専利権の侵害を訴えた民事訴訟において、侵害が認定されて侵害の差止め、損害賠償の請求が認められ、判決が確定した。一方被告は、当該専利に対して新規性を有さないとの理由で無効審判を請求した。無効審判は成立し、当該専利が取り消されたため、専利権者は行政救済を提起した。行政救済期間において、被告は当該専利の無効を根拠に再審を2度請求し、2度目の再審で勝訴し、最高裁判決で確定した。
※ 台湾では専利の語が使われ、専利には特許、実用新案、意匠が含まれる。
最高裁判決までの概要は以下の通り。
- 専利権者(以下、Aという)は、台湾の業者BがAの専利権(以下、係争専利という)を侵害したとして訴訟を提起した。台湾台中地方裁判所は判決で侵害を認め、侵害の差止め並びにB及びBの代表者が連帯してAに損害賠償として新台湾ドル500万元及び原審準備書がBに送達された翌日から納付日まで年率5%で計算した法定遅延利息を支払うよう命じた。
- は上訴したが、知的財産裁判所は上訴を棄却した。Bは更に最高裁に上訴したが棄却され(2011年3月17日付判決)、専利権侵害に関する原判決は確定した。
- Bは2010年2月12日付で知的財産局に係争専利に対する無効審判を請求した。知的財産局は2012年1月10日付で無効審判成立、専利権無効の処分を下した。
- Aは知的財産局の処分(係争専利取消)に不服として訴願を提起し棄却されたため、知的財産裁判所に対して行政訴訟を提起したが、棄却された(2013年2月7日付判決)。更に最高行政裁判所に上訴したが、棄却され(2013年7月25日付裁定)、係争専利権取消は確定した。
- Bは知的財産局2012年1月10日付の無効審判成立、専利権無効の処分に基づき、侵害に関する原確定判決及び裁定の破棄等を求めて2012年2月8日付で知的財産裁判所に再審を請求した。しかし知的財産裁判所は、知的財産局の決定に対してAは訴願を提起し、訴願決定はまだ出されていないため、係争専利は有効中であるとの理由で再審を棄却した(2012年3月29日付判決)。
- 上記4の通り、最高行政裁判所が係争専利の取消を裁定(2013年7月25日付)し、これが確定したため、Bは再度再審を請求し、主張が認められて侵害が認定された原判決が破棄された。Aは上訴したが、最高裁判所は上訴を棄却し、再審に対する判決は確定した。
以下は知的財産局のウェブサイトに掲載された最高裁判所の判決要旨の和訳である。
電子報掲載日:2017年8月5日
最高裁判所106年度台上字第343号民事判決
最高裁判所民事判決
上訴人(専利権者) 利奇機械工業股份有限公司
(以下、Aという)
被上訴人(原侵害訴訟の被告) 彦豪金属工業股份有限公司
(以下、Bという)
主文
上訴棄却
第三審の訴訟費用は上訴人の負担とする。
再審上訴人Aは係争専利の権利者である。2008年の訴訟手続きにおいて、Aは被上訴人Bが係争専利を侵害していると主張、損害賠償を請求し、勝訴して判決が確定した。Bは係争専利が2008年専利法(特許法・実用新案法・意匠法)の新規性の要件に合致していないとして、知的財産局に無効審判を請求した。知的財産局は係争専利を取消す審決を行った。Aは無効審判の審決に対して、行政救済を提起した。Bは行政救済期間において、当該無効審判審決に基づき第一次再審請求を行ったが、裁判所は無効審判の審決は確定しておらず、係争専利権は有効であると認定し、B敗訴の判決が出された。無効審判の審決は最高行政裁判所の判決により係争専利取消が確定し、その後Bは知的財産裁判所に第二次再審請求を行い、勝訴判決を獲得
した。Aが不服として提起した上訴における主張:Bは第一次再審及び第二次再審を、何れも民事訴訟法第496条第1項第11号で規定される事由に基づき提起したが、民事訴訟法第498条の1の規定に違反する;また知的財産案件審理法第16条第1項の規定に基づき、民事裁判所は専利権の取消の原因となる争点の有無について判断する権限を有し、その認定は知的財産局が行った異なる認定の影響を受けない。Bの主張:係争専利は既に取消が確定して存在しない。原確定判決は裁判の基礎自体が変動しており、当然Aは損害賠償を請求できない。
裁判所の見解は以下の通り:
- 一、Bは知的財産局が行った「無効審判成立、係争専利権を取り消す」処分を理由として第一次再審請求を行った。しかし本件(第二次)の再審請求は、係争専利の取消が既に確定したことを理由としており、両者の具体的な事項は同じではなく、同一事由ではないので、民事訴訟法第498条の1の規定は適用されない。
- 二、民事訴訟法第496条第1項第11号は、判決の基礎となる行政処分に変更があった場合の規定である。これは、確定判決は行政処分を判決の基礎としたが、当該行政処分がその後になされた行政処分により変更があり、原確定判決の基礎に変更が生じた場合を指す。係争専利は既に無効審判が成立し、且つ行政救済手続きで取消確定が認定されている。当然、最初から存在しないと見なされ、当該専利権は遡及的に消滅し、Aは係争専利権に基づきBに権利を主張することはできない。Bが請求した第二審判決の破棄、Aの前訴訟手続き第一審の訴えの棄却には理由があるとみなす。
民事訴訟法
第496条第1項第11号
以下に列記する事由のひとつがあるとき、確定した終局判決に対して再審を請求して不服を申し立てることができる。但し当事者が既に上訴してその事由を主張した又はその事由を知っていながら主張しなかったときは、この限りではない:
11、判決の基礎となった民事、刑事、行政訴訟判決及び其の他の裁判又は行政処分が、その後に確定した裁判又は行政処分により変更されたとき。
第498条-1
再審の請求は、裁判所が再審の理由がないと認定して棄却を判決した後、同一の事由で、原確定判決又は再審の請求棄却の確定判決に対し、更に再審請求を起こすことはできない。
知的財産案件審理法
第16条第1項
当事者が、知的財産権には取消、廃止すべき理由があると主張又は抗弁するとき、裁判所はその主張又は抗弁の理由有無について自ら判断しなければならず、民事訴訟法、行政訴訟法、商標法、専利法(特許法・実用新案法・意匠法)、植物品種及び種苗法又は訴訟手続き停止に関するその他の法律の規定は適用されない。


