特許法改正草案の全般説明(台湾)

特許法改正草案の全般説明(台湾) 1

台湾の特許法改正案は、2009年12月3日に行政院を通過し、現在立法院で審議中であるが、改正案の成立は2011年になる見込みである。今回の改正草案について、知的財産局は全般的な説明を発表している。以下は前書き部分を除いた説明部分の翻訳である。文章中、特許の語は、発明特許、実用新案特許、意匠特許を含む。

  1. 創作の位置付けを明確にする
    創作を発明、実用新案及び意匠の上位概念とし、創作は「実用新案」または「意匠」に関するものであるとの誤った理解を避け、更に現行法の「創作」の範囲の広狭が一致していない状況を解決するため、発明、実用新案と意匠を並列して創作の種類とした。(改正条文第1条)
  2. 新式様専利を「設計専利」と変更する
    [訳注:日本語の意匠特許にあたる中国語は現行法では「新式様専利」であるが、改正法では「設計専利」となる。日本語の訳は変わらない。]
    産業界及び世界各国の意匠保護に関する一般的概念に合わせ、意匠で保護する対象を明確に示すため、各国の立法例を参考にし、現行の「新式様」の語を「設計」に修正する。(改正条文第2条及び第123条)
  3. 発明、実用新案及び意匠の「実施」の定義を新設する。
    「実施」には「製造、販売の申し出、販売、使用又は上述の目的のために輸入する」等の行為が含まれ、「使用」の上位概念に属すべきものである。現行法において「使用」と「実施」の語法が統一されておらず、解釈上、混乱が生じていることを解決するため、実施の定義を新設し、関連条文の「実施」と「使用」の用語を修正する。(改正条文第22号、第58条、第89条、第124条及び第138条)
  4. 猶予期間の適用範囲を改正し、その事由を新設する。
    発明及び実用新案を出願できる事実発生後6ヶ月の猶予期間の適用範囲を、現行の新規性のみから、新規性及び進歩性(意匠特許では創作性)を含むように改正し、猶予期間の適用範囲を拡大する。猶予期間を主張できる事由として、自らの意思で刊行物に発表した場合を新設する。(改正条文第22条及び第124条)
  5. 特許請求の範囲及び要約を明細書から独立させる。
    国際的な立法の趨勢に合わせ、現行では「特許請求の範囲」及び「要約」が明細書に含まれているが、明細書から独立させるよう改正する。(改正条文第23条及び第25条)
  6. 動植物特許の出願を認める。
    国内のバイオテクノロジー産業の発展を促進するため、動物、植物を発明特許を付与する対象とすることを認める。(改正条文第24条)
  7. 明細書、特許請求の範囲及び図表を外国語で提出する場合の関連規定を新設する。
    外国語の書面で出願する場合、その外国語書面は補正できないことを明確に規定し、それに合わせて誤訳訂正制度の規定を導入する。外国語書面、外国語の種類の限定及び明記すべき事項の規則を取り決める権限を与える。(改正条文第25条、第44条、第69条、第108条、第112条、第127条、第135条、第141条及び第147条)
  8. 権利回復の基準を導入する。
    イノベーションを奨励し、研究開発の成果を保護するため、出願人又は特許権者が故意でなく出願時に優先権を主張しなかった、主張しなかったと見なせる又は期限までに特許年金を納付しなかったために権利が失効する結果となった場合に、その出願を回復するシステムを新設する。また、原特許権消滅後、特許権回復の公告までの間は、善意による実施又は実施に必要な準備を完成したものについて特許権回復の効力は及ばない。(改正条文第29条、第52条、第59条及び第72条)
  9. 出願分割期間の制約を緩和する。
    公告決定後の発明特許分割の制度を採用し、初審における公告決定書の送達から30日以内に出願人が分割出願を提出できる規定を新設する。(改正条文第34条)
  10. 審査中の補正制度を完全にする。
    「補完、補正」の用語を「補正」と改め、出願人が自発的に提出する補正期間の制約を削除する。審査期間が長引くことを避けるため、「最終通知制度」を新設する。特許主務官庁が最終通知を行った後、出願人は特許請求の範囲の補正を、特定の事項についてのみ行うことができる。違反した場合、特許主務官庁は直ちに審査決定できる。(改正条文第43条)
  11. 医薬品又は農薬品に関する特許期間延長規定の改正
    医薬品又は農薬品の特許期間延長申請の規定を緩和し、許可証の取得が公告後2年以上経過していなければ行えなかった現行の時間的制限の規定を削除し、特許期間の満了時に審査決定されていない場合には、その特許期間は既に延長されたと見なすことを新設する。特許権利期間の延長を認める範囲は許可証に記載された有効成分及び用途の範囲に限定する。(改正条文第53条、第54条及び第56条)
  12. 特許権の効力が及ばない事項の新設並びに改正
