2010年5月21日に司法院が2010年度の知的財産法律座談会を開催した。以下は、同日付で決定された商標審査実務の重要な変更点についてまとめたものである。
開催日:2010年5月21日
司法院は2010年5月21日、2010年度「知的財産法律座談会」を知的財産裁判所で開催した。座談会の議題及び討論の結論に基づき、知的財産局は即日、実務方式の変更を決定した。以下の3つの規定は注意を要する。
- 商標使用の挙証及び未使用商品の登録取消の問題
問題
10の商品を指定したある登録商標に、甲が当該商標は登録後、満3年間、正当な理由が無く使用していない(どの商品が不使用であるかは明示せず)との理由で、知的財産局に当該商標の登録取消を請求した。商標権者は審査において、指定商品中の1種類の商品について使用証拠を提出した。この様な場合、使用の証明責任を果たしているか否か。
知的財産局の現行方式
- ― 当該商標について、1つ以上の指定商品の使用が提出されている場合は、取消請求人の主張には理由がないとして、請求不成立の処分としなければならない。
- ― 上述は、経済部訴願会、台北高等裁判所、知的財産裁判所がこれまで一貫して維持してきた見解である。
座談会の検討結果
- ― 商標法第57条第4項では、取消の事由が登録商標の指定商品又は役務の一部分のみにあるときは、当該部分の商品又は役務についてその登録を取り消すことができる、と規定している。
- ― 同条第1項第2号に規定される「使用していない」登録商標とは、指定する各種商品又は役務に商標が使用されていないことを指す。商標権者が指定商品の使用証拠を僅か1種類のみ提出した場合、使用証明の責任を果たしたとは言い難い。
- ― 結論では、知的財産局は商標権者に指定商品全部の使用証拠を提出させなければならない。使用証拠が未提出の商品は、商標法第57条第4項の規定に基づき当該商品の商標登録を取り消し、それ以外は請求不成立の処分とする。
各機関の今後の実務方式
- ― 現在係属中の行政訴訟の取消案件については、例えば商標の指定商品がa 、b 、c の3商品で、証拠が提出されたa 、b 商品のみが使用を認められ、知的財産局が[取り消し請求を]不成立処分としている場合、知的財産裁判所は釈明権を行使し、商標権者にc商品の使用証拠を提出するよう指示する。
- 提出されない場合は、原処分及び原決定を取り消す。提出された場合は、直接審理する又は原処分及び原決定を取り消して知的財産局に差し戻し、再度審査する。
- ― 現在、未処分の案件については、知的財産法律座談会の決議に基づき処理し、商標権者に指定商品の未提出の商品/役務の使用証拠を提出するよう再通知する。
- 提出されない場合は、商標法第57条第4項の規定に基づき、直ちに登録の部分的取り消し処分とする。
- ― この他、EU関連の判例の収集及び裁判官との積極的な意見交換、研究討論を行い、関係する認定原則を整理した後、公告し又は別に期日を定めて説明会を開催し、判例に基づいてどの様に挙証するか及び概括的商品と具体的商品間の関係を詳細に説明する。
- ― 商標権者の挙証責任:
- 指定商品/役務の名称で判断する。
- 受理できる概括的商品名称を指定している場合は、挙証の状況を見て、含まれる可能性がある具体的商品の範囲を定める。
- ― 知的財産局の証拠採用の原則
- 更に細分化することはできない具体的名称、例えば口紅、ファンデーション、を一つ一つ挙証しなければならない。
- ある項目商品の総称、例えば化粧品、は挙証について原則上寛大に取扱い、含まれる具体的商品、例えばアイシャドー、口紅等、の使用証拠の提出を必要とするだけで、化粧品の実際使用を認めることができる。
- 総称と具体的名称間においては原則上寛大に認定し、例えば人体用清潔用品はシャンプー又は洗顔乳液の一つの使用証拠を提出すれば実際使用を認めることができる。
- 誤認混同のおそれの判断
問題
商標が類似するか否かの審査は、既に「誤認混同のおそれ」に達している程度で判断しなければならない。「誤認混同のおそれ」の審査基準では、誤認混同のおそれを判断する参考要素として8つの要素を列挙している:
- 商標識別性の強弱
- 商標が類似しているか否か及び類似の程度
- 商品/役務が類似しているか否か及び類似の程度
- 先行権利者の多角経営の状況
- 誤認混同の実際例
- 関係する消費者の各商標に対する知悉の程度
- 係争商標の出願人は善意か否か
- その他の誤認混同の要素
※商標類似及び商品類似の要素以外に、その他の関連要素がある場合は、できるだけ斟酌考量し、より正確に誤認混同のおそれの有無を掌握し認定しなければならない。
→個別案件の両当事者は、誤認混同のおそれの有無を判断するため、更に市場取引の実際状況と合致し得るよう、十分に挙証し、関係証拠資料を提出しなければならない。
知的財産局の今後の実務方式
- ― 商標権者が答弁する及び請求人が意見を陳述する書簡において、誤認混同のおそれの審査基準に列記されている参考要素の各項に基づき、客観的に事例を区別し、更に詳述及び挙証するよう双方に要請する。
- 冒認登録商標のその他の関係についての認定
問題
商標法第23条第1項第14号の規定:「同一又は類似の商品又は役務について先使用である他人の商標と同一又は類似であり、且つ、出願人が当該他人との契約、地縁、業務上の取引又はその他の関係により、当該他人の商標の存在を知っていたもの。」において、その中の「その他の関係」は、契約、地縁、業務上の取引に類似する関係のみに限定されるか、又は広範にその他の如何なる関係(例えば、同業)をも意味するか。
知的財産局の現行方式
- ― 立法目的は、他人の先行商標の剽窃を禁止することに他ならない。従って、他人の商標の存在を知悉する原因は、決して契約、地縁、業務上の取引関係があることだけに限られるものではない。
- ― その他の実際上の関係により、既に先に存在する他人の商標を知っており、その商標の使用主体が同業関係である場合は、経験法則に基づき商標出願人が他人の商標の存在を知っていたと認定するに足り、前掲条文を適用する。(最高行政裁判所91年判事第2221号判決主旨、参照)
座談会の検討結果
第23条第1項第14号において、契約、地縁、業務上の取引又はその他の関係は例示された規定であり、先に列挙される「契約、地縁、業務上の取引」の状況を、更に「その他の関係」で概括している。従って、その他の関係とは、契約、地縁、業務上の取引等の状況と類似するものが妥当とすべきであり、広範に如何なる事実関係をも含むものではない。(98判1039・98行商訴243)。
知的財産局の今後の実務方式
- ― 商標権者が係争となっている先使用商標を知っていた具体的な事柄、証拠を十分に追完するよう請求人に要請し、類似するその他の関係(例えば、同業でかつ同時に展示会に出品した)があるか認定する。
- ― 図様の剽窃度が高く、先使用商標が既に相当の知名度を有していることを挙証できる場合は、商標権者が知らなかったとして責任回避することは困難であるが、併せてその他の客観的要素を相互に確認して総合的に判断する。
- ― 商標の態様に独創性、著名性があり、同業関係であるとの主張については、更に、例えば同時に展示会に出品したというようなその他の証拠を追加しなければならない。

