以下は、台湾知的財産局ウェブサイトの商標参考判例の頁に2013年6月4日付で掲載された判例を要約したものです。
争議の対象:販売を意図し、国外から模倣商品を輸入することは、商標法のどの項の罪に当たるか。
係争商品/役務:オーディオスピーカー商品
係争商標:「APPLE Logo」商標(商標登録第1089047号)
関係条文:商標法第97条
第97条(侵害品の販売等の処罰)
前2条に該当する他人の商品であることを明らかに知っていたにもかかわらず、これを販売し、又は販売を意図して所有し陳列し輸出し又は輸入した者は、1年以下の有期刑若しくは拘留又は新台湾ドル5万元以下の罰金に処せられ、又はこれを併科される。電子媒体又はインターネットを通じてなす者もこれと同じとする。
被告:洪連生
判決要旨
- 最高裁判所が1936年、1978年、1979年、1980年に出した4件の判例では、販売罪は仕入れた後、販売することを構成要件としていない。仕入れ及び販売の行為の2者が揃う必要はなく、一方があれば成立する。但し、最高裁判所の2012年に行われた刑事法廷会議では当該判例は援用しないことが決議された。このため、刑罰に関する法律で規定する販売罪では、営利を意図して仕入れ、未だ販売していない場合は、全て販売未遂罪とみなす。2011年6月29日に改正が公布された商標法第96条、第97条には販売未遂に対して処罰規定がないが、販売を意図して所持していたことに基づいて罪を問うことができる(最高裁判所2012年11月6日刑事法廷会議決議)。この法理に基づき、営利販売を意図して輸入したが未だ所持していない場合は、当然販売を意図した輸入罪と認定すべきである。
- 被告の行為は、2012年7月1日に施行された商標法第97条に抵触し、商標権者の同意を得ずに類似商品に登録商標と同一の商標を付した商品であることを明らかに知りながら、販売を意図し輸入した罪に当たる。被告は、事情を知らない運輸業者及び通関業者を利用し、本件の模倣商標商品の運送、輸入及び通関書類の提出を代理させた犯行で、間接正犯である。
判決抜粋
- 本件事実
洪連生は以前の詐欺事件で、台湾桃園地方裁判所から2011年に出された判決により3ヶ月の有期懲役が確定し、同年それに代わる社会奉仕労働に服した。一体どこに悔悛があるのか、商標登録第1089047号「APPLE Logo」の商標態様は、既にアメリカのアップルコンピュータがコンピュータ、テープレコーダ、ビデオレコーダー、ラジオ、レーザープリンタ、DVDプレーヤー、CDプレーヤー、レーザー・ターンテーブル、CDレコーダー・ラジオ、テレビ、ポータブルテレビ及び言語学習規等の音声、映像関係の商品を指定して2004年3月16日に経済部知的財産局に出願して商標専用権を取得し、権利期間は2004年3月16日から2014年3月15日で、現在権利期間内にあること、商標権者の同意又は使用許諾を得ずに、関連消費者に誤認混同を引き起こすおそれがある類似の商品又は役務に登録商標と同一の商標を使用することはできないこと、販売を意図して前述の商標権者の商標を侵害する商品を輸入することはできないことを明らかに知っていた。洪連生は模倣商標の商品の営利販売を意図する犯意により、2011年6月に桃園市の自称「李志宏」の紹介で、中国の自称「韓顔超」に前述登録商標を模倣したオーディオスピーカー108台を発注した後、事情を知らない仙施實業有限公司(以下、仙施公司という)へ2011年7月25日に上述模倣製品をキールン港から我が国に輸入するよう委任した。更に同公司から委託された事情を知らない通関業者の職員が財政部キールン関税局で輸入の通関申請を行って台湾に輸入した。次いで、キールン関税局の税関職員が検査し、上述模倣品を押収した。仙施公司の担当者は洪連生から上述模倣製品を輸入するよう委託された運送契約、パッキングリスト等の資料を提出し、上述の情況が判明した。
- 本件の争点
販売を意図して国外から模倣商品を輸入することは、商標法のどの項目の罪に抵触するか。
- 判決理由
