法人の特定部分の名称の認定(台湾)

法人の特定部分の名称の認定(台湾) 1

台湾の商標法第23条第1項第16号では、著名な法人、商店又はその他の団体の名称を含み、関係する公衆に誤認混同を生じさせるおそれがある商標は登録できないと規定している。

知的財産局ウェブサイト上の、本年10月5日付電子報の法律に関する頁に、当該条文に基づく異議申立において提起された行政訴訟に対し、知的財産裁判所が下した判決の要旨が掲載された。

以下は事件の概略及び電子報の訳文である。

原告:全久榮企業股份有限公司
被告:経済部知的財産局
参加人:臺灣菸酒股份有限公司
根拠条文:商標法第23条第1項第16号

次に掲げる事由の一つに該当する商標は、登録をすることができない。
著名な法人、商店又はその他の団体の名称を含み、関係する公衆に誤認混同を生じさせるおそれがあるもの。

経緯:
原告は、係争商標「紅瓦厝米酒頭台湾 RedH.TAIWAN MICHIU TOU(彩色)」を第33類の「酒(ビールを除く)」を指定して出願し、登録を取得した。
参加人は、社名中の業種及び組織の形態を説明する文字(菸酒:たばこ・酒及び股份有限公司)以外の部分が「特定部分の名称」(他者と区別するための顕著で主要な部分の名称)であるとし、「台湾」は地理名称であるが、参加人の法人名称における特定部分の名称であると主張し、上述根拠条文に基づき異議申立を行った。
知的財産局は、異議不成立とし登録の維持を決定した。
参加人は不服として訴願を提起した。経済部は異議不成立処分を取消し、被告に適法の処分を行うよう命ずる決定を行った。

知的財産局は再度審理し、原告の登録取消の処分を決定した。
原告は不服として訴願を提起したが棄却されたため、知的財産裁判所に行政訴訟を提起した。
知的財産裁判所は職権に基づき、参加人に訴訟に参加するよう命じた。

知的財産裁判所は訴願決定及び原処分を取消す判決を下した。

電子報掲載日:2012年10月5日

法人の特定部分の名称の認定(台湾) 2
係争商標:

「著名な法人、商店或いはその他の団体の名称を含み、関係する公衆に誤認混同を生じさせるおそれがあるもの」が登録できないことは、商標法第23条第1項第16号に明確に規定されている。また、商標法における「著名」とは、関連する事業者又は消費者全体に広く認知されていることを認定できる客観的な証拠があることを指す。第23条第1項第16号における法人、商店又はその他の団体の名称が、その特定部分の名称を指すことは、商標法施行規則第16条、第17条に明文の規定がある。本件の参加人は係争商標が商標法第23条第1項第16号に違反するとして異議を申し立てた。被告は審理し、係争商標は前述の規定に違反していると認めた。本件の争点は次の通りである:係争商標は商標法第23条第1項第16号の規定により登録を取得できない事実があるか否か。以下は行政訴訟判決の要旨である:

