台湾、知的財産局ウェブサイトの2014年7月5日付電子報に、著名な登録商標中の文字を商号とした被告に対し、原告が名称の変更及び侵害排除を求めた裁判の知的財産裁判所判決の要旨が掲載された。
以下は、その訳文である。
電子報掲載日:2014年7月5日
主文: 被告は、添付1の「夢時代」の言葉をその経営主体の名称とすることはできない。更に、台北市商業処で、「夢時代」と同一又は類似の言葉を含まない商号への変更登記手続きを行わなければならない。
被告は看板、名刺、ウェブサイト、広告、及びその他の流通物件に添付1の商標と同一又は類似するものを使用できず、添付1の商標と同一又は類似するものを使用した看板、名刺、ウェブサイト、広告及びその他の流通物件を撤去、除去、及び廃棄しなければならない。
訴訟費用は被告の負担とする。
原告は、2003年から連続して、Dream Mall、夢時代等を経済部知的財産局に商標登録出願した。現在、計44件の「夢時代 Dream Mall及び図」等のシリーズ商標がある。多額の費用をかけて販路の拡大と経営の多角化に力を注ぎ、関連消費者に熟知されているため、識別性が極めて強い著名商標である。被告は原告の同意を得ずに、2013年「夢時代」を質屋の名称とし、質屋の認可を取得した。現在、台北市で動産の質入れ、商工業への融資、自動車担保ローンを経営し、またウェブサイトで宣伝した。原告は弁護士に委任し、被告に侵害行為を停止するよう通知し、併せて営業の主体の名称変更登記の手続きを要求したが、最終的に拒絶された。そのため、商標法第70条第2号、第68条第3号、第69条第1、2項に基づき、被告に名称変更、更に侵害排除を請求した。
商標法第70条第2号の規定「他人の同意を得ずに、以下に掲げる事由の一つに該当する行為をしたときは、商標権を侵害したものとみなす。2. 他人の著名登録商標であることを明らかに知っていながら、当該商標の文字を自己の会社名称、商号、団体名、ドメイン名又はその他営業の主体の名称とし、関連消費者が誤認混同するおそれがある、又は当該商標の識別性又は信用・名誉を損じるおそれがあるとき。」これにより、商標権者の同意を得ていない他人の「登録商標」について、当該商標中の文字をそのまま自己の会社名称、商号名称、ドメイン名或いはその他営業の主体又は出所の標識とし、商品又は役務の関連消費者を誤認混同させるとき、商標権を侵害する事実であるとみなす。現行法では、「著名商標」であることを必要とするよう改正されており、登録商標を過度に保護し、権利乱用の問題が発生することを防止している。
原告は、2003年から連続して添付図の「夢時代 Dream Mall 及び図」商標の登録を取得した。指定商品、役務は多くの類をカバーし、原告の商標登録出願の時期は非常に早く、既に10年を経過し、更に指定商品、役務の範囲は多様化している。原告は、添付1の商標を夢時代ショッピングモール、及び関連するデパートやショッピングモールの業務に使用したほか、台北富邦銀行と提携して「富邦夢時代提携カード」を発行した。提携カードの表面、看板広告、及び申込書には添付1の商標が表示されている。この提携カードは元来、台北富邦銀行が発行するもので、保有者は特約店において、クレジットカードの使用、キャッシング、商店の優待等のサービスが可能で、金融・貸付に属するサービスの1種である。前記の提携カードの見本、看板広告、申込書を見ると、添付1の商標は台北富邦銀行に使用許諾されて提携カードが発行され、添付1の原告の商標が、関連事業者及び消費者に知られていると認められる。また、知的財産局は、2013年11月13日に、本件とは別の異議申立案件の異議申立決定書で、「夢時代 Dream Mall 及び図」商標が表彰する業務上の信用は、当該異議申立案件の商標の登録出願日2011年11月24日以前に、広く関連事業者又は消費者に熟知され、著名商標のレベルに達していたと認定した。
2012年8月31日、被告の前任者が商号名称を変更した際、添付1の商標は、既に我が国の関連事業者又は消費者に広く認知され、著名商標のレベルに達していた。被告が「夢時代」が著名であることを知っていたことにより、2013年6月4日に復業を申請した行為は、単一の出所である添付1の商標を2種類以上の商品又は役務の出所に変えさせることを非常に強く指示しており、関連事業者又は消費者に添付1の商標は単一であると連想させず、又は独特であるとの印象を生じさせず、添付1の商標の識別性を減損する。もし阻止しなければ、関連事業者又は消費者に添付1の商標は任意に使用できると誤解させる可能性があり、当該著名商標の識別性の希釈化を引き起こす。この他、商標法第70条第2号でいう、添付1の商標の識別性及び信用・名誉を減損するおそれがあることは、行為者が経営する業務範囲と著名な登録商標を使用する商品又は役務が同一又は類似である必要はない。従って被告が両者の経営する業務の流通経路、方式、対象、消費者群、ターゲット等について、被告は原告と直接競合せず、「夢時代」の3文字が、人に被告の経営する質屋を連想させ及び混同させる筈はなく、更に両者の店舗建築、経営イメージには全く関連性がない等々主張したが、全く採用できない。
被告が経営する質屋の業務は「質入れ」のサービスに属する。国民の一般的な観念では、「質屋」又は「質入れ」は、現金が緊急に入用であるが、金融機関から金を借りるには信用が不足している者が、質業者に動産を提供して現金を抵当借りする事業である。我が国の社会、大衆の印象では、信用が足りない、又は急にお金が必要となったとき、迅速に提供する抵当貸しのサービスである。明らかに添付1の商標が示すイメージとは隔たりが大きい。たとえ両者のサービスの対象とするものが同一商品又は役務ではなく、関連消費者に誤認混同が生じるおそれがないとしても、それぞれの表彰するイメージの落差は非常に大きい。被告が原告の添付1の商標中の文字「夢時代」を質屋の事業に用いたのは、関連する消費者に添付1の商標に「懐具合が切迫している」「消費できない」との連想を生じさせ、当然、添付1の商標の信用・名誉を減損するおそれがある。
質屋を経営していた被告の前任者が、2012年8月31日に、原告の同意を得ずに勝手に「夢時代質屋」と変更し、更に、被告が2013年6月4日に引き継いで、復業を申請した。被告は夢時代ショッピングモール及び添付1の商標が著名な登録商標である事実を明らかに知っていた。当該著名登録商標中の文字「夢時代」を自己の質屋の商号名称としたのは、人にその経営する質屋の商号が添付1の商標を連想させるおそれがあり、指し示す出所の識別性に影響がある。更に、添付1の商標の信用・名誉にマイナスの連想を生じさせるおそれがある。従って、被告には、商標法第70条第2号における商標権侵害の事実があるとみなす。
