台湾発明特許におけるコンピュータソフトウェア及び「プログラム」請求項の標的に関する実務について

台湾発明特許におけるコンピュータソフトウェア及び「プログラム」請求項の標的に関する実務について 1
  1. 台湾専利法の「特許を受けることができない事由」についてはこれまで幾度も改正されてきた。まず、1994年1月21日に公布された専利法では、その第21条第1項において以下のとおり定められていた:
    「次に掲げる各号については、発明特許を受けることができない:
    1. 動植物の新品種。但し、植物の新種の育成方法については、この限りでない。
    2. 人体又は動物の疾病の診断、治療又は手術の方法。
    3. 科学原理又は数学の方法。
    4. 遊戯及び運動の規則又は方法。
    5. その他、人の推理力、記憶力を利用しなければ実施できない方法又は計画。
    6. 公共の秩序、善良の風俗又は衛生を害するもの。」

当時、コンピュータソフトウェア又はコンピュータプログラムは特許を受けることができない客体と見なされており、特許を受けるためにはハードウェアと組み合わせなければならなかった。

  1. 台湾経済部知的財産局(以下、TIPOと称する)は1993年より「特許審査基準」を起草し、1998年10月7日に「特定技術分野のコンピュータソフトウェア関連発明に関する審査基準(第八章第二節)」を公布した。この審査基準では「コンピュータプログラム又はデータそのものは無形の物であるため、記録媒体に記録しなければならない。さもなければ、発明の類型に属さない」という明確な規範があったため、特許出願の実務においては、専利法及び審査基準の規定に合致するように、標的が「プログラム」である請求項は例えば「(コンピュータ)プログラムが記録された(コンピュータ読み取り可能な)記録媒体」といったように修正しなければ特許を受けることができなかった。
  1. その後、2003年2月6日に公布された専利法では多くの条文が大幅に改正され、第24条の「特許を受けることができない事由」も次のとおりに修正された:
    「次に掲げる各号については、発明特許を受けることができない。
    1. 動植物及び動植物を生産する主として生物学的方法。ただし、微生物学の生産方法は、この限りでない。
    2. 人体又は動物の疾病の診断、治療又は外科手術の方法。
    3. 公共の秩序、善良の風俗又は衛生を害するもの。」

当時、コンピュータソフトウェア又はコンピュータプログラムの発達はまさに日進月歩であったため、主務官庁もその流れに対応してコンピュータプログラムを保護する必要があると考え、2003年公布の専利法にあわせて特許審査基準も大幅に修正した。TIPOは2008年5月20日に「コンピュータソフトウェア関連発明」の新審査基準(第二篇発明特許審査基準第九章)を公布した。この第二篇発明特許審査基準第九章の2.2では、発明特許の標的について、「コンピュータソフトウェア関連発明の請求項は方法の請求項と物の請求項に分けることができる。そのうち、物の請求項は、装置、システム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、コンピュータプログラムプロダクト、データ構造プロダクト又はその他の類似名称を標的とした請求項が含まれる」とされており、「コンピュータプログラムプロダクト」が特許を受けることができる発明特許の標的にあたることが明記されたものの、「プログラム」が合法な発明特許の標的であるか否かについてはなおも明確な規範がなかった。

  1. その後、2013年に公布された新専利法を踏まえて、TIPOは審査基準も改めて修正した。この専利法では「特許を受けることができない事由」について次のように小幅な修正がなされた:
    「次に掲げる各号については、発明特許を受けることができない。
    1. 動植物及び動植物を生産する主として生物学的方法。ただし、微生物学の生産方法は、この限りでない。
    2. 人類又は動物の疾病の診断、治療又は外科手術の方法。
    3. 公共の秩序又は善良の風俗を害するもの。」

