商標法改正草案の全般的解説(台湾)

商標法改正草案の全般的解説(台湾) 1

台湾では商標法の改正準備が進められており、商標法の改正草案は2010年3月4日に経済部から行政院に送致され、現在審議中である。改正草案は更に立法院の審議を経て成立する。以下は経済部知的財産局が発表した商標法改正草案の全般的な解説の和訳である。

商標法改正草案の全般的解説

商標法(以下、本法と略す)は、 1930年5月6日に国民政府が制定して公布し、1931年1月1日に施行された。現在まで、11回改正されており現行法は2003年5月28日に公布され、2003年11月28日に施行された。

ここ数年来、商工業は急速に発展し、商業の取引形態は活発で多様化している。本法の幾つかの規定は適用するには不足があり、また、商標権侵害についての規定は、司法実務への適用に疑義を生じさせる。更に、商標の流通には国際性があり、各国の商標出願手続きの統合及び協調についての商標法に関するシンガポール条約(The Singapore Treaty on the Law of Trademarks, STLT)が2006年3月にシンガポールで開催された外交会議で採択され、2009年3月に正式に発効していることに鑑み、国際的な基準と調和させるため、当該条約に関連する規定を本法に組み入れ、商標権の保護を一層拡張する必要がある。そこで2006年から、現行法の関連規定について積極的な検討を開始し、2008年からは商標法改正法案の公聴会を6回及び専門家・学者の諮問委員会議を6回開催した。各界の意見を整理・統合し、「商標法改正草案」を作成した。その改正要点は以下の通りである:

