知的財産法律座談会での討論結果の要略

知的財産法律座談会での討論結果の要略 2

台湾で商標を有する並行輸入品が商標権の侵害を構成するか否かについて、かつて様々な論争が繰り返されたが、1993年、台湾商標主務官庁が商標法に初めて「消尽原則」(the principle of exhaustion)又は「ファーストセールドクトリン」(First Sales Doctrine)に関する規定を採用し、2011年の法改正で更に国際消尽原則を明文化して、現行商標法第36条第2項となってからは、並行輸入品についてこれといった争議は起こっていない。一般に、並行輸入業者は商品の販売促進を目的として新聞や雑誌、インターネット等で商標を広告に用いているが、近年、このような行為が商標権の侵害を構成するかどうかが議題に挙げられている。知的財産裁判所の判決を見ると、広告をする行為は「真正品自体」の並行輸入にはあたらず、権利消尽原則の適用を主張することができないため、商標権を侵害する行為に該当するとの認定(104年度民著訴字第33号民事中間判決)がある一方で、商標権者が製造した商品を再度販売する際に使用する商標については、あくまでも商品を販売するための手法にすぎず、商品又は役務の出所を示す商標の機能を損なうこともないため、商標権の侵害を構成しないとも認定されている(102年度民商訴字第49号民事判決)。

台湾司法院は前記議題についての統一見解をまとめるため、2017年5月8,9日に「知的財産権法律座談会」を開いて出席者とともに討論をした。興味深いことに、この議題に対する2つの見解では、国際消尽原則、又は指名的フェア・ユース(nominative fair use)の概念どちらの観点からも、前出の商標の使用行為は合法と認められる傾向にあることである。座談会での結論としては、並行輸入業者が広告を掲載、或いはカタログを発行するとき、その行為が、消費者に正確、真実である商品情報を提供するために必要な使用行為であって、商業取引の慣習に符合する誠実かつ信用できる方法であり、さらに、関連する消費者に混同誤認が生じるおそれもない場合、商標法第36条第1項第1号に示された指名的フェア・ユースの概念に該当し、商標権の効力による拘束を受けない。

以下は司法院のウェブサイトに掲載された座談会の結果の和訳である

知的財産法律座談会での討論結果の要略
司法院106年度「知的財産法律座談会」、
「民事訴訟類関連議題」提議及び討論結果 第2号
日時:2017年05月08日
座談機関:司法院
資料提供:司法院
法律議題:販売業者/小売業者が、商標権者の同意を得て市場で流通した商標付き真正品を転売又は販促するときに、真正品本体とは別に、商標権者の商標を用いた広告を掲載する、或いはカタログを発行して販売を促進した場合、商標権の侵害にあたるか否か

見解
甲説:

  1. 商標法第68条には、商標権者が、商品又は役務の出所を示す商標の機能を損なうことがなく、かつ関連する消費者に混同誤認を生じさせるおそれをなくすことを主な目的として、他人による使用を排除できる範囲が規定されているが、第36条第2項本文の権利消耗原則が適用されるべきであるため、第36条第2項に拠り、登録商標を付した商品が商標権者又はその同意を得た者により国内外の市場で取引きされ流通する場合、商標権者は、市場で継続して流通する該商品について商標権を主張することができない。ただし例外的に、商品に変質が生じ、客観的に見て、それが関連する消費者が商品を購入する意思や商品の価格に影響するに足り、その変質した部分が関連する消費者に混同誤認を生じさせるおそれがあると認められる場合、変質後の商品と本来の商品とにはすでに実質的な違いが生じているため、権利消尽原則は適用されない。
  2. 権利消尽原則、又はファーストセールドクトリンとは、商標権者や被使用許諾者が、市場で商標を付した商品を最初に販売又は流通させたときにすでに報酬を受けたことを意味するため、製造業者、小売業者から関連する消費者に至るまでの、商標を付した商品の垂直的流通過程において商標の黙示の使用許諾がすでに存在し、そしてその商標権は商品が最初に販売されたときにすでに消尽しているので、商標権者は、その後継続して市場で流通する該商品に対してもはや商標権を主張することができず、商品を購入した者はその商品を自由に使用又は処分することができる。また、台湾商標法は国際消尽原則を採用しているので、商標権者は、国内外を問わず、同意を得て市場に流通した商品に対してはもはや権利を主張することができず、真正品の並行輸入を禁止することができない。
  3. 例えば、甲が、商標Aが付された商品をインターネット経由で「転売」するとき、該A商標権がすでに消尽した(最初の販売でない)真正品について、その写真や画像ファイルをネットショッピングなどのサイトにアップし、真正品の画像付近にA商標を表示、さらにはA商標の字句を拡大して表示したとする。このとき、商標法第5条で定義する商標の使用に該当するが、甲の販売物品が、A商標の権利者により製造され、同意を得て市場に流通した真正品である場合、甲がA商標を使用する行為は、商品や役務の出所を表示する商標の機能を損なうものでなく、関連する消費者に混同誤認を生じさせるおそれもない。よって、被上訴人(原文ママ)が係争商品の周囲に係争商標を適切に表示して販売をする場合、権利消尽原則が適用されて、商標法第68条の規範に違反せず、商標権の直接侵害を構成しない。