- 被告の行為の後、2011年6月29日に商標法の改正が公布され、2012年7月1に施行された。
改正前の商標法第82条の規定:前条に該当する商品であることを明らかに知っていたにもかかわらず、これを販売し販売のために陳列し輸出し又は輸入した者は、1年以下の有期刑若しくは拘留又は新台湾ドル5万元以下の罰金に処せられ、又はこれを併科される。
条文番号が移動した改正後の商標法第97条の規定:前2条に該当する他人の商品であることを明らかに知っていたにもかかわらず、これを販売し、又は販売を意図して所有し陳列し輸出し又は輸入した者は、1年以下の有期刑若しくは拘留又は新台湾ドル5万元以下の罰金に処せられ、又はこれを併科される。電子媒体又はインターネットを通じてなす者もこれと同じとする。
改正後の条文では販売を意図して所有することが処罰の対象に追加され、更に電子媒体又はインターネットを通して権利侵害商品を販売又は販売を意図して所有、陳列、輸出又は輸入する行為を処罰の対象として列挙している。しかしながら法定刑については変更がない。また、改正前と後の商標法はいずれも販売未遂に対して処罰規定を設けていない。商標法は改正されたが、要件の内容の相違又は処罰の軽重に関わる改正はなく、新旧法の比較の問題はないので、裁判時の法律を適用すべきである。即ち、現在有効な商標法に基づき処罰すべきである。公訴人は、新旧商標法は単に条文番号の変動のみであり、被告に有利、不利な状況はなく、改正前、即ち行為時の商標法を適用すべきであるとしたが、これは誤りであることを先ず言明する。 - 最高裁判所の過去の判例では販売罪は仕入れと販売のいずれかがあれば成立するとされていたが、2011年の刑事法廷会議ではこの判例は援用しないことが決議された。このため刑罰に関する法律で規定する販売罪は、営利を意図して仕入れ、未だ販売していない場合には、いずれも販売未遂罪とみなす。改正商標法第96条、第97条には販売未遂に対して処罰規定がないが、販売を意図して所有していたことに基づいて罪を問うことができる。この法理に基づき、営利販売を意図して輸入したが未だ所有していない場合は、当然販売を意図して輸入した罪を認定すべきである。
- 被告、洪連生の行為は、現行商標法第97条の商標権者の同意を得ずに類似商品に登録商標と同一の商標を付した商品であることを明らかに知りながら、販売を意図して輸入した罪である。被告は事情を知らない運輸業者及び通関業者を利用しており、間接正犯である。
- 現行商標法第98条の規定「商標権、証明標章権又は団体商標権を侵害した物品又は文書については、犯罪を犯した者の所有物であると否とを問わず、これを没収する。」は没収義務主義を採用しており、この条文では「犯罪を犯した者の所有物であるか否かを問わず、これを没収する」と明確に規定している。従って、没収義務は絶対的なものであるが、「既に行政機関が没収の処分を行っている場合は、再度没収を命ずることはできない。」、「公権力が差し押さえたものと同一の物品は、行政の法令の規定に基づき没収しなければならず、同時に刑事法の規定でも没収しなければならない場合、即ち、行政処分による没収と刑罰の付加刑である没収とが競合する事態が起こった場合、没収を宣告できるか否かは、先ず、当該差押物品が捜査され、既に行政処分により没収されているか否かを調べて決定する。本件の被告の行為は、商標法第97条の商品を輸入した罪に抵触しており、同法第98条の規定に基づき、犯人であるか否かを問わず没収を宣告しなければならない。本件商品は、既にキールン関税局の処分書により没収処分となっている。上述の説明に基づき、本件の商標を模倣した商品は既に行政機関が没収処分を行っているので、当裁判所は没収の宣告はしない。
- 被告の行為の後、2011年6月29日に商標法の改正が公布され、2012年7月1に施行された。
- 判決結果
被告は商標権者の同意を得ていないことを明らかに知りながら、類似商品に登録商標と同一の商標を付した商品を販売することを意図して輸入した。懲役3ヶ月若しくは一日を新台湾ドル一千元に換算した罰金に処する。
