医療技術の発展に伴い世界の平均寿命は延びているものの、現代社会のストレス、不適切な食習慣、環境汚染など様々な要因により、人類にとって癌は重大な死因の一つになっている。台湾衛生福利部による2017年の統計「台湾人の十大死因」の順位によれば、癌(悪性腫瘍)が30年連続で第1位となっている。WHOの近年の統計を見ても、癌は世界の死因上位10位内に入っており、アメリカでは長年にわたり心臓病に次いで死因第2位となっている。
癌治療の新薬の研究開発や承認には、多額のコストと費用がかかるため、新薬の特許を出願して権利が得られれば、その権利期間において特許権者の権益を守ることができる。アメリカでは癌治療技術のイノベーションを推進するため、2016年にCancer Moonshot Patent Dataプロジェクト及び癌関連特許の早期審査制度が開始された。そして台湾知的財産局は、医薬関連産業、教学及び研究機関等が台湾における癌関連特許の動向をつかめるように、前記Moonshotプロジェクト及びDerwent Innovationデータベースなどの方式を参照して、癌をキーワードとして2006年から2015年までの発明特許出願を対象として検索して得られた計6,619件を下図の六大技術分野に類別して分析した。

知的財産局の2006年から2015までの統計によれば、癌治療関連発明の六大技術分野のうち、薬物分子と化学分野の出願が最も多く、約9割(6083件)を占めている。その他は診断と手術用機器(680件)、細胞と酵素(540件)、データサイエンス(47件)、食品と栄養(52件)、癌モデル動物(33件)である。
全体から言えば、薬物分子と化学分野は癌治療関連発明のコア技術であり、出願人の上位10社は、NOVARTIS(284件)、SANOFI AVENTIS(271件)、HOFFMANN LA ROCHE(255件)、ASTRAZENECA(195件)、GENENTECH(183件)、BAYER(161件)、BOEHRINGER INGELHEIM(141件)、ABBOTT(136件)、PFIZER(122件)、SCHERING(102件)と全て外国籍の製薬メーカーとなっている。これに対し、台湾籍出願人による出願件数はやや少なく、上位から順に中央研究院(59件)、財団法人国家衛生研究院(29件)、国立台湾大学(26件)、国立成功大学(24件)、中国医薬大学(21件)、高雄医学大学(20件)、国鼎生物科技股份有限公司(20件)、財団法人工業技術研究院(11件)、国立陽明大学(11件)、国立交通大学(10件)、台北医学大学(10件)、国立清華大学(8件)、台湾微脂体股份有限公司(6件)、長庚大学(6件)となっている。
基本的に、癌治療関連特許の外国籍出願人の多くはグローバルな製薬メーカーであるが、台湾籍出願人は主に学術研究機構である。一方、台湾における発明特許に記載された癌治療の対象は、出願人が台湾籍であるか外国籍であるかを問わず、乳癌、肺癌及び大腸直腸癌が上位3位を占め、台湾籍出願人の出願はその後に肝臓癌と前立腺癌が続き、外国籍出願人の場合は悪性リンパ腫と白血病(いわゆる血液の癌)となっている。
台湾の現行特許法では「人体又は動物の疾病の診断、治療又は外科手術方法」には特許を与えないことが規定されているが、医療用途の特許については特に制限がない。このため、医薬治療方法に関する発明をした場合、医療用途として出願することができる。つまり、台湾では、医薬品の用途に予期し得ない効果がある場合には特許による保護を受けることが可能である。また、台湾の発明特許権の存続期間は出願日から20年であるが、医薬品に関する発明品を市販する場合、許可が必要となるため、5年を超えない範囲で保護期間延長を申請することができ、台湾知的財産局は、本年4月にこの延長申請に関する規定を緩和した。特許権は他人の使用を排除できる専用権であるが、存続期間満了後の特許については誰でも使用することができ、しかも発明特許は出願から18ヵ月後に公開され、他人が現在の技術の発展と動向を知ることができるため、特許制度により医薬発明関連産業の研究開発とイノベーションを促進することができる。

