同のおそれは成立しない(台湾)
商標の設計要素が同一文字のとき、必ずしも誤認混同のおそれは成立しない(台湾)