台湾の知的財産局ウェブサイトの、本年1月5日付電子報に、特許権の無効審判において知的財産局が判断を下していない無効審判理由を、行政訴訟で知的財産裁判所が審理できるかについて、判例に基づいて説明した記事が掲載された。
以下はその訳文である。
知的財産裁判所 判決
原告:発明特許登録権利者
被告:経済部知的財産局
参加人:無効審判請求人
主文:原告の訴えを棄却する。
電子報掲載日:2013年01月5日
本件原告が所有する発明特許「角度調節可能な首振りラチェットレンチ」は、特許査定時の特許法第22条第4項の規定に違反するとして、参加人が無効審判を請求した。被告は審理し、「無効審判成立、特許権取消」の審決を行った。原告は不服であるとして訴願を提起し、経済部は訴願棄却を決定したが、原告は服さず行政訴訟を提起した。
参加人は、前に「証拠2、証拠3、証拠4の組合せ」、「証拠2、証拠3、証拠4、証拠5の組合せ」により、係争特許出願のクレーム第1~4項は何れも進歩性を有さないと主張した。係争特許出願のクレーム第4項について、被告は証拠2、証拠3、証拠4、証拠5の組合せで進歩性を有さないことを証明するに足りると認定したのみで、証拠2、証拠3、証拠4の組合せについては論究しなかった。その後、知的財産裁判所の審理において原告、被告双方及び参加人が共に争点を整理し、係争特許出願のクレーム第4項について、その争点は(1)証拠2、証拠3、証拠4の組合せ及び(2)証拠2、証拠3、証拠4、証拠5の組合せにおいて当該クレームが進歩性を有さないことを証明できるか否かにあった。
上述の争点(1)部分について、知的財産裁判所は判決で以下の通り指摘した:
憲法上の権力分立の原則に基づき、元来、司法権と行政権の分立により、行政権を行使するか否かは行政官庁の第一次的判断権とし、司法官庁は尊重しなければならない。行政官庁が判断を下していない場合、法律に明文の規定がある場合を除き、行政訴訟において司法官庁が直接、第一次的判断権を行使することはできない。「証拠2、証拠3、証拠4の組合せが係争特許出願のクレーム第4項が進歩性を有していないことを証明できるか否か」の争点については、参加人が本件無効審判請求の理由として挙げているが、被告及び訴願官庁で審理されていない。本件は係争特許権利者が原告として提起した取消訴訟であり、当裁判所の取消訴訟における司法審査の目的は、係争特許権取消の審決(即ち原処分)が合法であるか否かの審理、究明にある。当該争点を審理、酌量すれば、即ち訴訟の基礎となる事実が変化してしまい、原処分に関する取消訴訟の合法性の審理範囲を明らかに逸脱し、行政取消訴訟の本旨に合致しない。また、知的財産案件審理法第33条第1項では特許権取消に関する行政訴訟において、当事者が同一の取消理由について新証拠を提出することを認めている。但し、当該項の規定は、特許無効審判について、特許主務官庁が無効審判不成立とし、特許無効審判請求人が特許主務官庁の処分に服さず、当該主務官庁を被告として提起した行政訴訟においてはじめて適用されるものであり、且つ、無効審判請求人を原告とした場合であると限定的に解釈されるべきである。特許無効審判について特許主務官庁が無効審判成立として特許権を取り消した場合、特許権者が特許権取消の当該審決に服さず、訴願手続きした後、特許権者を原告として提起した取消訴訟においては、被告である特許主務官庁、及び参加人である無効審判請求人は何れも当該項に基づき特許権取消の新証拠を提出できる当事者に該当しない(最高行政法院100年度判字第2247号判決参照)。このため、当裁判所はこの争点を審理、酌量する立場にはない。

