並行輸入業者が輸入した真正品を改造し、真正品と同じ商標を表示して販売したため、真正品の製造業者が商標権の侵害であるとして告訴した。
台湾・台北地方裁判所は判決で商標権の侵害を認めた。この判決が知的財産局ウェブサイトの2018年5月5日付電子報に掲載された。以下は当該記事の和訳である。
電子報掲載日:2018年5月5日
係争商標 登録第1199219号

第2、7、9、16、23類:
インク、プリンター用トナー、ファクシミリ用トナー、コピー機用トナー、プリンター・ファクシミリ・コピー機・スキャナー・画像キャプチャーの複合機用トナー、等の商品。
被告は兄弟國際公司の代表者である。同社は日本のブラザー工業株式会社(以下、日本ブラザー社という)が製造したプリンター、事務機及び周辺機器の輸入を営業項目の一つとしている。またウェブサイト上で日本ブラザー社が製造したアメリカ規格のトナーカートリッジ「TN-720」、「TN-750」を販売し、且つ「当社は、全てアメリカで組み立てられ、梱包された最高品質のBROTHER 商品を輸入し台湾で販売している」等、明示している。同社は日本ブラザー社が各国で生産しているプリンター及びトナーカートリッジは型番が異なり、各地域で生産したトナーカートリッジは異なる地域で生産されたプリンターには適合しないことを知っていた。原告の日本ブラザー社は、プリンター及びそのトナーカートリッジ等の商品を指定した「brother」商標の商標権者である。原告は、被告が原告の同意或いは許諾を得ずに、アメリカ規格のトナーカートリッジを台湾規格のプリンターに適合させるため、2015年と2016年に従業員に指示し、元々のアメリカでの梱包を開封してトナーカットリッジのプラスチックケースに熱を加えて溶かす方式でくぼみを出すよう加工し、台湾用プリンターの構造設計に適合するようにして第三者に販売し、日本ブラザー社の係争商標権を侵害したと主張し、告訴した。
「真正品を並行輸入する」輸入業者は、輸入した商標専用権者が製造・販売し商標を表示した真正品に、何らの加工、改造或いは変更も行わず、出荷時の梱包のまま販売するのであれば、その商品の出所は正当である。従って商標専用権者又はその被使用許諾者の信用・名誉に損害は生じず、また市場の独占、専有を防止することができるので、同一商品の価格の自由競争を促し、消費者は合理的な価格のものを選択し購入する利益を受けることができる。商標法の立法目的に反しない範囲で、商標専用権者の同意を取得し、且つ単なる商品の説明であれば、当該商品の広告等の同類文書に同一態様の商標を適切に表示することは認められる。一方、出荷時の梱包とは異なり、勝手に加工、改造若しくは変更し、当該商品に同一商標を表示して販売する、或いは当該商標商品の広告等の同類文書に当該商標を表示して陳列、配布した結果、消費者に混同を生じさせ、商標専用権者又はその被使用許諾者、指定された代理業者、販売業者の使用であると誤認させる可能性がある場合は、他人の商標の悪意による使用行為であり、他人の商標専用権を侵害する犯意があることは明らかである。当該状況に基づき、商標法の刑罰規定が適用され処罰されるべきである。(最高裁判所82年台上字第5380号判決趣旨参照)
被告は、TN-750トナーカートリッジはアメリカから輸入して販売した等、答弁した。たとえ真正品であったとしても、被告は商品を並行輸入した後で従業員に指示し、元々のアメリカでの梱包を開封してトナーのプラスチックケースに熱を加えて溶かす方式でくぼみを出すよう加工して台湾用プリンターの構造設計に適合させており、製品の外観は既に原商品と同一ではなく、明らかに出荷時の梱包品の販売ではないにもかかわらず、商品上には日本ブラザー社の係争商標を表示している。当該商標を利用して販売しているのは客観的に明らかであり、当該商標の使用であることに誤りはない。更に、被告は日本ブラザー社の同意又は許諾を得ておらず、しかも輸入したアメリカ規格のトナーカートリッジは、日本ブラザー社が台湾で販売している本体には取り付けられない等の事実を知っていたことを被告自身も認めている。被告が前記の状況を知りながら、輸入した商品を許可なく改造したことについて、他人の商標権を故意に侵害していないとは言い難い。従って被告が有利に販売するため、輸入した商品の外観を改造したものは、告訴人の会社がもともと製造・販売を許諾していた商品ではない。前記説明に基づき、商標専用権の侵害行為であり、被告が行ったことは商標法第95条第1号の商標権侵害罪に該当する。
判決:台湾台北地方裁判所106年度智易字第52号刑事判決
商標法 第九十五条(商標権侵害の処罰)
商標権者又は団体商標権者の同意を得ないで、販売を目的として、以下に掲げる各号の一つに該当する行為をした者は、3年以下の有期刑若しくは拘留又は新台湾ドル20万元以下の罰金に処せられ、又はこれを併科される。
- 同一商品又は役務について、登録商標又は団体商標と同一の商標を使用した者。
- 類似の商品又は役務について、登録商標又は団体商標と同一であり、かつ関係消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある商標を使用した者。
- 同一又は類似の商品又は役務について、登録商標又は団体商標と類似であり、かつ関係消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある商標を使用した者。
