- 概要
台湾の意匠である「設計専利」はかつて「新式様専利」と呼ばれていたが、2013年1月1日に施行された専利法で現在の名称に変更された。意匠とは、物品(物品の一部を含む)の形状、模様、色彩 又はその組み合わせであって、視覚を通じて訴求される創作をいう。また、物品に応用されるアイコン及びグラフィカルユーザインタフェースについても意匠を出願することができる。
台湾で意匠を登録するための要件として、
①産業上の利用可能性、②新規性、③創作性を満たす必要がある。
台湾で意匠登録を受けることができない事由には、
① 純機能性の物品造形、②純芸術創作、③集積回路レイアウト及び電子回路レイアウト、④公序良俗を害する物品が含まれる。
台湾意匠出願は一意匠一出願でなければならず、組物物品である場合を除き、各物品をそれぞれ単独で出願しなければならない。
また、台湾意匠には先願主義が採用されており、同一又は類似する意匠については先に出願したもののみが登録される。
- 関連意匠
- 同一者が2以上の類似する意匠を出願する場合、一方を「本意匠」とし、他方を「関連意匠」として出願することができる。この「関連意匠(衍生設計)」は日本の「関連意匠(Derivative Design)」に相当するものである。
- 関連意匠は、本意匠の登録公告日前に出願しなければならない。
- 関連意匠は、当該関連意匠に類似する別の関連意匠を有することはできない。ただし、前記別の関連意匠が本意匠に類似する場合はこの限りでない。
つまり、下図のとおりになる:

関連意匠は、同一出願人のバリエーションある意匠グループの保護を目的とするため、関連意匠は本意匠の保護範囲を拡充することができる。
上記D意匠はO本意匠と類似していないため、独立した別の意匠に変更して出願しなければならない。
- 本意匠は関連意匠に、関連意匠は本意匠に変更することができ、本来の出願日を変更後の出願の出願日とすることができる。
- ただし、変更前の出願の登録査定書の送達又は拒絶査定書の送達から2ヶ月経過した後は変更することができない。
- 意匠(関連意匠を含む)の存続期間は出願日から15年である。
- 関連意匠には個々に登録証書が交付され、個別に年金を納付しなければなら
- ない。
- 関連意匠権は、本意匠権とともに譲渡、信託、承継、使用許諾又は質権の設定をしなければならない。
- 関連意匠権は単独で主張することができ、かつ類似の範囲に及ぶ。
- 台湾の意匠には(本)(独立)意匠、部分意匠、画像意匠、組物意匠及び関連意匠が含まれる。
- 台湾意匠及び関連意匠出願の概況
台湾での意匠出願件数は年間約8000件、登録査定率は約90%であり、審査期間は7ヶ月程度である。関連意匠の出願件数は年間約400件程度である。
| 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 合計 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 意匠出願件数(件) | 8,969 | 8,148 | 7,808 | 8,445 | 8,120 | 8,082 | - |
| 登録査定率(%) | 85.19 | 87.9 | 88.1 | 91 | 90.7 | 89.8 | - |
| 審査期間(月) | 9.03 | 9.3 | 8.7 | 6.9 | 7.1 | 7.4 | - |
| 関連意匠出願件数(件) | 396 | 433 | 329 | 408 | 351 | 367 | 2,284 |
| 日本の優先権を主張した出願の件数 | 141 | 104 | 103 | 153 | 94 | 135 | 730 |
| 日本の優先権を主張し、台湾で非類似と認定された出願の件数 | 28 | 28 | 19 | 33 | 19 | 4 | 131 |
| 日本の優先権を主張し、台湾で非類似と認定され、日本で類似と認定された出願の件数 | 16 | 12 | 12 | 18 | 8 | 2 | 68 |
出典:台湾知的財産局年報及び2019.5.24.2019年度第1次「特許審査品質諮問委員会添付資料5「台湾関連意匠及び日本関連意匠対応出願の審査実務上の差異の分析」-徐銘夆 審査官報告書
上表の統計から分かるように、台湾において2013-2018年の間に日本の優先権を主張した関連意匠の出願のうち、131件は初審で本意匠と非類似であると認定されたが(即ち18%)、これら関連意匠の対応日本出願の審査結果によると、そのうち68件は日本で本意匠と類似すると認定されている(日本の優先権を主張した関連意匠の52%)。
そして興味深いことに、台湾で本意匠と非類似であると認定された131件のうち107件は独立出願に変更した後に登録査定され、再審査で登録査定されたものが4件、別の出願の関連意匠に変更されたものが9件あり、意見書提出後又は未提出のまま拒絶査定となったものは11件しかない。
以上から分かるように、台湾と日本で同様に関連意匠を出願した場合において、台湾で本意匠と類似すると認定されなかった出願のうち半数は日本で本意匠と類似すると認定されている。
- 当然、台湾では審査期間又は拒絶査定後2ヶ月以内であれば関連意匠から独立意匠に変更(或いは独立意匠から関連意匠に変更)することができる。
しかし、以上の差異の分析によれば、台湾で関連意匠の「類似」を認定する基準は、日本の関連意匠のそれよりも厳格であると推測される。
その理由を考察すると、台湾意匠の審査基準は全体的な観察及び総合的な判断による比較を重視しているのに対し、日本では意匠の特徴の比較を重視していることにあると考えられる。つまり、台湾の審査はアメリカの工業デザインのそれに近いといえる。
- 参考までに、台湾意匠の類似に関する判断基準を以下に簡単に説明する。
- 判断者と基準:一般の消費者において商品を選択し購入するときの観察と、認知を 基にして生まれる印象と、従来の技芸とに誤認、混同が生じるか否か。
- 判断原則:
A. 全体的な観察
意匠の各要素又は微細で局部的な差異にとらわれずに、外観全体を観察判断対象とし、かつ純機能性特徴及び「権利を主張しない部分」を除外する。
B. 肉眼による直接的な観察、対比
原則として肉眼による直接的な観察を基準とするが、一般の消費者が選択し購入するために、機器を用いて観察する物品(ダイヤモンド、LED)であるとき、その観察は肉眼による直接的な観察として見なされる。
C. 総合判断
一般の消費者の注目を引きやすい特徴部位を重視し、一般の消費者の注目を引きやすい特徴部位が同じ・類似していて局部にしか違いがないとき、外観全体は類似と認定される。
- 台湾で関連意匠を出願する際の戦略
台湾は日本と比較して関連意匠の認定が厳格であるものの、意匠の類似・非類似は審査官個人の主観的な見解に左右されるもので、2つの意匠の同じ部分に注目すると類似すると判断されやすく、逆に2つの意匠の異なる部分に注目すると非類似と判断されやすい。
このため、日本の出願人の意匠出願が日本で関連意匠として出願されている場合、台湾でも関連意匠として出願をするのが好ましいが、出願人において2つの出願の類似性に疑問がある場合には、それぞれ独立意匠の権利のほうがより完全であるので(関連意匠は、本意匠とともに譲渡する必要がない等)、別々に独立意匠として出願することもできる。そして、出願後に知的財産局から両出願は類似する又は類似しないという指摘を受けた時点で出願を変更するのが最も効果的で好ましい意匠登録方法であると考えられる。