乙説:

  1. 商標法第36条第2項が規定する「権利消尽」は、商標が付された真正品に対して権利を主張できないことを指す。該真正品の所持、陳列、販売、輸出入以外に、該真正品の販売促進のために、商品に付された商標を単独で商業的な書類や広告に使用する行為が、商標法第36条第2項の「権利消尽」の権利を主張できない範囲にあたるか否かについては、現在、司法の実務でも見解が分かれているが、商標法第36条には商標権の制限に関する規定が2項あり、第2項の「権利消尽」原則以外に、第1項の「指名的フェア・ユース」行為も含まれている。「指名的フェア・ユース」とは、他人の商標で該他人の商品又は役務を示すことを指し、このような他人の商標で他人の商品又は役務を示す使用方式は、出所を正確に示すという商標本来の機能を損なうことがなく、その使用情況が下記判断要素の基準を満たすものであるならば、商標法第36条第1項第1号の規定により、他人の商標権の効力による拘束を受けない。
  1. 商業取引の慣習に符合する誠実かつ信用できる方法
    行為者において主観的に不当に競争する又は他人の商標にフリー
    ライドする意図がなく、客観的に使用の事実が誠実かつ信用できる方法に符合し、不正確又は非真実の表示がない、或いは他人の商標の商業上の信用に対する意図的な当てこすりやフリーライドにより公正な競争秩序に影響を与えるといった事情がないとき。
  2. 他人の商標を使用することが必要な行為であるとき行為者が自己の商品又は役務の目的、用途又は内容を説明するために、他人の商標を使用する必要があるとき。例えば、自己の商品の付属品又は部品の出所が他人の商標商品であることを表現するときに、他人の商標を使って説明しないと、消費者において認識が困難である場合。ただし、工商業界の誠実な慣例的使用方法に合致しなければならない。
  3. 使用することにより、関連する消費者において商品又は役務の出所  に対する混同誤認が生じるおそれがないとき他人の商標を使用する場合、商標権者からの賛助、保証等の関係を示唆するものであってはならず、行為者は、その行為が他人と行為者との間の商品又は役務の真実かつ正確な関係を反映するものであることを証明しなければならず、関連する消費者において商品又は役務の出所や品質について混同が生じたり、また相手側に損害を与える不公正な競争行為であったりしてはならない。
  1. 商標権者の同意を得て市場で流通した商標付き真正品を転売又は販売促進するときに、インターネットに該商標付き真正品をアップしたり、さらには該真正品に付された商標を別途に広告に掲載する又はカタログを発行して販売促進したりする行為は、消費者に正確、真実である商品情報を提供するものであれば必要な使用行為に該当し、かつその使用が商業取引の慣習に符合する誠実かつ信用できる方法であって、関連する消費者において商品又は役務の出所に混同誤認が生じるおそれがないときは、商標法第36条第1項第1号に示された指名的フェア・ユースの概念により、商標権の効力による拘束を受けるべきでなく、第2項の権利消尽の理論で論じるものでない。また、本議題で定義した行為の主体は販売業者/小売業者であり、これら主体の性質から言って、前記行為は商業上の評価として正当かつよく見かけるものであり、具体的な個々のケースについては、指名的フェア・ユースにより適法か否かを個別に判断すべきであることは言うまでもない。

初期討論結果:多数が乙説を支持(甲説2票;乙説9票)

大会討論結果:乙説を採用(大会採決結果:採決者数29人:甲説0票、乙説23票)

関連条項
商標法第36条:
次に掲げる情況は、他人の商標権の効力による拘束を受けない。

  1. 商業取引の慣習に符合する誠実かつ信用できる方法で、自己の氏名、名称、又はその商品又は役務の名称、形状、品質、性質、特性、用途、産地又はその他商品又は役務自体に関する説明を表示するもので、商標として使用しない場合。
  2. 商品又は役務の機能を発揮するために必要な場合。
  3. 他人の商標の登録出願日前に、善意で同一又は類似の商標を同一又は類似する商品又は役務に使用した場合。但し、それは原使用の商品又は役務に限る。その場合、商標権者は該商標を使用する者に対して、適当な区別表示の付記を要求することができる。

登録商標を付した商品が、商標権者又はその同意を得た者により国内外の市場で取引きされ流通する場合、商標権者は該商品について商標権を主張することができない。但し、商品が市場で流通した後、商品の変質、毀損が発生するのを防止するため、又はその他正当な事由がある場合はこの限りでない。

提議機関:知的財産裁判所
(司法院106年度「知的財産法律座談会」、「民事訴訟類関連議題」提議及び討論結果 第2号)

知的財産法律座談会での討論結果の要略 3
台湾の並行輸入業者が商標権者の商標を用いた広告を掲載する、 或いはカタログを発行することは商標権の侵害にあたるか否か(台湾)