    商業目的によらない未公開行為、特許権者が第72条第2項の規定に基づき特許権の効力を回復し公告される前に、善意で実施していた又は既に必要な準備を完成していた場合、薬事法で定める薬物の試験検査の登録許可又は国外での薬物販売許可の取得を目的として行われる研究、試験及びその必要行為は、何れも特許権の効力が及ばない事項とする。更に権利消尽の原則について、国際消尽と国内消尽の何れの原則を採用するかは立法政策に属するが、裁判所を通して事実に基づく認定はできないので、今回の改正で国際消尽の原則の採用を明確にする。(改正条文第59条および第60条)
  13. 専用実施権に関連する規定を明確にする
    専用実施権又は通常実施権を許諾できること、専用実施権の定義と専用実施権及び通常実施権の再許諾の規定を明確に定める。(改正条文第64条及び第65条)
  14. 無効審判に関連する規定の改正
    職権に基づく審査の制度を廃止する。無効審判を提起できる事由を改正し、無効審判事由の公告決定時の規定を明確に定める。但し、出願時に開示された範囲を超える分割、変更出願若しくは訂正、又は公告時の特許権の範囲を実質的に拡大若しくは変更する訂正を原因とする場合、当該事由は何れも本質的な事項に属するので、公告決定時における無効審判の事由として規定されていないが、無効審判を請求することができる。その他、手続の規定については、特許請求の範囲の一部分に対して無効審判を請求できる、無効審判の審理は職権に基づき考慮、併合審理、併合審決できる及び無効審判の審決前に取下げられる等の規定を新設し、職権に基づく補正通知の規定を削除する。(改正条文第73条、第75条、第77条及び第80条から第84条まで)
  15. 特許強制実施の規定の改正
    「強制実施」の名称を「強制実施許諾」と修正し、並びに請求事由、要件を含む関連規定を改正する。強制実施許諾を認める場合は、同時に保証金を査定しなければならない。(改正条文第89条から第91条まで)
  16. 公衆衛生に関する規定の新設
    世界貿易機関(WTO)と歩調を合わせ、開発途上国及び後発開発途上国が必要とする特許の医薬品の取得に協力援助し、当該国内の公衆衛生の危機を解決するため、必要とされる医薬品の生産を強制実施許諾する。並びに、本システムを適用する強制実施許諾請求の範囲を明確に規定する。(改正条文第92条及び第93条)
  17. 特許権侵害の関連規定の改正
    権利者の民事救済請求権の性質に基づき、損害賠償請求権及び侵害排除・防止請求権の規定を明確に定める。損害賠償の請求には、権利侵害行為者に主観上、故意又は過失があることを必要とする。損害賠償の合理的な権利金額の計算方式、権利者の損害に対する法律上合理的な補償最低限度額、並びに挙証責任の負担の適切な免除を新設する。更に、特許表示の規定の目的を明確にするため、表示していない場合に損害賠償を請求できないとの規定を削除する。(改正条文第98条から100条まで)
  18. 実用新案特許制度の全体的改正
    同一人が同日に同一の創作について、発明特許と実用新案特許をそれぞれ出願した場合について、発明特許の公告決定前に、二者択一するよう通知する規定を新設する。発明を選択した場合は、その実用新案特許は初めから存在しない。実用新案を選択した場合は、発明の特許は付与しない。実用新案の補正が明らかに出願時の範囲を超えている場合を、特許を付与しない事由として新設する。実用新案特許権者の権利行使において果たさなければならない注意義務を改正し、実用新案特許の補正に方式審査の制度を採用する。但し無効審判案件と併合審理する場合は、実体審査を行い併合審決する。(改正条文第32条、第114条、第119条及び第120条)
  19. 意匠特許制度の全体的改正
    部分意匠、コンピュータの絵記号(アイコン)、グラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)及び組物製品の意匠特許出願を認める。派生意匠制度を新設し、連合意匠制度を廃止する。(改正条文第123条、第129条及び第131条)
  20. 移行規定の新設
    今回の改正の重要点には動植物特許を認めることが含まれ、猶予期間を主張できる事由、発明特許初審における公告決定後に分割出願できる規定、実用新案の単純な補正申請に方式審査を採用する規定が新設されている。更に、無効審判、訂正及び意匠特許に関する規定が改正されている。これらは何れも特許制度の重大な改変である。そこで、旧法から新法への移行期間の規定を新設して適用する。(改正条文第151条から第160条まで)
  21. 本法の施行日は行政院が定めることを明確に規定する。
    今回の改正は全体的な改正であるため、実務作業の手続を整理し、調整し、修正しなければならない。その他、特許制度の大きな改変事項を多数新設しており、準備と進行には十分な時間を要し、更に、改正後の制度運用について各界の十分な周知と受け入れが必要である。そこで、本法の施行日は行政院が定めることを明確に規定する。(改正条文第162条)