2014年1月1日に施行された第二篇発明特許審査基準第十二章コンピュータソフトウェア関連発明の「2.コンピュータソフトウェア関連発明の定義」において、『請求項は、標的の名称(designation of the subject matter)の書き方をもって、出願標的(subject matter)が発明の定義に合致するか否かを直接判断してはならない。もし標的の名称が「枠組」、「メカニズム」、「技術」、「信号」等で、請求項において保護を受けようとする対象が物であるか、方法であるかを判断できないためにカテゴリが不明確となる場合、出願人に標的の名称を補正するよう求めなければならない。標的の名称が「データフォーマット」又は「パケット」等である場合、特許出願した発明がデータ構造とアルゴリズムのステップ間の交互作用を開示したことによって技術性が生じたか否かを判断しなければならず、技術性を有すると認められる場合、標的の名称(データフォーマット自体)と特許出願した発明の実質的な内容(データ構造を応用した方法又は製品)が合致していないことにより、請求項が不明確となるため、出願人に標的の名称を「データ構造プロダクト」又は類似名称に補正するよう求めるべきであり、その標的の名称により、単なる情報の開示と直接認定してはならない。このほか、もし標的の名称が「コンピュータプログラム」である場合、その出願特許した発明全体がコンピュータプログラムプロダクトの請求項の定義に合致すれば、それをコンピュータプログラムプロダクトの請求項と直接見なすことができ、補正を求める必要はない。』と明確に説明されているため、発明特許で「コンピュータプログラム」を請求項の標的とできることが確定された。また、現在の実務では、「コンピュータプログラム」だけでなく、「プログラム」も請求項の標的として認められている。

  1. 2014年1月1日に施行された第二篇発明特許審査基準第十二章コンピュータソフトウェア関連発明の「3.2 特許請求の範囲」では、請求項を「方法の請求項」と「物の請求項」に分けており、そのうち「方法の請求項」については「コンピュータソフトウェア関連発明にかかる方法の請求項は、方法の流れに従ってコンピュータソフトウェアのステップ又は手順を記載しなければならない」と規定し、例として「~取引情報処理の方法」、「~化合物の構造の判定、

表示に用いる方法」という標的が挙げられている。また、「物の請求項」については、「装置」、「システム」、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」、「コンピュータプログラムプロダクト」などの標的が挙げられている。しかし、前記Ⅳのとおり、発明特許審査基準第十二章「2.コンピュータソフトウェア関連発明の定義」において、「請求項は、標的の名称(designation of the subject matter)の書き方をもって、出願標的(subject matter)が発明の定義に該当するか否かを直接判断してはならない」と明確に説明されているため、特許を受けることができる標的であるか否かは、前記審査基準で挙げられた例に制限されず、特許出願した発明が「自然法則を利用していない」、「技術思想でない(単なる情報の開示や、コンピュータの簡単な利用)」などの発明の定義に合致しない事由があるか否かを判断しなければならないと考えられる。

  1. コンピュータソフトウェアプログラムの保護については、通常、特許権だけでなく、著作権により保護することもできる。台湾著作権法の規定によると、コンピュータソフトウェアプログラムはコンピュータプログラムの著作に属し、また、著作権は登録の必要がない創作保護主義を採用しており、つまり審査や登録手続きを踏まなくても創作が完成した時点で著作権の保護を受けることができる。しかし、著作権による保護は当該著作の表現のみに及び、それが表現する思想、手順、プロセス、システム、操作方法、概念、原理、発現には及ばない。これに対して、特許権で保護するものは、特許請求の範囲中の自然法則を利用した技術思想の創作であり、より抽象的な広範囲が保護される。一方、著作権では、特許権のように公開、公告の手続きを介して特許権の範囲を公衆に明確に周知することがないため、著作権を主張する際には、まず先に著作権の存在を証明しなければならない。実務上、著作権の保護を受けるためによく用いられる方法として、将来この著作権に紛争が生じた場合に著作権の完成事実又は少なくとも公証日を証明するために、著作が完成したときに認証手続きにより公証人に著作の存在事実証明を求めるというものがある。
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