立法院で審議中の商標法改正案は2003年04月29日、同院第三読会を通過し立法手続が完了した。この改正案は近いうちに総統令をもって公布される見込みであるが、その施行日は公布の6カ月後に予定されている。
今回の改正は、かなり大幅なものであって、新規条文40条を追加し、現行条文23条を削除するほか、50条について部分的修正が行なわれている。以下に掲載するのは、経済部の商標法改正案逐条説明を参照して、商標の登録及び管理に関する主な事項をまとめたものである。
- 商標の定義に関する規定(改正案第2条、第85条)現行法では、商品を表す標識を「商標」、サービスを表す標識を「服務標章」(サービス マーク)と称しているが、現今の商業活動では、ある標識が商標であるか又はサービスマークであるか、区別をするのが困難な場合がある。また、商品とサービスの間には類似概念を構成する可能性がある。さらに改正案では、一出願多分類の制度が導入され、一出願に類の異なる商品及びサービスを指定することができるので、商品又はサービスの類似関係については、商品とサービスを綜合して判断をする必要がある。このため、改正案では、実務上の必要及び国際的な立法の傾向を考慮して、商標の定義を拡大し、商品を表す標識とサービスを表す標識を合わせて「商標」と称する。改正案の施行時に登録が存続し又は出願が係属中であるサービスマークは、改正案 の施行後「商標」と称される。
- 営業及び商標の使用の意図に関する規定の削除(改正案第2条) 現行法では、商標は自己の営業に係る商品(又はサービス)を表すために使用されるものであること、また、出願人に確実にその商標を使用する意図があることを登録出願の要件としている。このため、出願人はその出願商標の指定商品が自己の営業範囲に入ることを証明しなければならず、その証明書類としては主として会社登記簿謄本が使用されている(ただし、会社登記簿謄本のかわりに出願人の押印(又は署名)した「商標の使用(又は使用意図)宣言書」を提出することが認められている)。改正案では、出願手続の簡素化のため、また、1994年10月27日の商標法条約第3条(7)に「出願に関し、商標登記簿の証明書又は営業に関する証明書類を要求することができない」と規定されているので、これを参照して、現行条文の「営業」及び「商標の使用意図」に関する規定が削除された
- 優先権主張手続の簡略化(改正案第4条)現行法では、商標登録出願について優先権を主張する場合、出願人は基本出願の出願日、出願番号及び出願国を出願時に願書に記載しなければならず、記載をしなかったときは、優先権を喪失する。改正案では、出願番号は基本出願と台湾での出願が同一内容であることを確認するものに過ぎないので、手続の簡略化のため、補正可能の事項に改められた。
- 音響及び立体的形状の商標(改正案第5条、第17条第2項) 現行法では、商標は平面で表現される文字、図形、記号、色彩の組み合わせ又はそれらの結合に限定されるが、改正案では、音響及び立体的形状も商標として登録をすることができる。また、色彩については、現行条文で「色彩の組み合わせ」と規定されているのが、改正案では、「色彩」に修正されたので、単色の商標であっても、出願人の商品又はサービスを識別する標識と認められるものは、これを登録することができる。なお、音響及び立体形状の商標を出願するときは、その商標を視覚で認知できる方式で、たとえば、音響商標の場合には五線譜又はその他の音符を表現する方式で、立体 商標の場合には透視図又はその他の絵図の方式で、表現しなければならない。
- の使用の定義(改正案第6条)現行法では、商標の使用とは、販売を目的として商標を商品又はその包装、容器、ラベル、説明書、価格表又はその他の類似の物件に使用し、これを所持し、陳列し又は配布することをいい、また、商品の販売促進のため、商標をテレビジョン、ラジオ放送若しくは新聞紙類に広告し又は展覧会に参加して展示する行為も、商標の使用とみなされる。しかし、電子ビジネス及びインターネットの発達により、現行法に定める商標の使用の定義では、もはや実際の状況に対応できないので、改正案では、販売を目的として、商標を商品、サービス又はその他の物件に使用することに加えて、平面映像、デジタル音響・映像、電子媒体又はその他の媒体を利用して関係消費者に商標であることを認識させるに足りる行為も商標の使用と認められる
- 一出願多分類の制度の導入(改正案第17条第4項) 現行法では、登録出願は類を単位とし、別類に属する商品(サービス)については、別個に出願をしなければならないが、改正案では、一出願多分類の制度が導入された。
- 出願及び登録の分割(改正案第21条、第31条、第33条、第47条) 一出願多分類の制度の導入にともない、改正案では登録出願又は登録が二以上の商品又はサービスを指定したものである場合、出願人又は登録権者の必要に応じて、出願中においては、これを2以上の出願に分割し、また、登録後においては、一部の商又はサービスを分割して移転し使用を許諾し、又は異議決定、審判若しくは取消の確定前において商標権を分割することができる旨の規定が定められた。
