化学関連発明特許出願の共同発明者の認定について、台湾知的財産裁判所から判決(102年度民専上字第23号民事判決)が出された。その事実及び判決の要旨は以下の通りである。
事実
甲は乙社の法定代理人である丁の招聘を受け、乙社の出資で研究開発が行われた。係争特許が開示する新規化合物の構造分析及びIUPAC名の命名などの作業は甲が行い、技術特徴,実験結果,明細書の起草などをまとめ、外部のメーカーとの話し合い、討論を行ったのも甲である。甲の離職前に係争特許の特許請求の範囲にかかる研究開発は完了したが、当該特許出願で発明者とされた者は乙社の法定代理人である丁で、乙社は甲を共同発明者であると認めなかったため、甲は訴訟を提起した。
争点
甲は係争特許の共同発明者であるか否か
判決
- 共同発明者は研究に共同で従事した事実がなければならない
発明の構想は特許請求の範囲中の各技術特徴に表現され、一つの共同発明の構想について、どの発明者も当該発明に対して同じ形式或いは同じ程度の貢献をする必要はないが、どの発明者も重要な部分を創作して当該発明が完成したという事実が必要である。また、発明の構想が確立した後に実行しただけの者は発明者となることができず、さらに、単に発明者に一般的な知識を提供したのみ、或いは関係技術を解釈したのみで、発明全体について具体的な着想がない者も共同発明者となることはできない。 - 化合物の発明の構想
「化合物」発明の構想について、化合物の特定「構造」を案出しただけで、当該化合物を生成する「方法」が欠けている場合には、当該化合物の発明の構想がすでに完成していることにはならない。従って「化合物」の発明の構想は特定化合物の化学構造及び当該化合物を製造する操作方法を内包しなければならない。 - 甲は共同発明者ではない
本件の係争特許が「化合物」である以上、発明の構想には請求する化合物の構造と製造方法が含まれるべきである。甲は係争特許の新規化合物の構造及び製造方法に実質的に貢献したことを証明しなければ係争特許の共同発明者であることを証明することができない。甲が係争特許の新規化合物の構造解析及びIUPAC名の命名を行ったとしても、この作業に従事しただけでは当該新規化合物の構造及び製造方法に実質的に貢献したと認めるのは難しい。さらに、甲は特許事務所と連携して係争特許の出願事項及び特許明細書の起草などについて討論していたとしても、実際に完成した発明を明細書に表現する、当該発明を出願する、或いは発明の完成を補助するといった事務作業は発明者になれるかどうかに関係しない。甲が提出した証拠では、係争特許の発明に実質的な貢献があったことを証明することができず、係争特許の共同発明者であることを証明するに十分でない。
よって、裁判所により甲は当該特許出願の共同発明者ではないと判決された。


