黙示の同意及び表見代理の事実判定(台湾)

黙示の同意及び表見代理の事実判定(台湾) 3

韓国の会社が同社の製造した商品のブランドについて、台湾の会社に使用を許諾した。台湾の会社が当該許諾されたブランドを台湾において商標登録したため、韓国の会社は商標法第30条第1項第12号(同一又は類似の商品又は役務について先使用である他人の商標と同一又は類似であり、かつ、出願人が当該他人との契約、地縁、業務上の取引又はその他の関係により、当該他人の商標の存在を知り、意図的に模倣し登録出願したものは登録できない。但し、当該他人の同意を得て登録を出願した場合は、この限りでない。)に基づき、当該登録に対し無効審判を請求した。

知的財産局は審査の結果、当該登録を取消処分とした。登録権者は不服として訴願及び行政訴訟を提起したが、棄却された。以下は知的財産局のウェブサイトに掲載された行政判決の要旨の和訳である。

電子報掲載日:2016年5月5日 係争商標: 登録第1536654号

黙示の同意及び表見代理の事実判定(台湾) 4

知的財産裁判所 行政判決 104年度行商訴字第84号

原告:鑫正宇實業有限公司(台湾) ※ 係争商標の登録権者
被告:経済部知的財産局
参加人:富得盈股份有限公司(韓国) ※ 無効審判請求人

主文:原告の訴えを棄却する。
   訴訟費用は原告の負担とする。

原告は「coocan」商標を「煮込み鍋;中華鍋;フライパン;…」商品を指定し、被告に登録出願した。被告は登録第1536654号商標として登録を認めた。韓国の富得盈股份有限公司は商標法第30条第1項第12号の規定に違反するとして、実際に「coocan」商標を先行使用していることを根拠に無効審判を請求した。被告は審査し、登録取消処分とした。原告は不服として訴願及び行政訴訟を提起した。

裁判所の判決要旨:

  1. 両商標の外観、称呼は何れも完全に同一で、同一の商標を構成しており、指定商品及び役務は高度に類似し、更に本件参加人、富得盈股份有限公司は、係争商標が2012年3月7日に登録出願される以前に、鍋類商品に無効審判で引用された「coocan」商標を先使用している事実があると認定できる。また、原告は2011年12月から連続して参加人、富得盈股份有限公司から鍋類商品を輸入し販売していたことを否認していない。原告は、係争商標の出願以前に参加人、富得盈股份有限公司との間に契約又は業務往来関係があって引用商標の存在を知っていた。
  2. 参加人の富得盈股份有限公司は、原告が係争商標を登録することに同意していない。
    1. 単なる沈黙は黙示の意思表示とすることはできない。黙示とは、言語、文字以外のその他の方法により間接的にその意思を推測させる意思表示であって、原則的に明示の意思表示と同一の効力がある。意思表示をする者の行動又はその他の情況に基づいて、間接的に同意の効力、意思の存在を推測できれば黙示の意思表示とすることができる。しかしながら、沈黙は単に不作為に過ぎず、間接的な意思表示ではない。法律又は契約で規定がある場合を除いて、原則的に法律効果は生じない(最高裁判所29年度上字762号判例趣旨参照のこと)。参加人、富得盈股份有限公司の許諾書では単に富得盈股份有限公司は原告を含む3社のメーカーに台湾における富得盈股份有限公司が生産したcoocan商標製品の販売を許諾しているだけで、原告が「coocan」商標を出願することに同意する旨の記載はない。たとえ参加人、富得盈股份有限公司が2012年に原告が我が国において係争商標を登録したことを知り得たとしても、既に不同意であることを明確に表示し且つ法律上の行動をとっている。原告が指摘した、黙示の同意と言え、更には商標の属地主義に基づいて原告は既に我が国で係争商標の商標権を取得しているのであるから我が国で「coocan」商標を使用でき、参加人、富得盈股份有限公司の登録についての同意は必要ないとは言い難い。参加人の富得盈股份有限公司が係争商標の登録を知った後、2012年12月28日にまた、原告と使用許諾書を交わし、無効審判の根拠とした商標の使用を原告に許諾したことは、参加人、富得盈股份有限公司が間違いなく係争商標の登録に同意していないことが分かる。
    2. 許諾書、又は代理権許諾を示す如何なる行為もない情況に、表見代理の事実はない。「自己の行為から代理権を他人へ許諾することを表示している、又は他人がその代理人であることを表示していることを知りながら反対であることを表示しないとき、第三者に対して許諾者の責任を負わなければならない。但し、第三者がその者に代理権がないことを明らかに知っている、又は知り得たときは、この限りでない。」ことは民法第169条に明文の規定がある。本件で係争となっている提携契約書について、原告はいかなる許諾書も、又は参加人、富得盈股份有限公司が係争となっている提携契約書に署名する権限を金氏に与えたことを証明するその他の証拠も提出していない。金氏の名刺には、英語で「coocan」、「Senior Executive Vice President」の記載があるが、金氏が参加人の会社従業員であることは証明できず、また金氏が参加人の代理人として如何なる契約にも署名できることは表示されていない。更に、係争となっている提携契約書の記載を見ると、契約者の甲は原告、乙は参加人の代理人Crevas社となっており、乙の署名者は金氏である。しかし契約書の記載ではCrevas社が参加人の代理人であって、金氏は代理人ではなく、Crevas社の代表者の資格で契約書に署名したのであり、参加人の代理人の資格で署名したのではない。富得盈股份有限公司が Crevas社に係争となっている許諾契約書に署名することを許諾した、又は Crevas社に代理権を許諾した表示行為がある事実を原告は立証、証明していない。即ち、係争となっている提携契約書について、参加人、富得盈股份有限公司は表見代理の責任を負うべきであるとの原告の主張は採用できない。係争商標は確かに商標法第30条第1項第12号で規定される事実があり、登録は認められない。
黙示の同意及び表見代理の事実判定(台湾) 5
黙示の同意及び表見代理の事実判定(台湾)