中国語明細書補完の遅れによる優先権主張への影響(台湾)

中国語明細書補完の遅れによる優先権主張への影響(台湾) 1

本件は、優先権を主張して出願した発明特許で、中国語に翻訳した明細書を提出期限後ではあるが処分が出される前に補完したため、出願権は認められた。しかし、中国語明細書の提出日が出願日と見なされ、その日付が優先権の日付から12ヶ月を過ぎていたため優先権の主張が認められなかった。出願人は不服により訴願を提起したが棄却され、更に上訴したが、台北高等行政法院は、訴えを棄却した。以下は知的財産局の知的財産権電子報に掲載された記事の訳文である。[註:文中の「専利」は、発明特許、実用新案特許及び意匠特許を指す。]

掲載日:2009年3月5日

原告は、2005年6月28日に発明特許を出願し、並びに願書の書誌事項欄に2004年7月2日付アメリカ出願の優先権主張を記載した。本局[知的財産局]は、2005年10月28日までに中国語明細書、図面、出願権証明、優先権証明等の書類を補完するよう原告に書面で指定した。原告は、2005年8月17日に出願権証明及び優先権証明を補完し、申請書を提出した。しかし中国語明細書と図面は補完されず、また指定期間延長を申請することを明記せず、2005年12月12日に中国語明細書と図面を補完した。本局は専利法第25条第3項、第4項、第27条第1項及び専利法施行規則第6条、第11条の規定により、当該出願の出願日を2005年12月12日と認定し、並びに優先権主張はできないとの処分を行った。原告は不服により、訴願を提起したが、経済部は訴願を棄却した。原告は承服せず、台北高等行政法院に行政訴訟を提起した。

原告は、専利法第25条第3項、第4項の立法趣旨について、その規定は、即ち出願人に出願後必要関係書類を追完させ、それにより専利出願手続きをスムースに進行させるものであると主張した。且つ、当該条文は、補完の指定期限の長さを個々に限定しておらず、被告は原出願日を出願日とすべきであると主張した。本局の主張:原告は専利法施行規則第6条の規定に基づき、指定期間の満了前、本局に理由を明記して延長を申請しておらず、当然、専利法第25条第4項前段の、外国語の書類提出の日を出願日とするとの規定は適用されない。従って本局が当該出願の出願日を2005年12月12日とした処分は、当然、根拠があるものである。別に、前記出願日は本件出願の優先権の日(2004年7月2日)から起算して、既に12ヶ月の法定期限を過ぎており、専利法第27条第1項の規定に基づき優先権の主張はできない。本局が、優先権主張を不可とする処分を併せて行うことは根拠となる法に基づくもので、何ら違反するものではない。

台北高等行政法院は審理の後、原告の訴えを棄却した。法院の指摘:専利法第25条第4項に明文に規定されている通り、指定期間内に補完しなかったときは、出願を不受理とする。但し、処分前に補完したときは、補完の日を出願日とする。いわゆる法定期間とは、その性質に基づき通常期間と不変期間に分けられ、専利法上の法定期間が不変期間に属するか否かは、その性質に基づいて決まる。全ての手続きにおいて、履行することを義務とする所定の期間は、性質上、通常期間と認めるべきである。従って、上述した条項の指定期間は「不変期間」ではなく、「通常期間」である。しかしながら、出願人が専利主務官庁の指定する期間内に補完しなかった場合において、専利主務官庁が処分書を作成する前に補完したときは、その出願権は失われていないが、補完の日を出願日とする。本件の原告は、2005年6月28日に被告に発明特許を出願した。被告は既に2005年10月28日までに中国語明細書、図面、出願権証明、優先権証明等の書類を補完しなければならないことを原告に書面で指定した。しかし、原告は指定期間延長の意思表示をせず、期限に遅れた2005年12月12日に中国語明細書と図面を補完した。従って、被告が本件の出願日を2005年12月12日と認定し、当該出願が主張する優先権日(2004年7月2日)から起算して既に12ヶ月の法定期限を過ぎているので、専利法第27条第1項の規定に基づき優先権の主張ができないとしたことは、法に従うもので、当然不当ではない。

注記

専利法第25条
第3項
発明特許の出願は、願書、明細書及び必要な図面が完備した日を出願日とする。

第4項
外国語で書かれた前項の明細書及び必要な図面で出願をした場合において、専利主務官庁の指定期間内に中国語の翻訳文を補完したときは、外国語の書類で出願した日を出願日とする。指定期間内に補完をしなかったときは、出願を不受理とする。ただし、処分前に補完したときは、補完の日を出願日とする。

専利法第27条
第1項
出願人は、同一発明について世界貿易機関の加盟国又は中華民国と相互に優先権を認める国で法により最初の専利出願をし、かつ、最初の専利出願の日から12カ月以内に、中華民国に専利出願をするときは、優先権を主張することができる。

専利法施行規則第6条
専利法及びこの規則による指定期間について、出願人・申請人は、その満了前に理由を明記して専利主務官庁に延長を申請することができる。

専利法施行規則第11条
第1項
専利法第27条第1項に定める12カ月の期間は、外国における最初の出願日の翌日から起算して専利法第25条第3項に定める出願日までとする。