- 登録後異議制度の採用(改正案第27条、第40条から第51条まで)現行法の規定では、商標権の取得については、出願公告後、異議申立がなく、又は異議があった場合において異議不成立の決定が確定したときにはじめて登録が認められる。出願人の権利取得の迅速化を図り、かつ、登録出願の審査所要期間を短縮するため、改正案では、審査を経て登録適格とされた商標は、登録料の全額又は第1期分の納付後直ちに登録され、その登録に対し法律に反する事由があると認めるときは、何人も、登録公告後2カ月以内に異議申立をすることができる。
- 登録料及びその分割納付に関する規定(改正案第25条、第26条、第89条)現行法の規定では、商標の登録出願時に登録料を納付し、登録時には手数料の 納付を要しない。また、登録存続中の10年の期間内においても登録の維持料金を納付する規定はない。改正案では、登録料を2期に分けて納付することができる。登録料は、審査決定書の送達の翌日から2カ月以内に納付しなければならないが、これを2期に分けて納付する場合、第2期分の登録料は、登録の公告当日から起算して第3年の満了前3カ月以内に納付しなければならない。ただし、この第2期分の登録料を期間内に納付しなかったときは、期間の経過後6カ月以内に所定の登録料の倍額をもって追納をすることができる。なお、改正案の施行前に審査を経て公告決定になった登録出願については、改正案の施行時までに原決定が取り消されていない場合、改正後の規定に従って登録をする。ただし、その第1期分の登録料は、すでに納付したものとみなされる。
- 連合商標の廃止及び防護商標の独立の商標への変更申請、不使用取消期間の起算日(現行法第22条を削除、改正案第86条、第87条、第88条)不使用の商標が不当に累積するのを防ぎ、審査のコスト及び行政管理上の困難を減少するため、改正案では、英国と日本がそれぞれ1994年と1996年の法改正で連合商標制度を廃止したことを参照して、連合商標制度(連合サービスマーク、連合団体標章、連合証明標章を含む)が廃止された。改正案の施行時に登録が存続している連合商標は、独立の商標とみなされ、その存続期間は、原登録の存続期間を基準とする。改正案の施行時に、まだ登録になっていない連合商標の出願については、これを独立の商標出願として審査する。連合商標制度の廃止により独立の商標になった場合、その不使用取消の3年の期間は、改正案の施行当日から起算される。改正案の施行時に登録が存続している防護商標については、その存続期間の満了前に商標権者がこれを独立の商標に変更する申請をしなければならず、期間内に変更を申請しなかったときは、商標権が消滅する。改正案の施行時にまだ登録になっていない防護商標の出願は、改正案施行の日から独立の商標出願とみなされる。防護商標から独立の商標に変更された場合、その不使用取消の3年の期間は、変更当日から起算される。
- 更新登録出願の実体審査の廃止(現行法第25条第2項及び第3項を削除)現行法では、商標権の存続期間の更新出願に対し、法定要件及び商標の実際使用状況について実体審査が行われるが、この規定は商標法条約の規定に反するうえに、審査に時間を要し、かつ、手続きが繁雑であって、行政の効率に良くない影響を及ぼす。また、商標の不使用については、登録取消の規定があるので、更新時に商標の実際使用の審査をする必要はないと考えられる。このため、改正案では、更新出願時 の実体審査が廃止された。
- 商標権の移転の場合における使用許諾の存続(改正案第33条第3項)商標の使用許諾の登録後に商標権が移転された場合における被許諾者の権利を保護するため、改正案では、移転の場合、その使用許諾は譲受人に対し引き続き効力を有する旨の規定が定められた。
- 移転後における商標の使用に対する制限(改正案第36条)
- 改正案では商標権は分割して移転することができ、かつ、自由に移転することができる。このため、移転後において、消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある場合 には、その使用に制限を加える必要があるので、誤認混同を生じるおそれがあるとき は、適切な識別の表示を付加すべき旨の規定が設けられた。 14.利害関係人の資格に関する規定の削除(現行法第8条を削除)現行法第8条では、「この法律で利害関係人とは、当該商標の登録がその権利又は利益に影響を及ぼす関係にある者をいう」と規定されているが、改正案では、この条文が削除された。なお、改正案の立法趣旨「説明」には、この点について、「利害関係があるか否かというのは、実際に個別の案件によって判断すべきことであるので、特に明文の規定を定める必要はない」と述べられている。
