- 台湾商標同意書制度:商品が同一又は類似する他人の登録商標と同じ又は類似するものについて、先登録者から同意書を取得し、後に出願する商標登録出願を登録する制度。
- 現在、世界の主要国のうち同意書制度があるのは、台湾、アメリカ、中国、香港、シンガポール、ベトナム、オーストラリア、ロシア、インド、ブラジル、マレーシア、フィリピン…等であり、同意書制度を認めない国には日本、韓国、インドネシア、タイ等がある。
- 台湾の前記同意書制度は2003年4月29日に改正公布され、2003年5月28日施行の商標法に導入された。当時の条文は以下のとおりである(注:前記形態以外の同意書はそれ以前からあったが、本文では、説明の範囲外とした)
(§23-13)
同一又は類似の商品又は役務について、他人の登録商標又は他人 が先に出願した商標と同じ又は類似のものは、登録することができない。但し、該登録商標又は先に出願した商標の所有者が出願に同意したものは、両者の商標及び指定する商品又は役務がともに同じである場合を除き、この限りでない。
この条文は2012年7月1日施行の商標法にて以下のとおり改定された:
(§30-I-10)
同一又は類似の商品又は役務について、他人の登録商標又は他 人が先に出願した商標と同じ又は類似のもので、関連する消費者に混同誤認を生じさせるおそれがあるものは、登録することができない。但し、該登録商標又は先に出願した商標の所有者が出願に同意し、且つ、明らかに不当でないものは、この限りでない。
つまり、現行の条文では、「明らかに不当でない」ものに限り、先登録者の同意書を利用することで後願出願人が出願する商標も並存できることが追加された。
- 言い換えれば、台湾では、後願出願人の商品と商標が以下の情況にある場合に先登録者の同意書(letter of consent)を取得することで両者の商標を並存させることができる。
| 同一商品 | 類似商品 | |
|---|---|---|
| 同じ商標 | × | ○ |
| 類似商標 | ○ | ○ |
| 〇:同意書を得ることにより、後願の登録が認められる。 ×:同意書を得たが、後願の登録が認められない。 | ||
- 後願出願人が、同一又は類似の商品を指定する先願/登録が存在することを発見した場合、後願出願人は先願/登録案に異議又は無効審判を申立てる無効理由があるか否か、或いは登録から三年を経過しても使用されていないかどうかを調査し、異議申立、無効審判又は取消審判を利用して先願に争議を申立てることを検討することができる。
しかし、先願/登録案に対して異議、無効審判又は取消審判によって争議を申立てることが困難であるとき(例えば、先願が登録されてから5年経過している、或いは先願の登録から三年経過していない、或いは先願が市場で使用されている)、後願出願人は先願出願人/登録者から同意書を得て登録することを検討することができる。
- 先願出願人/登録者の商標の利益が極めて大きい場合、先願出願人/登録者は他の同一又は類似の商標との並存登録を望まず、先登録者は後願出願人の同意書への署名に同意するとは限らない。とくに実務においては、先登録者である台湾国内のメーカーは同意書への署名への対価として、同意書への署名を求める後願出願人に対して巨額の代金を求めることもしばしばである。このため、同意書を取得する際には事前に様々なケースを検討しておく必要がある。
- 注意すべき点として、台湾商標法施行細則第33条には以下の規定がある
(§33)
他人が本法第30条第1項第10号から第15号の各号の但書の規定に基づき登録することに同意したものについて、本人が出願する商標が本法第30条第1項第10号で規定する事項に該当するときは、当該号の但書の規定に基づいて前記他人の同意を得なければ登録することができない。このため、先願出願人/登録者が後願出願人に同意書を与えた後、将来的に先登録者が同一又は類似の商品について同じ又は類似の商標を出願する場合には、後願出願人/登録者から同意書を得る必要がある。よって、先登録者は、一旦、後願出願人/登録者に同意書を与えると、その権利を損することもあるので注意しなければならない。
- 商標の並存登録同意書の書式は知的財産局のウェブサイトに掲載されている(かつて、TIPOが求める並存同意書には前記第7項の事項を盛り込む必要があったが、2019年の局内会議において、商標法施行細則第33条にすでにこの規定があるため、同意書に前記事項を記載する必要はないという結論になった)。
- 前記第7項の記載のように先登録者が後願出願人に同意書を与えた場合に、先登録者が同一又は類似の商品について同じ又は類似の商標を出願するときには、逆に後願出願人から同意書を得る必要があるため、先登録者はこの項の法律規定を承知した上で、同意書に署名するかどうかを判断しなければならない。
先登録者が不安を解消するためには、先登録者が同意書に署名する意向を有する場合、先に後願出願人(同意書の発行を求める出願人)に対して、先登録者が将来的に同一又は類似の商品について同じ又は類似の商標を出願するときには後願出願人は無償無条件で同意書を提供しなければならず、かつそれは後願出願人の承継人,譲受人に対しても有効であることに同意することを記した、正式に署名をした声明書(undertaking)の提供を求めるとよい。

