更新登録手続をせず失効した登録商標は、事業で継続して使用している事実があれば善意の先使用を主張し、権利侵害ではないと抗弁できる。(台湾)

更新登録手続をせず失効した登録商標は、事業で継続して使用している事実があれば善意の先使用を主張し、権利侵害ではないと抗弁できる。(台湾) 4

登録を取得したが更新登録しなかったために失効した商標を、登録失効後も販売する商品に継続して使用していた業者(被告)が、後願の商標登録権者に告訴され、起訴された。台湾桃園地方裁判所刑事判決で、被告が無罪とされたため検察官は判決に不服として知的財産裁判所に上訴した。これに対し、知的財産裁判所は上訴を棄却した。以下は知的財産局のウェブサイトに掲載された刑事判決の要旨の和訳である。

電子報掲載日:2016年12月5日

知的財産裁判所  105年度刑智上易字29号刑事判決
上訴人  台湾桃園地方裁判所検察署検察官
被 告  劉國欽

主文: 上訴を棄却する。    

更新登録手続をせず失効した登録商標は、事業で継続して使用している事実があれば善意の先使用を主張し、権利侵害ではないと抗弁できる。(台湾) 5

被告の劉國欽は接昌工業股份有限公司(以下、接昌公司という)の責任者であり、2014年8月に「征空」商標が印刷されたペンキ数箱を中泰ペンキ工事店に販売した。その後、告訴代理人は本件商標が印刷されたペンキ2缶の差押えを通報した。台湾桃園地方裁判所検察署の検察官は起訴したが、台湾桃園地方裁判所の合議制法廷では第一審の簡易法廷の判決(注の通り)を取り消し、改めて被告を無罪とする判決を下した。台湾桃園地方裁判所検察署の検察官は不服として、知的財産裁判所に本件を上訴した。

判決要旨

  1. 他人の商標登録出願日以前に、同一又は類似の商標を同一又は類似の商品若しくは役務に善意で使用したときは、他人の商標権の効力に拘束されない。但し、原使用の商品若しくは役務に限られ、商標権者は適切な区別の表示の付記を要求できることが、商標法第36条第1項第3号に明文で定められている。当該号では、善意で同一又は類似の商標を同一又は類似の商品若しくは役務に使用している場合は、他人が商標登録を取得した後も継続してその先行商標を使用できると規定している。これは登録制度の例外であり、主として善意の先使用者が他人の商標登録出願を知らなかったという理由に基づき、既に市場で継続して使用している事実がある場合、他人が登録して商標権を取得した後であっても、善意の先使用者の利益は保障されるというものである。但し、規定が適用されるためには以下の条件に合致していなければならない:1. 先行する使用の事実は、他人の商標登録出願日以前であること;2. 継続使用の状況には中断がなく、且つ原使用の商品若しくは役務に限る;3. 商標権者は、先使用者に対して適切な区別の表示の付記を要求できる。定められた条件のもとで使用することで、他人の商標権の干渉を受けない。
  2. 接昌公司は以前、「征空牌」商標を、出願時の第23類「スプレーペイント、調合塗料、エナメル、ワニス、焼付塗料、水性塗料」商品を指定して登録出願した。審査の結果、第12876号商標として登録を付与され、権利期間は1962年1月1日から1981年12月31日までであった。また接昌公司には、1968年11月25日に営利事業登記証が発給され、営業項目はペンキの製造、卸売、小売で、責任者は被告の祖父である。更に、接昌公司がこれまで製造、販売してきたペンキ塗料容器のブリキ缶の外側には、何れも「征空牌」、「征空塗料」等の文字が印刷されており、被告の祖父○○○が出願し登録を取得した「征空牌」商標と一致し、今日まで60年間使用している。被告は1980年代に接昌公司の経営を引き継いでペンキ塗料を販売し、包装容器のブリキ缶の外側に「征空」の文字を継続して使用している。本件商標の出願日である2005年2月18日以前に善意で本件商標を使用した事実があると認められる。また、接昌公司が製造、販売する征空ブランドのペンキ塗料の容器であるブリキ缶には、「征空塗料」、「征空牌」の文字が使用されている他、何れも「JET」の文字及び飛行機の図と「CHIA CHANG VARNISH PAINT CO. LTD. 」の文字が図形化されたデザインが表示されている。このことから、被告には本件商標を使用して、消費者に混同、誤認を生じさせる如何なる不正競争の意図もないことが分かる。被告の前記行為は、商標法第36条第1項第3号で規定される「善意の先使用」の原則に合致しており、本件商標の効力に拘束されないと認められる。被告は取り扱っている同一又は類似する商品の範囲において、「征空」商標を継続して使用できる。告訴人は、同号但し書き規定(但し、原使用商品又は役務に限られ、また商標権者は適切な区別の表示を付加することを要求することができる。)に基づき、被告にペンキ塗料容器のブリキ缶に本件商標を使用するとき、適切な区別の表示を付記するよう要求できるのみである。

注:劉國欽は商標権者の同意を得ずに、販売目的で同一商品に登録商標と同一の商標を使用した。有期懲役2ヶ月、若しくは一日につき新台湾ドル1千元に換算した罰金に処す。差し押さえたペンキ2缶は没収する。

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更新登録手続をせず失効した登録商標は、事業で継続して使用している事実があれば善意の先使用を主張し、権利侵害ではないと抗弁できる。(台湾)