  1. 章節名称の調整
    本法の体系・骨格を明快で明確にするため、章節名称を調整して改正条文と一致させる。
  2. 本法の保護客体を明確に規定
    商標法で保護される客体及び登録出願で取得される権利に基づく客体を明確化する。これには商標権、証明標章権、団体標章権及び団体商標権を含む。(改正条文第1条及び第2条)
  3. 商標使用行為の態様についての規定を明確化
    世界の立法形態を参考にし、商標の各種使用行為を明確に規定する。また、販売の目的に基づき、性質上、デジタル映像・音声、電子媒体、インターネット又はその他のメディア方式で商品又は役務を保持、陳列、販売、輸出又は輸入する場合も商標の使用行為に属することを明確に規定する。(改正条文第5条)
  4. 商標で保護される客体の拡大
    国際的な趨勢に調和させ、商品又は役務の出所を識別するに足る如何なる標識も、商標登録で保護される客体とする。また、登録出願される商標態様は明快、明確、完全、客観的、耐久的で、容易に理解できる方式で表現されなければならないことを明確に規定する。(改正条文第18条及び第19条第3項)
  5. 博覧会出品による優先権の規定を新設
    知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights, TRIPS)第2条の規定に基づき、パリ条約第11条の博覧会出品における優先権についての規定を本法に導入する。(改正条文第21条)
  6. 商標態様の実質的な変更でない場合について明確に規定
    国際的な立法例を参考にし、商標態様の実質的な変更ではない場合、登録出願後に変更できることを明確に規定する。(改正条文第23条但書)
  7. 商標登録出願事項及び登録事項の誤記訂正についての規定を新設
    商標登録出願事項及び登録事項について、商標の同一性又は指定商品若しくは役務の範囲の拡大に影響しないとの条件で、出願人は誤記訂正を請求できることを明確に規定する。(改正条文第25条及び第38条)
  8. 商標共有の関連規定の新設
    産業界のニーズに応えるため、一つの商標を2者以上で共有できることを明確に規定し、それに合わせ、商標共有の申請、移転、分割、減縮、使用許諾及び質権設定等の関連規定を新設する。(改正条文第7条、第28条及び第46条)
  9. 商標の不登録事由の改正
    1. 商標登録の積極的要件及び消極的要件を2つの条文に分けて明確に規定する。(改正条文第29条及び第30条第1項)
    2. 商標が、商品若しくは役務の説明、通用の標識若しくは名称、又はその他の識別性を有さない標識のみで構成される場合は登録できないことを明確に規定する。この他、機能性を有し商標登録できないものは、商品又は包装容器の立体形状に限られず、顔色、音声等その他の非伝統商標も機能性の問題があるのでそれらも併せて改正する。(改正条文第29条第1項第1号、第2号、第3号及び第30条第1項第1号)
    3. パリ条約第6条の3の規定に基づき、世界貿易機関加盟国の国の紋章、旗章及びその他の徽章の標記又は各国が検証を明示するのに用いる政府当局の標記及び国際機関の標識を保護するよう改正する。(改正条文第30条第1項第2号、第5号及び第6号)
    4. 商標の併存登録の同意制度は、現行法に同一の商品又は役務を指定する同一商標を認めないとの明文規定があるが、その他にも明らかに不当な状況がある。このため、商標の併存登録の同意には、明らかに不当な状況に無いことを前提としなければならないことを新設する。(改正条文第30条第1項第10号但書)
    5. 審査効率を上げるため、識別性を有さない部分又は機能性部分を含む商標については、当該部分が商標権の範囲に疑義をもたらすおそれがあるときのみ、出願人は権利不要求を必要とする。権利不要求の申し立てを行わない場合は当該商標を登録できない。(改正条文第29条第3項及び第30条第4項)
  10. 登録料納付期間が遵守されなかった場合の権利回復規定を新設
    シンガポール条約の精神を参考にし、登録料納付期間が遵守されなかった場合の権利回復規定を新設する。また、権利の安定性を確保し、権利回復により混同を生ずる商標が併存する事態を避けるため、権利回復を認めない例外規定を定める。(改正条文第32条第3項)
  11. 登録料の2期分割納付規定の削除
    現行法には登録料の2期分割納付に関する規定があるが、ライフサイクルが比較的短い商品の商標を淘汰するとの立法趣旨が達成されていない。また、商標権者が第2期の登録料の納付が遅れて商標権を喪失するというリスクが増加する。そこで、現行条文第26条の登録料の2期分割納付規定を削除する。
  12. 合理的使用の規定には、指示的な合理的使用も含むよう改正
    商標の合理的使用には記述性合理的使用と指示性合理的使用の2種類がある。後者は、第3者が他人の商標を標示して、自己の商品又は役務の品質、性質、特性、効能等を表示又は顕示することである。例えば、比較広告又はメンテナンス役務、又は商標権者の製品に組み入れられる自己の部品を表示するために使用することは何れも商標としての使用ではなく、商標権の効力による拘束を受けない。このため外国の立法例を参考にし、商品又は役務の「性質」又は「特性」の表示に使用することを含むよう改正する。(改正条文第36条第1項第1号)
  13. 専用使用権許諾と通常使用権許諾に関する規定の新設
    商標法に関するシンガポール条約を参考にし、専用使用権許諾の定義及び再許諾に関する規定を新設する。また、専用使用権の被許諾者の権益を保障するため、専用使用権の被許諾者の権利行使等の規定を新設する。(改正条文第39条)
  14. 審判又は取消の根拠とする商標について、証拠として請求前3年間の使用証拠を提出しなければならないとの規定を新設
    審判又は取消の根拠となる商標の登録が既に3年に達しているものについては、請求人は審判又は取消請求前3年間の当該争議の根拠となる商標の使用証拠又は未使用の正当事由の証拠を提出しなければならない。(改正条文第57条及び第67条)
  15. 商標権侵害に関する規定の改正
    1. 権利侵害行為の態様の明確な規定
      商標権の排他範囲を明確にするため、商標権者が排除できる他人の商標権侵害行為を明確に規定する。(改正条文第68条)
    2. 商標権侵害責任を明白にする主観要件
      商標権侵害排除及び防止においては、行為者に主観上、故意の過失があることを必要としないが、損害賠償においては、行為者に主観上、故意の過失があることを必要とする点を明確に規定する。(改正条文第69条第1項及び第3項)
    3. 「商標権侵害と見なす」規定の改正(改正条文第70条)
      • 商標権侵害と見なされるには、実際に著名商標の識別性又は、信用・名誉を減損するおそれがあることを挙証・証明することのみが必要であることを明確に規定し、著名商標に対する保護が不十分になることを防ぐ。
      • 商標権を侵害するおそれがあることを明らかに知っていながら、商品又は役務に結合していないラベル、吊札、包装容器又は役務に関連する物件を製造、所持、陳列、販売、輸出又は輸入する行為を  商標権の侵害と見なす規定を新設する。
    4. 職権に基づき差押及び権利侵害品の情報を提供する水際取締り措置についての規定を新設
      税関が職権に基づき差押を行う法的根拠を新設する。差押物件の機密資料の保護を損なわないとの条件のもとに、申請人又は差押を受けた者からの申請に基づき、税関は、差押物件の検査を許可して商標権を侵害する物件か否かの確定に協力し、更に権利者に権利侵害品に関する情報を提供する。(改正条文第75条及び第76条)
  16. 証明標章及び団体商標に関する規定の改正
    1. 証明標章の定義を改正し、産地証明標章の定義を新設
      証明標章の定義を改正し、並びに産地証明標章の定義、及びその出願に関する規定を明確に規定する。(改正条文第79条~第83条)
    2. 産地団体商標の定義等に関する規定を新設
      産地団体商標の定義を新設し、並びにその出願及び産地証明標章を準用する規定を明確に定める。(改正条文第87条、第88条及び第90条)
  17. 証明標章権侵害の刑罰規定を新設
    証明標章は商標と比較すると更に高い公益性を有し、証明標章権の侵害は、社会、公衆に損害を与える可能性が商標に比べて大きいことに鑑み、証明標章権侵害に対する刑罰規定を新設する。この外、証明標章権を侵害するおそれがあることを明らかに知りながら、他人の登録した証明標章と同一又は類似する標識のラベル、包装容器又はその他の物品を付して販売する又は販売を意図して製造、所持、陳列する場合は、証明標章権を侵害するのみならず、同時に公益にも危害を及ぼすものであるので、禁止の規定を明文化する。(改正条文第95条)
  18. 明らかに権利を侵害していると知りながら、電子媒体又はインターネットを通して商品を販売する、販売の意図の刑事罰規定を新設
    電子ビジネス及びインターネットの発達という経済発展の情勢に合わせ、電子媒体又はインターネットを通して販売する、販売を意図した行為も商標権の侵害行為に属することを明確に規定する。(改正条文第96条)
  19. 移行規定の新設
    今回の改正で要求される、審判又は取消の根拠となる商標の使用証拠の提出、及び当該証拠が真実の使用に合致していなければならない等の規定は、本法の改正施行後に提出される審判案件又は取消案件に適用される。本法施行前に受理された商標審判又は取消案件には適用されない。(改正条文第104条第2項及び第105条第2項)
  20. 匂い商標に関する出願の規定は、主管官庁が別に施行期日を定めることを明確に規定
    匂い商標は明快、明確、完全、客観的、耐久的で容易に理解できる方式で表現するとの要求に如何に合致させるかを検討する必要がある。本法の発効施行後、主管官庁は、関連する一連の作業プロセス及び対外的に行う発表、指導の企画に更に十分な時間を必要とするため、その施行日は別に定めると規定する。(改正条文第106条第2項)