著名商標の希釈化を争点とする行政訴訟の判決の要旨が、希釈化の判断原則の実例として知的財産局の電子報に掲載された。原告は係争商標の商標権者で、無効審判において登録取消し処分とされ、訴願を提起したが棄却された。原告は不服として、知的財産裁判所に行政訴訟を提起した。知的財産裁判所は、無効審判請求人の商標が著名であると認定し、係争商標と指定商品/役務は異なると認めたが、商標の希釈化を理由として原告の訴えを棄却した。以下は電子報に掲載された判決要旨の訳文である。なお、理解を助けるため要旨には入っていない、判決文の文章を一部加えた。
電子報掲載日:2010年5月5日
知的財産裁判所 行政判決 (97﹑行商訴﹑35)
判決書の日付:2008年12月11日

原告:係争商標の商標権者(被無効審判請求人)
被告:経済部知的財産局
参加人:無効審判請求人 係争商標登録第1153577号の商標態様は、外国文字「Hielife」からのみ構成されている。無効審判請求の根拠となる登録商標は、外国文字「HI-LIFE」、「Hi-Life」のみ又はハート図形の中にこれらの文字が配置されている、又は中国語「萊爾富」と上下に配列されている、又は長方形図形が加えられ構成されているものである。両者には一見して分る外国文字「Hielife」と「HI-LIFE」、(又は「Hi-Life」)があり、僅かに「e」と「-」の違いがあるだけで、人に与える全体的な印象は「Hi-Life」であり、使われている字体も似ており読音も近い。全体的な態様を一見した印象は互いに似ており、普通程度の知識・経験を有する消費者が購買時に払う普通程度の注意では2商標が同一又は類似の商品/役務に表示された場合、2者の商品は出所を同一とする又は異なる出所間には関連があると誤認混同させる可能性があり、類似を構成する商標に属する。
参加人は社会大衆に小売りの役務を提供するコンビニエンスストアの業者で、1989年の設立から今日まで20年程の歴史がある。街なかで「萊爾富HI-LIFE」コンビニエンスストアはよく見られ、消費者に深い印象を与えている。参加人の商標は1989年から台湾において登録第179328号、第169026号等の商標権を次々と取得している他、多数の国で登録を取得しており、更に有線、無線テレビ局等のマスメディア及び雑誌等の印刷メディアで広範な宣伝・販売促進を行うため巨額の広告費用を投入している。これは原処分文書に添付されている参加人が提出した登録証、テレビ広告放送委託リスト、雑誌広告委託リスト等の証拠資料のコピーで調べることができる。これらにより係争商標の登録出願日の2004年9月24日以前に、無効審判請求の根拠となる商標が関係する事業によって既に広まっており、又は消費者に広く認知されており、著名商標と認めるに足りる。
経済部が2007年11月9日に発布した「商標法第23条第1項第12号著名商標保護審査基準」の規定では、著名商標の識別性又は信用の減損のおそれの有無、更にその他の要素の判断は、例えば、係争商標の権利者が自己の商標と著名商標との連想を人に生じさせようとする意図があるか否かにある。両当事者の商品/役務の市場区分は異なっており、且つ営業利益の衝突は明らかではなく、消費者が同一又は関連する出所からのものであると間違える可能性はないが、係争商標の登録を認めた場合、無効審判請求の根拠となる商標の識別性又は信用に損害を与える可能性があり、商標の稀釈化から保護するために解決が必要とされる問題である。 無効審判請求の根拠となる商標は既に参加人が長期・広範に使用しており、その識別性と信用は国内の大部分の地域で、極めて多数の消費者に広く認知されている。
係争商標の指定商品は、洗濯機、脱水機、食器洗浄機、洗米機、野菜洗浄機、家庭用超音波洗浄機、家庭用ブレンダー、家庭用フードプロセッサ等の商品である。また、無効審判請求の根拠となる商標は、コンビニエンスストア、スーパーマーケットの役務において著名である。両者の市場は区別されるもので、利益の衝突はあまり明確ではなく、類似には属しておらず且つ競争関係の商品/役務もない。但し、両当事者の商標態様が類似を構成していることを斟酌し、且つ無効審判請求の根拠となる商標のコンビニエンスストア役務における著名程度が、既に一般公衆に広く認知されている等の関係する要素から判断すると、原告がその後に類似の外国文字を登録第1153577号の商標態様である「Hielife」として登録出願したことは、無効審判請求の根拠となる商標全てと出所である特定の事業との結びつきの強さを減少させ商標の識別性を稀釈化する可能性がある。
一般社会通念及び市場取引の状況から、一般消費者に同一の又は同一ではないが関連がある出所で、類似関係又は密接な関連がある商品だと簡単に誤認させる。被告が係争商標は商標法第23条第1項第12号後段の規定に違反するとして、無効審判において係争商標の登録を取消した処分は法に基づくものであり、不当ではない。
(以上) 商標法第23条第1項第12号 次に掲げる事由の一つに該当する商標は、登録をすることができない。 12、他人の著名な商標又は標章と同一又は類似であり、関係公衆に誤認混同を生じさせるおそれがあるもの、又は著名な商標又は標章の識別性又は信用・名誉を損ずるおそれがあるもの。ただし、当該商標又は標章の所有者の同意を得て登録出願をしたものは、この限りでない。