  1. 参加人の前身は「臺灣省菸酒公賣局」[台湾省たばこ・酒専売局]であって、国内のたばこ、酒の専売業務を担当していた。2002年7月1日に「臺灣菸酒股份有限公司」に改められ、その経営には、たばこ、酒の製造、販売等の業務が含まれ、参加人が販売するたばこ、酒に関連する商品の種類は極めて多く、その中には台湾ビール及び各種長寿たばこ[訳注:長寿はブランド名]商品があり、更に長年に亘ってモンド・セレクション(Monde Selection)の金賞又は最高金賞等の栄誉を授与されている。また、林口、台中等9個所に酒造工場、竹南、台北等4個所にビール工場があり、その営業所及び小売店は台湾各地にある。更に最近5年間の年間売上高は平均約600億元(約1,620億円)にのぼる。売上高統計表、関連製品のラベル、会社登記資料及びメディアで伝えられた報道資料等の参加人が提出した全ての証拠資料のコピーから参加人は係争商標が登録出願された2009年5月20日以前に国内の関連事業者又は消費者全体に知られており、著名な法人であると認められる。
  2. いわゆる「特定部分の名称」とは、法人、商店又はその他の団体成立時にその名称として採用し、他の法人、商店又はその他の団体と区別する、顕著で主要な部分の名称である。法人、商店又はその他の団体の名称全体で、業種又は組織の形態を表す文字は、特性を表示して他者と区別するものではなく特定部分の名称ではない。但し、業種又は組織の形態以外の文字が他者と区別する特性を表すのに不足があれば、これも特定部分の名称とならず、その場合はその名称全体を観察し、更に法人、商店又はその他の団体が対外的に用いている顕著で主要な部分の表示、及び関連する事業者又は消費者がその他の法人、商店又はその他の団体の名称と区別するのに用いている名称を考慮し、特定部分の名称としなければならない。単に名称全体の文字から、事業の種類又は組織の形態の表示を除いた部分を特定部分の名称であると認めても、不正競争を防止し、誤認を防ぎ且つ他人の商号権が侵害を受けることの防止を趣旨とする前掲の法律条文に合致しないのであれば当然、法に適っていない。また、「会社名称は、他の会社名称と同一であってはならない。2つの会社名称中に、異なる業種又は区別に役立つ文字を表示している場合は、同一でないとみなす。」ことは会社法第18条第1項に明文の規定があり、業種は会社名称が同一であるか否かを判断し、その他の会社と区別する重要な判断根拠として用いられることは明らかである。
  3. 参加人の名称は「臺灣菸酒股份有限公司」であり、そのうち「臺灣」(台湾)は地域名、「菸酒」(たばこ・酒)は事業の種類、「股份有限公司」は組織の形態を説明する文字である。上述各部分は単独では何れも参加人の顕著で主要な部分として他の法人と区別するには不足がある。被告と参加人は参加人名称から事業の種類、組織の形態を表示する「たばこ、酒」、「股份有限公司」等の文字を除いた「臺灣」が参加人名称の特定部分である等主張した。しかしながら過去に於いて、我が国の多くの国営事業が何れも「臺灣(台灣)」を結合した事業の種類及び組織の形態を会社名称としている。例えば、台灣糖業股份有限公司、台灣鹽業實業股份有限公司、臺灣土地銀行股份有限公司、台灣電力股份有限公司、台灣自來水股份有限公司、台灣肥料股份有限公司、臺灣銀行股份有限公司等がある。また、我が国の多くの有名企業が業種及び組織の形態に「臺灣(台灣)」を結合して会社名称としている。例えば、台灣大哥大股份有限公司、台灣高速鐵路股份有限公司、臺灣塑膠工業股份有限公司、臺灣水泥股份有限公司等がある。「事業の種類」及び「組織の形態」を除くことを厳格に適用する方式で特定部分の名称を判断すれば、上述会社の特定部分の名称は何れも「臺灣(台灣)」である。上述の多数の企業を如何に区別するかについて、対外的に主要な顕著性を表すのは名称全体の文字であることは明らかであり、事業の種類又は組織の形態を表示する部分を除いたものが特定部分の名称であると認定するのは適法ではない。
  4. 参加人が提出した証拠資料から、関連するメディアは何れも「台灣菸酒公司」又は「台灣菸酒」の名称を使用して消費者にその報道の対象が参加人であると認識させており、関連する消費者にとって「台灣菸酒」の名称が参加人を表しているのは明らかである。原告が提出した参加人会社のウェブサイトの資料から、参加人は説明又は目立つ表示に「台灣菸酒公司」又は「台灣菸酒」を会社名称として使用していることは明らかである。更に参加人は、販売する商品に「TTL 臺灣菸酒」を商標として使用して商品の出所を表すものとしており、参加人の会社名称の特定部分は「臺灣(台灣)」のみでなく「臺灣菸酒(台灣菸酒)」の4文字であることは明らかである。
  5. 係争商標の主要部は上から下の順に、赤い枠に中国語文字「紅瓦厝」、外国語文字「RedH.」及び比較的大きい字体の中国語文字「米酒頭」、及び「米酒頭」の右に「紅瓦厝」と同程度の大きさで黒文字の中国語文字、外国語文字「台灣(簡体字)」、「TAIWAN MICHIU TOU」を組合せて置いた構成である。その中で、デザイン化されていない「米酒頭」、「台灣」、「TAIWAN MICHIU TOU」は原告が権利不要求の声明を行っている。当然、係争商標は参加人名称の特定部分の名称と同一の個所があるとは言い難く、係争商標に商標法第23条第1項第16号は適用されない。
法人の特定部分の名称の認定(台湾) 3
法人の特定部分の名称の認定(台湾)